3.《ネタバレ》 森繁久彌に左幸子と日本映画の歴史において、演技の上手さにおいてはトップスリーに間違いなく入るであろうこの二人、更には新珠三千代に轟夕起子って、このキャストを見て私は真っ先に川島雄三監督の顔が浮かぶ。この四人の共通点は全員が川島雄三作品に出演しているということ!それだけで興味深い上にサスペンスもの、裁判ものであるというだけでも観たい。どうしても観たいという思いが強く、どこの店にもレンタルされてない。偶々昨日、この映画のDVDを売ってるのを見つけて迷わず買ってきた。これは本当に人間誰しも持っているエゴイズム、他人から見たら解らない真実、真相とは何か?という問いに応えた力作です。これだけの作品に出来たのは何と言っても森繁久彌と左幸子のこの二人の名演技、演技力があればこそ成り立つ作品だと観ていて感じずにはいられない。森繁久彌に対し心中を迫る左幸子の狂気、凄い演技はまるで有名な落語「品川心中」のお染めを想像せずにはいられないし、男に弄ばれながら殺されしまう女を演じると余計、凄み、上手さというものを発揮する凄い女優さんだ!これを観て改めて日本一、演技の上手い女優は左幸子であるという思いにさせられた。そんな左幸子に心中と聞いて川島雄三ファンなら誰もが「幕末太陽傅」を思い浮かべるだろう!左幸子に心中を迫られ、もがき苦しむ森繁久彌もこれまた流石の名演技ぶり!裁判のシーンでの最後に真相とは何かを語るシーンの息詰る演技力、裁判を終えて輸送車に乗り、去っていく神阪四郎(森繁久彌)を遠くから見つめる妻、新珠三千代もこういう女、駄目な男を愛して病まない哀しい女を演じると本当に上手い。いや、上手いというよりはそういう女が何故かよく似合う。いずれにしてもこの作品は人間とは何か?やはり自分が一番、可愛いんだというようなものを感じせずにはいられなくなるそんな作品です。