108.《ネタバレ》 貴樹は勉強もできて、部活動でも活躍していて、性格も良かったが、憧れの宇宙飛行士にはなれなかったようだ。少年時代の「田舎のスター」も、年をとればただの人というのはありそうな話だ。本作は、そんな男の内面心理を描いている。 ■貴樹が少年時代に確信したあかりとの想いは、その後の人生をずっと拘束した。貴樹と花苗がいっしょに家路に向かうとき、踏切でロケットを運ぶ貨車が行く手を遮る。貨車の非常にゆっくりした動きは、貴樹に想いを寄せる花苗にとっては、いっしょにいる時間を引き延ばしてくれるうれしいものだ。だが花苗が「時速5キロなんだって」と口にしたとき、貴樹はあかりが語った「秒速5センチメートル」を思い出す。 ■上京する貴樹との別れの時が近づいている。花苗が今日こそは想いを告白しよう、そう決意した瞬間、ロケットが打ち上げられる。宇宙の彼方に生命体は、まだ見つかっていない。それどころか、水素原子1個に遭遇することすら稀である。それでも、遠い先の世界に目指すものがあるという強い確信のもと、ロケットはすさまじい爆音を立て、力強く天に昇って行く。花苗はそのとき、貴樹は自分など見ていない、彼はずっと遠くにあるものを確信とともに強く見つめているのだと気づいた。だが貴樹は中学1年のあの日以来、あかりと会っていない。あかりも成長して、顔立ちもいくぶん変わったことだろう。貴樹の心の中にいるあかりは、彼のそばに寄り添い、同じ星を見つめているが、その顔立ちはあいまいに描かれている。 ■貴樹が恋人と別れ失業したときは、雪がちらつく冬だった。それは、彼のどんよりとした重苦しい心を表しているかのようだ。だがいつまでも続く冬はなく、必ず春は来る。新しい生命の躍動を感じさせる季節である。貴樹もあかりも、外から入って来た桜の花びらを見て、互いのことを思い出す。そして、子供のころに約束したあの踏切へと足を進める。そして二人がすれ違った瞬間、長い間会っていなかったにもかかわらず、二人は互いの存在に気づく。貴樹が振り返ると、彼女は立ち止まったように見えた。しかしそのとき、電車がやって来て視界を遮る。電車が行ったと思うと、今度は反対方向から電車が来る。そして2本の電車が通り過ぎて視界が開けたとき、そこにあかりはいなかった。結婚したあかりにとって、貴樹はただの思い出に過ぎなかったからだ。 ■本作は、貴樹が再出発する兆しを見せていないのが怪しからんという意見が多いが、季節が春であることと、あかりが立ち去ったこと、そして貴樹はあかりを追うことなく、かすかに微笑みながら前に進んでいくシーンによって、それは暗示されているだろう。 ■どうやら男は、過去を引きずる生き物のようだ。そして女は過去を思い出しはするが、振り返らない。物語は最後に、あかりが手紙を書くシーンがフラッシュバックされ「あなたはきっと大丈夫」と画面に映る。そう、女は決して振り返らない。ただ祈るだけなのだ。 【高橋幸二】さん [インターネット(字幕)] 9点(2015-05-22 14:45:08) (良:5票) |
107.ディテールに拘った緻密な映像、背景や空の色にまで主張をかませる画作りには感心させられるが、それで満足しているような印象。 最近のアニメに多い、背景など無機物の描画能力が向上したたのは良いが、人物の表情などはどうしてもリアルではない、それをすると気持ち悪くなるからだが、そこを上手く処理してアニメにしか出来ない、観る者の想像力で補うストーリーを作らないとアニメの良さが活きないと私は思う。 つまり、この話は実写で良いのだ、CGを使って幻想的なシーンを盛り込み、カメラを振り回せば、普通に染み入る映画が出来ただろう。 ラスト、山崎まさよしの曲に合わせて短いシーンを繋いだプロモーションビデオの出来の良さに確信した。ストーリーも演出も映画の評価を上げるには至らない。 この監督の作品は初めてなのだが、まだまだ若い才能なのだとしたら今後に期待。 【カーヴ】さん [DVD(邦画)] 5点(2011-11-21 09:52:25) (良:2票) |
106.第一章「桜花抄」の完成度はすさまじく、台詞のタイミングから音楽の休符までが計算されつくした美しさを感じさせる。このレビューを書くのは2011年。公開から4年が経過している。それでも「うだるような暑さ」というキーワードで、この物語を思い出してこのレビューの執筆のためにキーボードを叩いている。これは傑作のしるしだと思う。会えないつらさに共感を抱かない男子はいないだろう。ただ最後に駅を出た二人がキスをして納屋で一夜をすごすというくだりでいっぺんにリアリティを失う。それはないだろ。そして第2章「コスモナウト」になるとメッキのはげがめだちはじめる。映像の美しさがこの映画の構成要素の重要なファクターだが、2章では人物のラインの未熟さが目立っているのだ。それと結局恋愛が成就しない理由は主人公(つまりは監督)がもてないせいなのだが、2章の存在は「いやいや違う。もてなかったわけじゃない。」という言い訳に見えてしまうのだ。 【承太郎】さん [インターネット(字幕)] 8点(2011-07-05 01:44:01) (笑:2票) |
105.音楽は物語を際立たせるためのアイテム。料理で言えばお皿です。良いお皿は料理を美味しくします。でも『秒速5センチ』では、山崎まさよしの楽曲が主役でした。『One More Time~』を愛でるために物語が盛られているような。本作がプロモーションビデオといわれる所以です。コース料理の1品目、2品目と料理の味を吟味していたところ、メインの3品目で皿が主役の料理が出てきたらどう感じるか。そりゃ戸惑います。あるいは皿に負けぬ料理だったら気にならなかったかもしれない。『One More Time~』が本作のために書き下ろされた楽曲ならば監督の手柄だったのですが…。新海監督の描く世界はポエムなので、好き嫌いが分かれてしまうのは仕方がないところです。 【目隠シスト】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2010-12-12 19:29:00) (良:2票) |
104.どうしようもなく切なくなるからあえて自分から遠ざけていた青臭さと、実写よりはるかにリアルな繊細な映像美に、たった1時間で心をかき乱だされる良作。このテのテーマを直球勝負で語られることに拒絶反応を示す人は必ず存在しますので、賛否が大きく分かれるのであれば、それはこの作品の完成度の高さを裏付けているのではないでしょうか。その真偽は、レビューではなく一度作品を観ることで判断してください。 【708】さん [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2008-03-08 22:23:22) (良:2票) |
103.いい。 絵のセンスは素晴らしい(あの空の描き方は、世界のアニメ監督の誰も、一人たりと気付いていないんじゃないか?)。モンタージュの乱舞するエンディングには拳を握った。そこまでは心をうごかされたという事だ。 何はともあれ、一度きりの、空の表情の映画。日本は広い。『エル・スール』じゃないが、人は自分の住む土地の風景によって、空と雲によって、「思考させられている」と感じる瞬間がある。本作では南島独特の多層で多彩な雲、北関東特有のノッペリした無辺の青、東京ならではの息苦しい明るさが、人物なんかそっちのけで力を込めて描出されている。故に、これは「空の話」だったと断言したい。 だから極端に言えば人物が描かれなくてもいいんだが、そこはそれ、監督はまだ若い。話を進めるためにも人間は必要だ。 監督。10年後にもうひとつ、20年後にまたもうひとつエピソードを作りたくなるだろうよ。心にそのスペースを用意して、しっかり待ってるぞ(挑戦状)。 他方、ストーリーテラーとしては新人にありがちな背伸びが目立つのが致命的な欠点。点描によって大きなモノをスケッチするのは、緻密に描かれる部分があってこそ対比の力で受け手に迫るもの。1話目の電車・2話目のサーフィンを、あの程度の描写で終らせたのは罪が深い。というかインパクトが成立する以前に、映像が網膜から逃げて行った。せいいっぱいの限界点でやってる青い部分がたまらない芳香を漂わせているのも確かだが、一箇所でもいい、描きたい絵をとことんまでゴリゴリ描く事から逃げている現状は、決してアートとして成立しているわけじゃない。 ここは冷淡に突き放し4点にする。「悪い」「駄作」という意味ではない。物語世界に大化けする可能性を見出せないが故の低得点だ。このアニメはおそらく、もともとが5点満点の作品世界なのだ。バラバラの点描ゆえ、そこも突き抜けはしなかったが、素晴らしいモノがいっぱい詰まっている。それは間違いない。 DVDが出たら誰にも言わずにコッソリ買ってきて、毎夜コソッと一話づつ観ては泣き濡れる…オイラ案外そんな事をしそうな感じで、今から不安だすよ(笑)。 ●追記: いやしっかし、2話目のあそこで『ヴェルクマイスター・ハーモニー』の「アレ」登場シーンをパクるとは思わなかったけどな(客席で声を上げて密かにのけぞった (^^;)。その記号的な意味や、使い方まで「アレ」だし。 【エスねこ】さん [DVD(字幕)] 4点(2007-04-23 00:46:12) (良:2票) |
102.正直なところ、正面から向き合うには恥ずかしい、そういう作品。 でも、最後の山崎まさよしの歌のシーンはとてもいい。この短さでこれだけ上手く、そしてあっさりと表現出来るのは凄いと感じる。人に薦められるかというと難しいし、この映画の感想を誰かと話ししている状況を思い描けないが、どうしても記憶に残る、そういう映画(?)だと認めざるを得ない。 【simple】さん [地上波(邦画)] 8点(2016-08-21 16:05:50) (良:1票) |
101.《ネタバレ》 「ねえ、知ってる?桜の花びらの落ちるスピードって、秒速5センチメートルなんだって。まるで雪みたいだよね。来年も一緒に桜、見れるといいな」――。小学生のときに出逢ったタカキとアカリ。クラスのみんなにいまいち馴染めなかった2人は、いつも一緒にいる大の仲良しになっていた。だが、親の都合による引越しで2人は離れ離れとなってしまう。それでも頼りない糸に縋りつくように彼女と文通を重ねたタカキは、中学生になると意を決して彼女に逢いに電車へと乗り込むのだった。でもその日、雪は容赦なく降りしきって……。美麗な映像でもって、無垢な心を持った少年少女の初恋物語とその後を、山崎まさよしの名曲をバックに描く短編連作アニメーション。普段、こういういかにも爽やかそうなアニメってあんまり観ないのだけど、なんだか心に残る印象的なタイトルと「外国人がいま大注目の日本のアニメ」というビデオ屋さんのポップに惹かれて、今回レンタルしてきました。なんだけど、いやー、まさかこんなに「恋に恋する女子高生のこっ恥ずかしいポエムのような世界(に憧れる童貞男子の妄想のような世界)」が延々と繰り広げられるとは(笑)。それでも、そんな青臭い恋物語をこれでもかという青臭い情熱でもって創り上げた第一話は、その無駄を削ぎ落としたシンプルなストーリーと精細に描き込まれた美しい映像と相俟ってけっこう良かったです。まぁかなりこっ恥ずかしいけど、これはこれでアリなんじゃないかと思って第二話、第三話と観進めたのだけど、主人公の年齢が上がると共にどんどんと作品のクオリティが下がっていくのが玉に瑕でしたね、これ。ジブリの『耳をすませば』でも実感したことだけど、こういう妄想一歩手前の胸キュン初恋映画は中学生までが限界っす。だって、好きな人に告白する勇気を得るためにサーフィンで大波に乗ることを目標に頑張る女子高生って、実際に居たらキモ過ぎてもはやコントっしょ(笑)。それにこんなに性欲のない男子高校生なんていねーよ!!というわけで、第一話7点、それ以外4点で、間を取って5点っす。 【かたゆき】さん [DVD(字幕)] 5点(2014-10-18 00:21:41) (良:1票) |
100.《ネタバレ》 映像特典で監督がなぜこんな構成にしたかを語っていたが、構成上の事情はともかくこのストーリーは何だ。あえて観る者を不快にさせるメカニズムを研究して作ったのではないかと思わされる見事な暗転。一章で心暖まる長距離恋愛、二章で応援したくなる片思い、最終章でこれまで積み重ねてきたものを全く結実させずバラバラにして終える。せめて二章の子と主人公の再会くらいまでは描いてもいいだろう。それをしなかったのは「絶対に報われてはいけない」と決めてかかって作ったからとしか言い様がない。最後により高い位置から落とすために用意された一、二章だった。もしこの作品を気分害する事なく観たいのであれば、一章目のみで視聴をやめる事をお勧めする。私は二章目の女の子が好きなので、二章目のみを観るのも良いだろう。なぜこの作品が賛否両論巻き起こす事になったのか、その理由を知りたいのであれば全編通しでどうぞ。クリエイター・作家もしくはそれを目指す人達に対し、物語を作る上で「やってはいけない事」とは何かを示し、「やらねばいけない事」は何かを考えさせてくれる、教材のような作品だなと思ったりもした。そういった意味で一見の価値有り。見終わってしばらく経つが、思い出すだに不快になる。自分の中でどんどん評価が下がっていくので、0点にならないうちに3点献上しておく。なぜか「4点以上は付けなければいけない」という強迫観念に駆られる不思議な作品なのだ。大変危険である。 【にしきの】さん [DVD(邦画)] 3点(2014-02-02 14:30:16) (良:1票) |
99.《ネタバレ》 朝の情報番組で新海監督の特集をしていたので見てみました。この作品のタイトルは知っていましたが、桜の花びらが落ちる速度とは。さて、感想ですが、この監督さんは背景はとても素晴らしく、実写よりも数倍美しく描くことに長けています。が、こと動く物の描写になると、とんとレベルが下がります。背景にここまで拘るのなら、同じように人物や動物にも力を注ぐべき。動きや影の付け方、衣類のしわなどあまりに平面的で、背景と人物が吊り合っていませんでした。この作品に感動できないのは自分がもうおばさんで、そもそも青臭い話は嫌いだからか?とも思いましたが、そうではないです。だって「時かけ」にはいたく感動したんですもの。主人公はなんかモゴモゴ言ってるし、北の国からの純かと思いましたよ。どなたかも書いていましたが草食男子過ぎます。だいたい中高生の男子なんて頭の中はXXXだらけでしょう。こんなにさらりとした油抜きされた男子、現実味がないです。一方女子の方はしっかり結婚も決まってやたらと現実的。男性はここまで初恋を引きずる純粋な生き物なんでしょうか???第三話に至ってはもうMV用に制作されたものとしか・・・。新作が今年の夏に公開されるようなので、それを見て判断しますが次でダメならこの監督とは縁がなかったものと思います。 【MILA】さん [DVD(邦画)] 2点(2013-05-17 23:48:48) (良:1票) |
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98.ネタバレとは言えない程度に最初のシーンを紹介すると、ヒロインが突然主人公を誘うように走り出し、踏切ごしにブリッ子的ポーズをとりながらブリッ子的声でこう言う。 「来年も一緒に桜…みれるといいね」 …ウゲー、と思った。このクッサいシーンを白けた顔で見ながら私はこの映画のすべてが分かったような気がした。そして我慢しつつ視聴して、この予感が当たっていた事を確信した。例えるなら自作の黒歴史ポエムをウットリしながら朗読してる人を見たような気分。顔を背けたくなるような恥ずかしいシーンとセリフのオンパレード。加えて背景見せたげに無意味にポンポン切り替わるカメラ、死んだ魚のような目をしたキャラクター達、気持ち悪い声優の演技にうんざり。思い出語り的進行とはいえ心情を口で説明しすぎてるのも☓。見所として挙げられる背景も確かに綺麗なのだが、配色と光を誇張してリアリティがなく、綺麗に描きすぎていると思った。正直シネマレビューで酷評する気マンマンで見ていた。 が。観終わった後に妙な感情が湧いてきた。学生時代の事を思い出しながら自分もあんなだったなあと、ちょっとした感傷に浸った。綺麗なだけに見えた背景も、そういや思い出の中の風景ってあんなだよなあと評価が変わった。内容にしろ風景にしろ、自分の思い出とリンクして、何かいいものを観たような気がするのである。不思議だなと思った。 が、やはり観てる間苦痛だったのは間違いないので、この点数にした。大変惜しい映画だと思う。どっかで見聞きしたような表面的で薄っぺらい「カッコイイ」「キレイ」「感動的」な表現を捨て、真正面からモノを捉えて映画を撮って欲しい。 【sinbo】さん [DVD(邦画)] 5点(2011-07-06 10:01:15) (良:1票) |
97.基本、新海誠の完全コントロール下に置かれたアニメであるという所での完成度の高さはピカイチですが、ドラマ自体の完成度が低すぎます。単なる主人公の移ろう姿を桜の花びらの落下速度やロケットキャリアの速度に重ね合わせているのは判るのだけど、物語としての結末を自らが提示出来ていないというのはこの映画の一番残念な部分だろうね。こうした完全に自我丸出しの映画の場合、観ている側は作者の行き着いた先をちゃんと見たいと思う筈だけど、そこをすかしてしまっているから、ポカンとしてしまうしかないのがこの映画だと思います。映像の綺麗さ、美しさとかに、あたしら見ている側は捉われがちだけど、必ずしもそうしたものだけを期待していない人だっているという事を、製作者は理解していなければいけないと思うんだよね。その意味では物語や演出に主眼を置いている人達は完璧に置いていかれたと思います。あたしもそのひとり。自分の好きなように作って公開する、というのはある意味、製作者の理想かもしれないけどね。あたし自身はこの映画を見てちっとも楽しめなかったし、この物語に映像の美しさが必要とも思えませんでした。日本のアニメには基本高い点を付けたい所ですが(あ、最近のジブリ作も駄目ですが(笑))、残念だけどこれが精一杯。 【奥州亭三景】さん [DVD(邦画)] 4点(2011-06-30 12:24:13) (良:1票) |
96.《ネタバレ》 作画は綺麗だけれど、内容がね……。1>2>3の順で内容が悪くなっていく。 1話をもう少し膨らませて、他は後日談的に付け加えて1本の映画にしたほうが良い作品になったんではないだろうか? 高校はともかく、社会人になってまで初恋の思い出に浸っているのは、情けなさ過ぎ。 しかも最後は山崎まさよしの歌が主役になっちゃってPVを観ているかのようだった。 【万年青】さん [映画館(邦画)] 4点(2010-11-23 13:16:02) (良:1票) |
95.《ネタバレ》 算数の『はじきの法則』でご存知の通り、距離・時間・速度は相関関係にある。本作では、この(はじきの法則)が物理的、心理的の両面に作用し、その差異を描いているように思う。 物理的(はじき)にも心理的(はじき)にも、それぞれに条件はあるにせよ、一定の価値基準は存在している。異なるのは、心理的(はじき)に平等の否定が許されている点ではないだろうか? 桜の花びらが落ちる速さは秒速5cm、ロケットを運ぶ速さは時速5km。3年間交際した恋人でも、近付いた心の距離はわずか1cm。貴樹と明里を隔てる距離。逢瀬の道中の長い時間。二人で過ごした一夜。バイクで下校する「幸せなひととき(花苗談)」。永い年月を要して宇宙に辿り着いたロケット。雑然と過ぎ去る日々。 こうしてみると、心理的(はじき)の克服は、物理的(はじき)の克服より困難に思える。物理的事象には、どこかに共通の目的地やゴールが存在している。しかし心理的事象には、受け手によって「独自の線引き」が許されていないだろうか?ゆえに果てがない。ある意味、究極の自由にもなる。 馳せる「想い」が募れば募るほど、それが「重い」に変わってしまう。物理的(はじき)と心理的(はじき)の差、それは「質量」でもあるのかもしれない 印象的だったのは、線引きをするのは女性側からだ、という点。皮肉にも、心の線引きには何らかの物理的要因が絡んでいるのも見過ごせない。終盤の踏切のシーンは、その物理的(はじき)と心理的(はじき)のバランスが描かれているように思う。明里は、踏切の向こうにはいない。とうの昔に心理的(はじき)を克服しているから。希望を捨て切れずに生きてきた貴樹は、列車が通り過ぎるのを待つ。そして現実を目の当たりにする。しかし、彼の顔は晴れやか。たった数十秒の物理的(はじき)によって、ようやく心理的(はじき)の質量を解き放つことが出来たからだ。幼い頃の希望は青い春で絶望へと変わり、無気力な日々に揺蕩うも、再び未来の灯(あかり)が生じる。明里は、貴樹にとって永遠に希望の灯として心に生き続けるのだろう。 マイナス1点は、文語の語り口が少し耳につく事と、好みの分かれる作品だと思ったから。私にとっては、胸を焦がし、狂おしいほど切なさを呼び覚ます作品です。 【港のリョーコ横浜横須賀】さん [DVD(邦画)] 8点(2010-02-18 12:12:09) (良:1票) |
94.1時間程で見終わる青春映画。 その余韻からは1時間では現実世界へとは帰っては来れない。 帰り道であの頃の恋心を見つけてしまったから。 【がらんどう】さん [DVD(邦画)] 8点(2010-01-11 14:57:36) (良:1票) |
93.分かっていてもPVとしての効果絶大。いわゆる草食系男子がお好きな方はどっぷりはまれるでしょう。断じて私の好みではないが、案外この主人公のような男子が今の日本には多いのではないでしょうか。逆に、ヒロインのような女子はほぼ絶滅傾向にあるかと・・。つまり、今時の若い日本人男性の妄想を極めた作品として完成度が高いと思います。 自分は女子のアニメ声が苦手なのでそこだけは引きましたが、映像の美しさで癒されました。日本のアニメ職人は良い仕事しますね~。外人の友達に「日本のアニメのすごさが分かる作品は?」と聞かれたら自信を持っておすすめしたい1本です。内容は理解されないかもしれないけど。 【lady wolf】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2009-04-16 15:12:48) (良:1票) |
92.自分も若かったら点数高かったかもだけど、今となっては大甘な話にげんなり。。大人が商売でこういう話を作るのはどうかな。 【たかちゃん】さん [CS・衛星(邦画)] 3点(2008-05-13 15:32:43) (良:1票) |
【michell】さん [DVD(邦画)] 7点(2008-02-18 22:39:48) (笑:1票) |
90.詰まる。胸が詰まる。 小さな恋心が、“生まれ”、“深まり”、“離れ”、次第に果てしなく遠いところへ“消えて”いく「時間」の切ない流れに。 画面の中に映し出される「映像」も「音」も「言葉」もすべてが美し過ぎる。 美し過ぎることが、殊更に切なく、どうしようもない喪失感に拍車をかける。 もし、この作品を同等の“美しさ”で実写化しても、そこには現実に対する違和感が生じてしまうだろうが、アニメーションであることがこの世界観をまかり通している。 透明感に溢れた映像世界は、新しくはあるがこの国の原風景的な情感を感じさせ、どこか懐かしく、安心感を覚える。 この新しい「才能」は、生み出される映像世界と同様に、無限の可能性を感じさせる。 いい映画だと思う。 種子島の吹き抜ける風の中で、無限の世界に飛び立っていくロケットを見たい。 【鉄腕麗人】さん [DVD(邦画)] 9点(2007-11-09 00:17:48) (良:1票) |
89.《ネタバレ》 見る人により評価は分かれる作品ではないでしょうか。 空の描写などはすばらしいの一言に尽きるが、 映画としてというか ストーリーに共感できる人 にはたまらない作品だ。 ラストの歌と映像は もはや反則である。笑 【しろタマネギ】さん [DVD(邦画)] 6点(2007-08-19 09:49:02) (良:1票) |