3.《ネタバレ》 コレ、ポスターの画像を見てもほとんどの人が「ソソるモノが無い」と思うわね。なんとなくジミめな海外アニメーション、アチラ産の、日本人には向いてなさそーな雰囲気。
実際、歌と笑いが散りばめられた、ファミリー向けのアメリカンなCGアニメーション映画。当たり前にありがちに思えるフォーマットの作品なのね。
コミカルなイエティはともかく、人間側のキャラクターはとてもじゃないけれど魅力的なデザインには思えず、「えー?コイツが人間側の主人公?ヤダー」みたいな印象。
だけど実はこれが大傑作! 後でDVDとかで見て「ぐわー!劇場で見れば良かった!」とか言っちゃうタイプの映画。個人的に今年のムーブメント的作品な『カメラを止めるな!』『若おかみは小学生!』以上に強くお薦めしたいわ。
以下はネタバレなので、ご注意。できれば読まないで見る事お薦め。
映画はイエティの集落を舞台に、イエティ社会を通して世界を象徴してゆくのね。タイトルの「スモールフット」っていうのはイエティ達から見た人間のこと。人間はイエティ達にとってのUMA、空想上の生物的な。
イエティ社会を支配するのは古くからの伝統的な教え。その教えに従ってさえいれば、みな幸せに暮らしてゆける、そんな社会の中で教えを盲信する側だった主人公が出会ってしまう、存在するハズのない「スモールフット」。一方、教えに疑問を抱き「スモールフット」の存在を探求する若者たち。
この映画には具体的な倒すべき悪役は存在しないの。真実を知りながら、あえてそれを隠し、民衆を無知な状態で支配する長老は、だけど良かれと思って情報をコントロールしてる。実際、事態が動いた時に主人公の父は「知らない方が幸せだった」と漏らすし、真実は民衆にとって危険をもたらす事に繋がるし。
そこに描かれるのは国家、政治の国民に対する姿勢、マスメディアのあり方、情報化社会での情報の扱い方。歌って踊ってドタバタ(ワーナー伝統のカートゥーン臭漂う)なアニメーションの中に織り込まれた、その重さ、難題。
そしてその難題に対して、この映画なりの結論をキッチリ描いてみせるのね。最後まで描ききりました、というラストシーンを見せてくれるわけ。
子供は純粋に楽しめ、そしてそこから何かを感じとり、大人はそこに流れる重いテーマから、あるべきこと、すべきことを考える、そういう深いアニメーション作品。
『ヒックとドラゴン』をかなりイメージさせて、あと『モンスター・ホテル』とか『LEGO ムービー』とか『メアリーと秘密の王国』とか(『モアナと伝説の海』は似ているようで意外と遠いかも)あたりを思わせて、そういう点では正統なアメリカンなアニメーション映画の系譜なのだけれども、そこら辺にアンテナが動く人ならば思い切り楽しめるだろうし、そうでない人もとりあえず見て!と言いたいわ。
何しろ上映してるハコ自体が少ないのだけれど、その少ないハコの中がガラガラで、クオリティ高くて素晴らしい映画なのにあまりにもったいなくて。