16.「ゴールデンカムイ」は、今年原作漫画を“大人買い”した作品の一つ。
もちろん、数年前からその独自性とスペクタクルな世界観についての評判はよく聞いていたのだが、例によってふと読み始めた漫画アプリの無料配信分にドハマリしてしまった。
漫画表現ならではの緊張と緩和、バイオレンスとグルメ(和み)、そして明治時代末期の北海道を舞台にした歴史観と冒険譚のバランスが絶妙で、抜群の娯楽性を創出していると思う。
私は、映画好きであるが、それと双璧を成す漫画好きでもあるので、漫画の映画化が必ずしも幸福に至らないことをよく知っている。いやむしろ、漫画作品としての完成度高まれば高まるほど、その映画化の辿り着く先は「地獄」であることが必然であろう。
だから、この手の漫画の映画化作品は、基本的に観ないようにしている。
それでも、そんな私を本作の鑑賞に至らしめた要因は、何と言っても実写化におけるキャラクターの造形力だ。原作の極めて“マンガ的”なキャラクターたちを、過不足無く、そして違和感無く、見事にクリエイトしていると思えた。
実際に鑑賞してみると、一人ひとりのキャラクターのヘアメイクや衣装の極めて高い精度が、本作の最大の成功要因であることがよく分かる。
そして演者たちも、制作スタッフたちの高い技術力に呼応するように、原作を読み込み、リスペクトした上でのキャラクター造形に努めていたと思う。
不安だったのは、主人公である“不死身の杉元”と“アイヌの少女アシㇼパ”を演じた、山崎賢人と山田杏奈だったのだが、この二人のキャラクターへのフィット感が、個人的な想定を大いに越えて良かった。
特に“アシㇼパ”は、原作漫画ではもっと見た目にもわかりやすく「少女」なので、大人の女優が演じる以上、違和感は禁じ得ないと思っていたが、演じた山田杏奈はそんな印象をほぼ感じさせず見事に演じきっていた。
本作全体の白眉なポイントでもあるが、この漫画に無くてはならない“グルメ描写”を丁寧にちゃんと映し出し、山田杏奈演じるアシㇼパの「ヒンナヒンナ」を多幸感溢れる“和み”と共に表現しきったことが、何よりも素晴らしかったと思う。(エンドクレジット中の“オソマ”入り鍋を食べるシーンなど最高じゃないか!)
あとは、過去最高の怪演を見せる玉木宏をはじめ、金塊争奪戦の群像を彩る各キャラクターたちの造形と表現もみな原作ファン納得の仕上がりだった。
これからの展開に登場するありとあらゆるキャラクターたちのクリエイトも当然期待できる。
が、個性豊かな囚人たちが続々登場する“囚人争奪編”は、なんとWOWOWドラマ化とな。
憎らしいくらいに“上手い”戦略に、WOWOW再加入を悩み始める今日このごろなのは言うまでもない。(桜井ユキ扮する家永が見たすぎる)