36.《ネタバレ》 黒澤監督のある意味実験的映画ですね、しかし、なんだ、水爆など放射能はもちろん怖い、それ以上に人間模様が恐ろしかった、三船の怪演する老人が追い込まれ押し込められていく、複雑な関係、思惑、生きものの方が怖いのかもしれない。終のあとの音楽がなんとも。 【min】さん [DVD(邦画)] 7点(2013-08-28 20:28:22) (良:1票) |
35.黒澤監督の作品は、白黒ハッキリした単純明瞭な作風だと勝手にイメージを持っていたけれど、この作品を観ると決してそうは言えない作家だったんだなあと思う。映画は大きく分けると「オレはこう思う!」ってタイプの作品と、「オマイラどう思う!?」ってタイプの作品に分けられる。この映画はどちらかとういうと後者なんだろうな。現在進行形だった問題を、こうして映画作品として作り上げ、「生きものの記録」と名付けた黒澤監督の思いはどんなものだったろう。 この映画の中の家族は、恐らく世間や世界の縮図として描かれていると思う。だからこそ、「オレはオレの好きなようにやるぞ!」とは決して出来ない。一筋縄ではいかないのがよく分かる。 園子温監督は「希望の国」で放射能の問題を取り上げたけど、あの作品は「生きものの記録」として50年後60年後どうなってるだろう。 そしてそれを観る人々や世界はどうなっているだろう。 「生きものの記録」が作られてから約60年。現在の日本はご覧の通りです。トホホ・・・・・ 【ゆうろう】さん [DVD(字幕)] 7点(2013-05-21 01:00:10) (良:1票) |
34.非常に重みのある作品。 まずはやはり三船の演技が凄い凄い。 全体的に特に派手な展開や演出は無いが、台詞ひとつひとつが無駄の無いもので、それぞれの人間のエゴを強力に映し出す、黒澤映画ならではの力強さが感じられる。 ラストの画、余韻が特に素晴らしく、映画の深い深いテーマをさらに色濃くしている。 鑑賞後思わず唸ってしまった。 【おーる】さん [DVD(字幕)] 9点(2010-01-30 23:48:41) (良:1票) |
33.最後がとても衝撃的だった。時代劇・現代劇を問わず、当時の黒澤作品はわりとキレイに話がまとまって終わっていたのに、これだけは違っている。映画が終わっても観客に考えさせようとしているのだ。確かに喜一老人は狂っているかもしれないが、目の前にある核戦争の危機に対して目を反らし知らん顔して生きている奴こそが本当は狂ってるのではないか、と。深い映画です。 初代『ゴジラ』や『世界大戦争』などとセットで観るのもいいかと。 【とかげ12号】さん [ビデオ(吹替)] 9点(2005-11-20 18:14:10) (良:1票) |
32.水爆を怖がるガタイのいい爺さんが怖い!!しばしば喜一は水爆への恐怖で錯乱し暴れて、家族をパニック状態に落しいれる。特に最初の裁判所の迫力は凄まじい。マルチ・キャメラ撮影は、圧迫感でむせ返る様な臨場感を醸し出すのに成功している。私は中島家の人々と一緒に困惑し恐怖に慄いた。夕立の閃光瞬く中「こんな馬鹿な物を作りやがって!!」と水爆実験の記事が載っている新聞を引き破るシーンを見て私は子供のとき見た第一作目の「ゴジラ」の恐怖が蘇って来た。他にも濃密な絵の連続で、完全に映像がテーマを凌駕している。映画にとって最も幸福な例である。故に、しょうもない啓蒙や説教に墜落するのを回避出来ている。と言う訳で私はこのテーマや喜一には全く感情移入が出来なかったが、「ゴジラ」同様、自分の理解を超えたものへの恐怖を存分に堪能した。ウーン流石東宝。特撮映画の最高傑作!!次はサンダとガイラ対中島喜一で御願いします。 【水島寒月】さん 9点(2004-05-03 10:14:42) (良:1票) |
31.精神病患者となってしまった老人を、家庭裁判所の男と老人の妾が見舞いに訪れるラストがとても素晴らしい。このシーケンスにこの物語の全てが集約されていると言っても過言ではないでしょう。妾の背に抱かれた赤ん坊の寝顔がほんとうに印象的で、「何も知らん赤ん坊を水爆なんぞに殺されてたまるか」と言う老人の台詞に素直に共感させられ、「狂っているのはあの老人なのか、それとも正気でいられる我々なのか」という最後の問いかけには思わず言葉に窮してしまいました。登場人物の中で、老人の理解者として印象づけられるのは、血縁関係にある妻や息子達ではなく、見舞いに訪れた家庭裁判所の男であり、妾という、いわば他人である人物です。実際、彼等の立場は非常に弱く、実に無力な存在として描かれ、黒澤監督は、ここに「正しきもの=無力」という図式を作り出し、社会に対する怒りとも言うべきメッセージを全面に打ち出しています。原水爆反対という社会的な大テーマを家族ドラマの中で訴えようとしたことでかなり無理が生じている部分もありますが、メッセージは徹底的に強く、娯楽は徹底的に面白くというように、作品のコンセプトがはっきりしているところが黒澤監督の魅力。作品の中でとことん突っ走ってしまう黒澤監督は良い意味でとても「不器用」な監督だと思います。これは娯楽大作でも同じだと思うのですが、実にわかりやすく明確なテーマを持って突っ走った本作は、特にその「不器用」さがまともにでている作品と言えるでしょう。原水爆というものに対する知識や理解については、現在では随分変わってきていると言えども、この映画で黒澤監督の発したメッセージはとても重要だと思いますし、強く共感できます。マルチキャメラ方式を採用した最初の作品であり、早坂文雄の遺作となった作品。ちなみに興行成績は黒澤作品中で最低らしく、こんなところもまた良かったりします。 【スロウボート】さん 7点(2004-02-21 23:55:10) (良:1票) |
30.水爆に対する不安のあまり暴走するジイサンの話、ですが演じている三船敏郎の実年齢が役の半分くらい、巧みなメーキャップにより違和感は無いものの、やたらと迫力があります。 その迫力ジイサンが、水爆から生き延びるにはブラジルに移住するしかない、と騒ぎを起こし、振り回される家族たちは彼に対し準禁治産者手続きを取る。その騒ぎを冷静に見つめる志村喬。 このジイサンも決してホメられた人ではなく、妾を何人も抱えてたりして、お陰で家族構成がちとややこしい。本作のややわかりにくいところでもあります。ジイサンもジイサンなら家族も家族、とりあえず、全面的に「この人が正しい」っていう人は見当たらない。 しかし誰が全面的に間違ってる訳でもなくって。結局、「核兵器をどの程度怖れるのが適正か」なんてことに正解があるわけでもなく、とりあえず東西冷戦だけは乗り切った現在においてもまだ、今の我々が歩いている道がどの程度正しいかなんて、サッパリわからない。事態は今でも根本的には変わっておらず、恐らくは答えが出る日とは、「間違ってたことに気がついて後悔する日」以外にはあり得ない。それは明日なのか、それとも無限の未来なのか。 という、絶対性への信頼感を失い相対的な不安の中でしか生きられない姿が、ここでは多少コミカルに、しかし多くは辛辣に描かれてます。 雨、風といった、活劇的な要素もこの作品の中では不安をかき立てるように織り込まれており、さらにはあの煙漂う焼け跡の、廃墟感。破滅を回避しようという意志が別のカタストロフを呼んでしまうという虚しさ。 ラストシーンは、前の大戦を知る年老いた男と、まだ何も知らずに母の背中で眠る赤ん坊とがすれ違って映画の幕を閉じます。核兵器云々に限らず、我々は、次の世代に、何を約束出来るんだろうか? 後に続く、不安に満ちた音楽。このアヤしい音色は、横山ホットブラザーズでお馴染みの、ノコギリでしょうか? 【鱗歌】さん [インターネット(邦画)] 8点(2021-06-13 12:57:55) |
29.《ネタバレ》 タイトルで損をしているが、さすが黒澤明!面白い! 水爆の放射能は、誰もが怖いだろう。 令和の今は、原発の放射能が怖くない人はいないでしょう。 しかし、皆、忘れたふりをして、目の前の問題に夢中になっている。 この老人は、ちょっと異常にデリケートで、有能であるがために、具体策まで考えて、それを強行しようとする。 ブラジル行がそれだ。 それを周りの人は、禁治産者という法的に判断できぬ人、現実が分からぬ人として、 なんとかしようとする。 確かにわがままな老人の世迷言の一つかもしれない。 しかし、最後に孫をおんぶして、老人の見舞いに来る女性には、 そこには愛があったと思えていたのだろう。 さすが、黒澤節! 【トント】さん [DVD(邦画)] 7点(2020-05-28 02:10:07) |
28.独りよがりが過ぎて狂人の域まで至っている黒澤監督が、同じく独りよがりが過ぎて狂人の域まで至っている男を主人公に描く純粋独りよがり映画。監督の内面をそのまま実体化したような不快なじじいが主役。そして、凶暴なようなそうでもないような彼を近親者が恐れているようなそうでもないような、心理的につじつまのあわないシーンが連続してあきれる。そんなご都合主義の演出は歌舞伎の型で出来ているようなシュールさで、無理矢理な老け役の三船敏郎の力みすぎの熱演と、コントみたいなメークの水戸黄門の登場と相俟って観ているこちらも発狂しそうだ。また大上段に構えすぎる問題意識の表明は、黒澤さんがはずす時の「観客おきざり」というある意味王道ともいうべきパターン。本作はタイトルからしてそうとう恥ずかしいその手の代表作かと。こんな自己満の塊みたいな作品のために、町工場のセットを周辺も含めてまるごと作るのだから、当時の映画産業の持つパワーに思わず感心してしまう。家庭裁判所の廊下のセットは当時新しく出来た体育館みたいなスタジオを斜めに使った長大なものらしいが、画面を圧縮して密度を高める黒澤理論に沿って望遠で撮っているせいで奥行き感はなく、その効果はほぼ感じられない。大塚駅のセットもそれを作る必然性を感じる画は無い。いったい何やってんだ? 我が儘いっぱいの大人子供が作ったような極めて奇怪な作品なので、貴重なその珍奇さをもって10点でも100点でもいいのだが、どう好意的にみてもドラマ的なチープさは否めないうえに、心底恥ずかしい気持ちにさせられたので0点。 【皮マン】さん [DVD(邦画)] 0点(2016-12-29 16:40:57) |
27.いわゆる超大作ではないだろうし、黒澤映画の中では時間が短い方だから、と気楽な気持ちで観始めた。だが、内容やテーマが想像以上に多重的で重く、観終えたあとの気持ちはとても重苦しい。この作品にある、原水爆への恐怖心から家族総出でブラジルへの移住を進めようとする主人公の立ち振る舞いのようなことは、たとえここまで大きな問題でなくとも、我々の生活のどこかにあるのではないか、と思う。僕自身の経験で言えば、こんなことがあった。10年ほど前に、仕事関係の会の有志で、軽く山登りをしようと計画したときのことだ。そういった試みは初めてのことで、ピクニックのようなコースを歩くことになったのだが、保険や安全装備などを必要以上に心配して、そういったフォローをとことんまでしようとする、一人のメンバーに辟易したことがあった。当時は、僕がそのリーダーに担ぎ出されていて、その行為に対して、そこまで心配しなくていいのでは、と消極的反対をしたのだが、そういった心配は正論と言えば正論だと、ほかのメンバーは誰も表立っての反対ができず、結果、リーダーとして、そのフォローに大変な負担を強いられたことがあった。それ以後、僕は山登りを計画しなかったし、とっくに交代した歴代のリーダーも、山登りを一度も行おうとしていない。そしてもちろん、そのメンバーは今も会に在籍している。僕自身のこういった経験からも、過剰な善意による、結果的な迷惑行為を止めるのは大変難しい、と強く思うし、それゆえに、この作品での、そういった問題を正面から描いたことによる重さに、すっかり参ってしまったのだ。しかし、この映画の重いところはそれだけにとどまらない。そういった迷惑行為がエスカレートすることによって、結果的に家族の生活基盤までもが崩壊してしまう。その崩壊に至るまでにも、主人公の、妾を含めた複雑な家族構成や、そこから見え隠れする人間の醜さがじっくりと描き出されていくのだ。確かに、それによって、この映画のドラマ性はさらに深みを増し、映画の完成度はさらに上がっている。だが、皮肉なことに、それが、観ている僕の心をますます重くしてしまうのである。上映当時の興行成績は良くなかったそうだが、それは、エンターテインメント性に欠けた、この映画の重さのためなのではないだろうか。徹底的に救いのない内容であるため、何度も観たい映画ではないが、ドラマ性のある作品を観たいという人にはお薦めしたい、非常に良く練り込まれた作品だと思う。 【はあ】さん [ブルーレイ(字幕)] 8点(2016-05-05 16:25:43) |
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26.《ネタバレ》 ちょっと一見すると三船さんとは分からない老人役を演じていて、何か少し違う雰囲気。原水爆の恐怖を描いているが、少し一方通行な主義主張が押し気味で独特。どうしてブラジル?とやっぱり疑問は残る。何かとても割り切ってつくられたような作品でしたね。最後のシーンも何かとても印象的でゴザイマシタ 【Kaname】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2015-06-11 10:19:42) |
25.《ネタバレ》 面白いか、と問われると面白くはない、じゃあ駄作か?と問われるとそんなことはない。 なにか見終わった後にこの作品について考えさせられて、じゃあそれってやっぱり良い作品なんじゃないか、というとよくわからない。 信念を持ってとった行動も、アングルを変えて見るとただの迷惑行為であるという、価値観のすれ違い。 その辺の描き方は見事だなと思いますけど、あまりにも三船が1人過ぎたのかも。 観たのは結構前ですが未だにこの作品のことを考えています。 【大経師】さん [DVD(邦画)] 5点(2014-10-18 14:48:39) |
24.一言で言うと「早すぎた作品」。時代がやっとこの映画に追いついたといってもいいだろう。黒澤監督は、このほかにも「八月の狂詩曲」「夢」の中の「赤富士」で核と原爆の恐怖を取り上げてるけど、彼にとっての核への怒り、恐怖感、が理屈ではなく生理的なものなんだなということがよくわかる。いまこそ見られるべき映画だと思います。 【ひろみつ】さん [DVD(邦画)] 10点(2014-05-14 17:50:38) |
23.米ソ冷戦の時代、両国は広島長崎の数十倍から数百倍の威力をもつ原水爆実験を競い合うように行った。それはもはや地球の全都市を破壊してしまうほどのものであり、死の灰とか黒い雨など放射能汚染の恐怖もさかんに論じられていた。だからこういう映画ができても当然なのだが、いかんせんこの映画ではエゴと狂人に焦点が当てられ、社会派映画にはどうもという感じに思える。三船敏郎の老け役には驚くばかりだが・・・。ところで何でブラジルが安全という理由はないだろう。当時はブラジル移民の数が多かったし、単に新天地開拓と結びつけただけではなかろうか。 【ESPERANZA】さん [DVD(邦画)] 5点(2013-07-16 17:21:01) |
22.製作当時はまだ核が落とされて間もない頃であり、さらに第五福竜丸事件が起きたばかりで、核に対する不安や危機感が今以上に強い頃だったという予備知識を入れて見ると、あの老人の一見異常に思える行動や考えも、理解できる範疇にあります。まだまだ未知数であった核に対する恐怖心たるや相当なものがあったでしょうし、いつ核戦争が起こってもおかしくない不安というのは現代にも通じるものがあります。この先の時代を危惧する黒澤監督の強烈なメッセージ性を感じますね。今後核がなくなる事はないかもしれませんが、原発を身近に感じた今だからこそ見ておくべき映画だと思います。 【キリン】さん [DVD(字幕)] 8点(2013-01-27 02:31:39) |
21.《ネタバレ》 この映画の製作当時は原水爆に対する不安があった(今もある)。 しかし黒澤明の訴える恐怖とは、原水爆よりも「核」そのものに対する恐怖である。 この老人の行動を「原発から逃げる」と置き換えれば、全く現代のドラマとして成立する。 「核」が止められないものであれば、根本的な不安を取り除くには、この老人のような極端な行動をとるしかない。こういうテーマで直接的な表現をせず、ドラマによって「核」の恐ろしさを訴える黒澤明の才能はやはり尋常ではない。 この映画の製作当時から半世紀たっても、この恐怖がさらに身近になっていることに、どうしようもない人間の愚かさを感じる。 今こそリメイクする価値があると思うのだが、各方面から絶対阻止されてしまうだろう。 しかし、今だから平成の「生きものの記録」を見たいと思う。 【どっぐす】さん [映画館(邦画)] 9点(2013-01-06 23:37:05) |
20.《ネタバレ》 今時分に観ると当時の生活模様が観れて新鮮だった。エアコン、クーラーなんて物は無かった。テーマは原水爆に脅かされ続けて逝くだろう人類の今。キャラの設定等がいかにもありそうな風で面白い。しかし原水爆自体が現代では珍しくもなく、事態がより深刻かつ複雑で当たり前になってしまっているからか、老人の不安をリアリティーとして感じ取る事ができなかった。戦後のテーマではあると思う。 【warrabit】さん [ビデオ(邦画)] 5点(2011-01-07 13:40:23) |
19.《ネタバレ》 本作の前年の第五福竜丸の被爆以降、国内では反核キャンペーンが盛り上がったらしい。映画で最も協力した作品は「ゴジラ」だけど、本作もその気運に連なる作品なのでしょう。原水爆の恐怖に怯える男を、三船が老け役で演じる。その老け演技がなかなか見事です。一族の無事を願ってブラジルへ移住しようとする男と家族の対立がメインストーリー。第五福竜丸の被爆も米国科学者の計算値を越える範囲に死の灰が降ったことが原因だったので、この男の主張をバカバカしいと軽く一蹴できない世相が当時にはあったはず。そんな漠然とした不安を衝くシナリオは、鑑賞者には刺さっただろうと想像する。この男はブラジルへの移住を計画する前には青森あたりに核シェルターも建造していて、テーマや設定を見廻すと、これは黒澤作品唯一のSF映画と言えるのではないかと思います。黒澤らしい力強い映像と割り切れない終わり方の組み合わせは新鮮でもある。前年に「ゴジラ」で水爆への恐怖を語った志村喬が同じような役目を担っていました。ちなみに、なぜブラジルへ行けば死の灰の恐怖から解放されるのかは説明されていません。 【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2011-01-02 21:49:43) |
18.《ネタバレ》 狂気とエゴとの戦い。 狂気は、誰もが持っている不安をことさら大げさに考えるもので本当に狂気なのかどうか判らない、むしろ、家族を思う気持ちが強いゆえの狂気。 エゴも、誰もが持っている現状満足を壊されたくないという些細なエゴで、他人を不幸にしようという意思はない。 最後は、狂気が負けて本当に狂人になってしまうが、誰も喜んでいない、とても後味の悪い作品。 三船敏郎の老け役を筆頭に、すべての役者の演技も見事、画面作りや、テンポよく見せる手法は、さすが黒澤監督なのだが、問題提起をして、見る者にひたすら考えさせて、ぐっと盛り上げる場面、娯楽的な場面、感動を呼ぶ場面などは全くなく、淡々と話を進めて後は勝手に解釈してくれというようなストーリーは、黒澤作品としては異色かも。 【nobo7】さん [DVD(邦画)] 6点(2010-09-12 00:50:48) |
17.問題作。超をつけてもいいほどの問題作。 製作年を考えれば、あまりにもリアルすぎるテーマが敬遠されたのかも知れないが、映画公開後約54年経過した現在でも、全世界を巻き込む戦争が起こる可能性は十分あるし、中東辺りでは戦争が日常茶飯事である。そう言う現実を改めて考えてみれば、主人公の中島老人の行動は、「狂気」の一言では片付けられない。この映画を、全ての国の国家元首は見る必要があるだろう。 キューブリックの「博士の異常な愛情」もふせて鑑賞されることをおすすめしたい。 【Acoustic】さん [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2009-01-03 12:26:50) |