195.《ネタバレ》 「生命とは情報の流れの中に生まれた結節点のようなものだ。種としての生命は遺伝子という記憶システムを持ち人はただ記憶によって個人たり得る。たとえ記憶が幻の同義語であったとしても人は記憶によって生きるものだ。コンピューターの普及が記憶の外部化を可能にした時、あなたたちはその意味をもっと真剣に考えるべきだった」 もうこれで全てでしょう。養老孟司の「唯脳論」ではないが、人は記憶であり、人は脳である。でも、記憶は人で、脳は人ではない。インターネットの一般人への普及、ニューアカデミズムの盛り上がりなど、公開当時の時代背景を深く感じさせるが、現代でも通じる今日性をもったテーマ感が素晴らしい。 |
194.人間の認識が外部からの感覚情報に基づく電気的信号から構成されているならば、それを電子情報に写し取ることが可能になったとき、人間はもはや可死の肉体を必要としなくなる。・・・・このテーマは、昔からSFの定番テーマです。原作の士郎氏と押井作品は、このテーマを受けつつ、「ではそのとき、"わたし"というものの固有性は何か」ということに焦点をあてます。人間の認識が電子情報に転換された時、本来、バラバラの情報を一つにまとめつつ自己意識を生み出す正体が何なのかが不明だからです。・・・・というか、この問題は、ロック、カント、ヘーゲルを経て、現代にいたるアポリアです。・・・・・で、原作者は、それにゴーストという名前を付けます。それは、人間の認識が電子情報になったとしても、自然科学的な分析では表現することのできない、何か人間的なもの、「わたし」というものを成り立たせるものが存在するということの宣言と言ってもよいでしょう。・・・これは魂、霊魂といっても良いのですが、魂は不死であるのに対して、ゴーストは可死で、原作者はそこに決定的な違いを見いだしていると推測します。・・・・・それに対して押井氏は、ゴーストにはあまり関心を示していません。・・・・近代的な自我の相対化という文脈でいえば、原作者が、その相対化をすすめつつ、相対化できない、何か人間的なものがあるという立場であるのに対して、押井氏は相対化にのみ関心があるといっても良いでしょう。・・・(紙幅の関係で中略)・・・原作は映画ではありませんが、もし点数を付ければ9点をつけたいです。押井作品は、押井氏の完全なオリジナルなら8点、題名を原作と変えて個人的解釈であることを明確にすれば7点。今のままなら4点です。・・・・なぜなら、原作が十分に理解できていると思えないし、また原作を読んでいない人には、説明が全く欠如していて理解不可能だからです。そもそも監督には、多くの人とこのテーマについてコミュニケーションしようという意思があるのだろうか。・・・・一言で言えば、原作とは異なり、「格好いい、おたく映画」に成り下がっている。 【王の七つの森】さん 4点(2004-10-26 09:18:23) (良:2票) |
193.《ネタバレ》 なんだ、これもラブストーリーだったんだ!? イノセンスを観てから見直すと、9年前には気が付けなかった物語のベースラインに改めて気が付いた。人形遣いのゴースト(?)にダイブした素子とそれを苛立ちと共に見守るバトー。物語の終端で、少女の擬体に収まった素子に対して『今でもあいつはお前の中に居るのか?』と言ったバトーの心は甘くも痛い・・・。そしてこの行き場の無い愛の形はイノセンスに繋がる。 肉体を捨ててなお愛は存在し、しかし、決して彼岸を越えない。 う~切ない・・・(涙) |
192.《ネタバレ》 Windows95が発売されてようやく一般にもインターネット普及の土壌ができたばかりだった1995年の段階で、すでに電脳や情報の海をテーマにしたという先見性。また、舞台となる未来都市の作り込みの凄さや、リアリティと荒唐無稽の間で絶妙なバランスを維持するアクションなど、すべてがハイレベルで時代に囚われない普遍性を持つ作品だと言えます。スカヨハ版の鑑賞にあたって十数年ぶりに鑑賞したのですが、インターネットが当然のインフラとして定着した現在の目で見る方がよりしっくりと来て、以前に見た時よりも印象はさらに良くなっていました。とにかく凄い映画だと思います。 本作のタイトルには「抜け殻(シェル)に魂(ゴースト)は宿るのか」というテーマが集約されています。脳や脊髄を除く全身が義体化された主人公・素子は、「自分は作られた記憶を信じ込まされているニセモノではないのか」「ほぼ全身が義体である自分を人間と言えるのか」との不安を抱き続けています。しかしクライマックスで100%電脳である人形使いと接触し、その魂が生身の人間のそれと何ら変わらないものであると知ることで有機か無機かという器へのこだわりが無意味だったことを悟り、新たな電脳生命体へ進化する道を選択します。これぞサイバーパンクです。 他方で、テーマがよりはっきりと見えるようになった分、構成のまずさも見えるようになりました。実存主義を説く素子の物語が横軸だとすれば、人形使いを追う中で巨大な陰謀に巻き込まれていく9課の物語は縦軸だと言えますが、9課の物語が無駄にややこしくて観客に要らん脳を使わせているし、本来は盛り上がるべき部分に勢いがなかったりと、娯楽作としてはやや失敗しているのです。ひたすらしかめっ面をするのではなく、バカバカしくも面白い部分があれば、より素晴らしくなったと思うのですが。 この点、評判の良くないスカヨハ版は娯楽部分のまとまりが良く、本作の欠点がうまく補完された作品だと評価できます。本作を見ればスカヨハ版の良さが分かるし、スカヨハ版を見れば本作がいかに深いことを語っていたかが分かる。ニコイチで見ることで双方の味わいがより深くなるという、なかなか面白いコンビだと思います。 【ザ・チャンバラ】さん [DVD(邦画)] 7点(2018-01-27 02:28:55) (良:1票) |
191.《ネタバレ》 押井の「パトレイバー2」は大嫌いだが「攻殻機動隊」は別腹大好き。 士郎正宗のエロいイラストじゃなくなった事だけは残念だが、無機質なオーバーテクノロジーの集合体みたいな動きには圧倒される。 人間が「義体」に体を入れ替えていく様子が怖かった。人間何処まで機械化されてしまうのか。 トグサには人間でいて欲しい。 巨大なタチコマみたいな戦車との戦いが凄い。少佐がメスゴリ(ry 少佐もそうだがバトーも無茶しすぎて毎度ジャムッてます。押井流「ジャムおじさん」? 「素子、新しい体(義体)よ!」(嘘) つうかラストの素子が原作じゃマイケル・ジャクソンもどきだったのがコッチじゃゴスロリ少女ときたもんだ。何でコッチの方が可愛いいんだよっ! いや、市街地の戦闘直後にバトーが素子に「ファサアッ・・・」ってやるシーンのバイザー素子も可愛いと思うんだ(´・ω・`) 戦う女はどうしてこうカッコ良いのだろうか。 所長は人間なのか機械なのかヤクザなのか一番謎だ。 まったく、「ネットは広大だわ(ネットの海は広大だわ)」。 【すかあふえいす】さん [DVD(邦画)] 9点(2014-03-13 18:12:34) (良:1票) |
190.《ネタバレ》 む、難しくないですか? 映画の難しさにもいろいろあると思うのですが、今作のように「予備知識がなければ難しい」というタイプの難しさはやはり不親切だと思います。 映像がきれいだし、キャラクターも好きだし、車が走っているときのネオンの反射やアクションシーンのなめらかさなんか美しすぎて言葉も出ないくらいなので、ますますもったいないという気持ちが強くなります。これで設定の説明を序盤に5分だけでも良いので入れてくれれば万人に愛される映画になったのにと思います。 原作もテレビも全く知らないのですが、恐らく「ゴースト=魂?自我?」みたいなもので、「我思う故に我有り」といったところでしょうか。すごく興味深かったのは、サイボーグの9課の皆さんや、電子生命体である人形使いのゴーストと、清掃車の作業員のゴースト?との比較。所詮肉体は魂の器にすぎないというのは宗教や哲学でも論じられるテーマかもしれませんが、このような具体例を出してくれるとすごくわかりやすい。 生身の肉体を持つ清掃車の作業員。しかし、彼の記憶の大事な部分は外部から捏造されたもので、本当の記憶ではなかった。それに対してサイボーグや人形使いは明らかに「自分」という意識?自己?自我?をはっきりと持っている。 すなわちこの両者の対比によって、器の存在価値が随分と希薄なものになっちゃってます。 昔マイナーなギャグマンガで、ホットケーキが突然自我を持ち、「我思うゆえに我有り」と言い出したのを思い出しました。それを考えると、ほんと器なんて何でも良いじゃん、と思っちゃいましたが、やっぱりそれでも生身が一番でしょう。 また、本筋とは全く関係ないですが、パソコンを打つサイボーグのみなさんの「手」の造形、最高にいかしてます☆超きもちわるい☆ 【たきたて】さん [DVD(字幕)] 5点(2013-04-23 14:00:13) (良:1票) |
189.以前から傑作アニメという噂のみ聞いており、事前に情報を仕入れないまま鑑賞。声優は芸達者な方ばかり、アクションシーンも印象的でしたが、物語の筋がさっぱりわからない・・・。ゴーストとか九課とか主人公含めたサイボーグの設定などが全然説明されないままややっこしい話が進み、盛り上がりがないままのあの終わり方。到底評価できません。原作を読んでいたら理解の助けになるのでしょうが、それでは独立した映画作品とは言えませんし、そんな作品に高得点はつけられません。 【次郎丸三郎】さん [DVD(邦画)] 4点(2012-10-21 15:23:10) (良:1票) |
188.《ネタバレ》 このテの作品はたいてい苦手で、「何を知った風に」と腹を立てて観るのをやめてしまうのが通例であるのに、これに限って言えばすごく面白かった。旧市街と新市街が入り混じった現代中国のような近未来都市は魅力的で、妙な歌とその風景が延々と写るシーンには魅入られた。何が人間で何が機械か、ひょっとしたら自分は人間では無いのではないか、そういう恐ろしさと言うか居心地の悪い感情に責められる主人公が海に潜る理由について語るシーンも出色である。ただ一点、残念な点は、とてもこの作品一本で語りつくせる量の世界観ではないから仕方ないのかもしれないが、説明が少ないこと。僕よりもう少し短気な人は、「ゴーストって何やねん、アホくさ」と思って観るのをやめてしまうかもしれないということ。それはそれでいいのかもしれないが、せっかくだからもう少し分かり易く教えてくれてもいいのにと思った。気を長く持って観てよかった。 【枕流】さん [DVD(邦画)] 7点(2007-10-11 01:09:15) (良:1票) |
187.《ネタバレ》 【ネタバレあらすじ】プロジェクト2501で外務省は情報工作プログラムを作る。しかしそれはネットの海で独自のゴーストを発生させる。外務省プログラマーはバグとしてそれをネットから隔離するが、隔離されたプログラムは人形使いと呼ばれるハッカーになっていく。あせった外務省は人形使いを回収しようと躍起になり、真相を隠して9課を巻き込む。そんな中、外務省の依頼で、草薙は2501のプログラマーの亡命を阻止する。次に通訳にハッキングしようとしたた人形使いの行方を追跡するが、捕獲できたのは操られたダミーでしかなかった。その後人形使いはネットの中に追い込まれ、義体製造社にハッキングして義体を自ら製造、その中に入る。義体はトラックに破壊され9課へ収監される。そこへ外務省から部長と研究者がやって来る。ところが彼らは三人の光学迷彩で透明化した兵士を伴っていた。外務省は義体の中には人形使いがいることを告げ、義体の引渡しを要求。その時義体の中の人形使いは自己起動し「生命体」として亡命を要求する。これを見た透明兵士達は義体を奪って逃走、旧市街の廃屋に逃げ込み、戦車で義体を死守しようとする。草薙は単身戦車と対決、ぼろぼろになりながら間一髪でバトーに救出される。その場で草薙は人形使いにダイブ、人形使いの狙いは、似た者同士である草薙と融合し、自らは死にながら子孫を残すことで進化、より強力にネット界に存在できる本物の生命体になることだった。融合することで自分自身がなくなることを危惧する草薙だったが、人形使いから「人は絶えず変化するし、自分自身であろうとする執着は自分自身を制約するものだ」と口説かれ融合を承諾。融合直後、情報工作の暴露を恐れる外務省の武装ヘリに二人の義体は破壊されるが、草薙の脳殻はバトーがかろうじて確保、20時間後に自宅で少女の義体に再生させる。生命意識の上部構造にシフトした草薙はバトーの「ここに残れ」という誘いを拒み、広大なネットの海へと向かっていく。 ■イノセンス以来この監督の作品は敬遠してたのですが、こちらは深い内容の哲学エンタティメントでした。脚本家がいいのか? 記憶や生命哲学をみごとにネット時代のコトバで再構築し、さらにエンタティメント化、視覚化、示唆的な壮大な進化ストーリーにまとめています。この映画は世界の映画作家たちを上部構造にシフトさせるくらいの、先端的な意欲作だったと思います。 【マンフロント】さん [DVD(邦画)] 10点(2007-03-09 15:01:27) (良:1票) |
186.とにかく作画とキャラクターと世界観(だけ)が大好きで何回も何回も見ていたら、ある時突然ストーリーが分かった。絶対1回見ただけじゃ分からないですよね。これ見て分からなくて「私バカ?」と思ってる方、そんなこと無いです。たぶん誰でも分からないかと思われます。しかし、あのマトリックスをウォシャウスキー兄弟に作らせるだけはある作品であることに間違いはない。なんだか溜飲の下がらない思いをしている方は、是非もう一度見てみて下さい。イノセンス同様難解なところがアレだが、スタッフの熱意とクオリティに文句なし10点献上。 【海棠ルチア】さん [DVD(邦画)] 10点(2006-03-12 21:38:31) (良:1票) |
|
185.どーもジャパニメーションは、うわっつらはキレイな画だけどそれだけですね。ストーリーはいろいろな要素をぶちこみました。って言いたいんだろうけど、軽薄短小ですね。若者だけに受けるロックバンドっているでしょ。あんな感じ。理解できないやつは見なくていいよっていう「不親切さ」を感じます。もっと強烈な個性、メッセージが欲しいです。 【たかちゃん】さん 3点(2005-02-04 12:22:11) (笑:1票) |
184.「マトリックス」のパクリ元ということを聞きつけたので早速拝見いたしました。最近のアニメーションは、リアルな背景と比較的淡白なセル画の間に温度差が有り、見ていて非常に違和感を感じるし、声優のオタクちっくで気持ち悪い声(幼女の声のような)が好きになれない。そんなことから、近代ジャパニメーションを嫌って敬遠したいた訳ですが、この作品はそれを服する面白さが有りました。 背景とセル画のバランスに違和感を感じないんですよね。おそらくセル画自信に暗い配色が多いので(背景も暗いイメージですから)、それで上手く誤魔化せていたのではないでしょうか。もちろんCGによる工夫も大きかったのでしょうけど。一番問題視されたのはソコの部分で、果たしてCGとの融合は上手くいくのだろうかということが心配でしたが、グラフィック的に素晴らしくハマッていたし、面白くて効果的に仕上がっていました。あと、音声ですが、DVDには英語吹き替えで日本語字幕という機能が有ったので、そっちで見れば格好良くてイイ感じだった。 この作品、原作も面白いんですよね。情報社会へ移行するにあたっての“人間としての存在意義”に鋭くメスを入れている。ハリウッド映画に多大な影響を及ぼしたということが有名ですが、それも大いに頷けます。斬新で独創的(独走的?)な世界観は、少々難解ながらも何とか理解できるレベルで有る。 どうしても“ゴースト”と聞くと霊魂や幽霊をイメージしますが、この作品では“魂”と捉えているようです。個人を認識できるモノのが“脳”しかないような時代がもし来たとしたら(能と脊髄を残して全てがサイボーグ化出来るような時代が来たとしたら)、情報が全てを握るのは当然ですね。人の脳って“情報”で満タンに満たされていますから、しかもそれ(情報)が電脳でネット化されたとすれば、記憶する容量よりも、個人の情報をガードする鍵(セキュリティー=精神力)が大きな役割を果たしそう。そうなった時に、人間(サイボーグ)は膨大な情報量から個人を把握していられるのか? 或いは人間とロボット(AI)の差はどう区別するのか? ロボットが人間以上の存在となるのではないか? 情報自体が神の存在となりえないか? とても興味深い設定である。 【おはようジングル】さん 9点(2004-11-01 14:45:42) (良:1票) |
183.コレ、何が言いたいんでしょうか。登場人物が誰も彼もポーズをとっているようにしか映らず、全く感情移入できません。コレは深いという方の気持ちは分からなくもないですが、コレ深い“っぽい”だけじゃないですかね。ジャパニメーションはカッコつけてるようにしか見えないので好きになれません。 【えいざっく】さん 2点(2004-08-26 23:36:25) (笑:1票) |
182.予備知識もなく「イノセンス」を見て「こりゃ前作を見ないと分からないようにできてる映画だ!?」と思い、さっそくビデオで借りてきましたが「こりゃテレビ版を見ないと分からないようにできている映画だ!?」と知りました。シリーズのファンの方のみどうぞ。 【海野やよい】さん 4点(2004-04-23 16:11:13) (良:1票) |
181.今こうして書いている私は、なぜ私といえるのか。たましいをあやつられた私が7点をつけているのではないか。そんなことを少しでも考えた私は、作り手=人形つかいにあやつられているのかな? 【彦馬】さん 7点(2004-03-10 22:51:53) (笑:1票) |
180.もうわけがわからない!専門用語みたいな言葉は飛び交いすぎだし、出てくる登場人物がどういう人間なのか、どういう舞台なのかなんかもさっぱりわからないし、もうわからない事だらけで何もわからないまま映画が終わってしまった。彼女は何もんで、なんだったんだろう?あの最後は何?内容的には深いし、難しいし、力図よいメッセージがあるんだろうけどその作品以外も見ないと内容がわからないものを映画といえるのでしょうか? 【野次られLOW】さん 2点(2004-02-28 00:29:40) (良:1票) |
179.《ネタバレ》 “GHOST IN THE SHELL”=『攻殻機動隊』ではなかった筈です。『薬莢の中の魂』…みたいな意味かと。素子もバトーも体いじくって、戦闘サイボーグみたいになってるけど、その中にはいじることの出来ない人間のゴースト(自我?)がある。じゃあAI(人形使い)が自我を持ったら?…このアンドロイドともクローン人間とも違う、曖昧でリアルな未来感に、当時高校生だった私はとっても衝撃を受けました。 確かに、自分の体の一部が無くなっても、義手なり義足なりを使っても、私に変わりはない。時代が進み、“義体”なるものが出来たとして、最終的に脳さえあれば、それは私と言えるんだろうか?更に脳もいじるようになり、電脳化していったら、どこまでが私なんだろう?こんな世界観を考えるなんて、どんだけ凄い人なんだろう?この士郎正宗って人は。 日本のサイバーパンクSF漫画家として、私のSFヲタ心を満たしてくれたシロマサ。『プレデター』のカメレオンみたいな宇宙人の謎技術を、熱光学迷彩ってリアルで説得力のある未来技術に変えたシロマサ。過去の映像作品アップルシードもブラックマジックも面白かったけど、OVAじゃ一般の認知度は低かった。それらに比べ攻殻はテーマも解りやすく、ストーリーも一般受けしそう。それがいよいよ映画化される。そりゃワクワクしましたよ。 でも絵柄がイメージと違い、なんかコレジャナイ感が…ちょっと不安もあったので劇場ではなくレンタルで観ました。これは…押井さんの作品だわ。 カラッとしたハイテク・ジャパンな原作と雰囲気が異なり、映画はジメッとした和+中華というかアジアンというか、そんな音楽やキャラデザインに、やっぱり違和感を感じました。 80分の短い作品なのに、押井作品らしい独特の間はきちんと入れる。“親切なやつ”が銃撃から逃げて、素子と格闘するまでの“間”。立ち止まってビル越しの空を見上げたり、逃げるあいだにガラクタの山を観せたり。こういうの入れた必要性が解らなかったわ。敢えて言えば、シロマサ作品を踏み台にして、押井テイスト(=オレ流)を押し付けられてる感じがして、そこにどうにも居心地の悪さを感じました。 そして押井さんの作品ながら、この映画の面白いところがほぼ原作の面白いところそのまんまだったのも残念でした。攻殻に関しては劇場版パトレイバーのようなプラスαが感じられませんでしたね。 私の結論として、『あぁこの人、ハリウッド・ウケを狙ってるんだな』って。この映画はシロマサ原作好きに向けられたものではなく、ハリウッド向けに創られた、当時のジャパニメーションの技術サンプルのような作品だなぁ~って、そんな感想です。 まぁ海外では見事にウケて、押井さんの(世界的な)知名度も上がったようです。そして彼の次作は迷作アヴァロンでした。 人間が制御しているAI=フチコマ(多脚戦車)が出ない。「ゴーストがないお人形(ロボット)は悲しいね」などの名セリフも、使う場所を改変してて違和感を感じました。ストーリーもあちこち切り貼りされたこの映画に、技術的な価値は感じても、作品としての価値はあまり感じませんでした。原作の魅力的な部分だけはしっかり抽出して、余計な押井テイストを加味してしまった本作に『もう純粋に攻殻機動隊の面白さが映像化されることは無いんだな』って、ガッカリもしました。(※攻殻の他の映像作品は観てません。) あれからおよそ30年。『コレはコレで、良いのかな?』って、当時違和感ばかりだったこの作品にも、味わいを感じるようになりました。 相変わらず、原作>>>映画版ですが。 【K&K】さん [ビデオ(邦画)] 6点(2024-11-24 14:44:03) |
178.《ネタバレ》 私にとってのこの作品は、廃墟での草薙素子による対多足戦車単独戦闘シーンに尽きます。自分は一体何者なのか?という疑問にとり憑かれ続ける鬱屈、答えを追い続ける孤独、解放への僅かな望みをかけた無謀行為。手足がはじけると同時に、こちらの胸も張り裂けました。ガラスの天蓋を撃ち落とすと光学迷彩が破れて戦車が姿を現す、生物の進化の歴史をあらわすレリーフが銃弾の穴で削られる、などなど、前振りの演出も密度が高く意味深なのですが、よくよく考えると、何の用途の建物なのかよくわからないですよね。哀愁漂う音楽も素晴らしいです。 【camuson】さん [ブルーレイ(字幕)] 9点(2023-02-24 21:44:26) |
177.先にハリウッド実写版を観ていたので、背景とか展開は理解し易かったかと思います。この韜晦な世界観が、ハリウッドにかかるといかに通俗的なストーリーになってしまうことにも、気付かされてしまいました。押井守特有の決して難しい言葉遣いではないけど、難解な理論を登場人物たちがさりげなく語るストーリーテリングには好き嫌いが分かれるところでしょう。でもその造りこまれた世界は圧倒的な画力で、東京と香港とヴェニスを混ぜ合わせたような都市の細部には圧倒されます。26年前、まだWindows95が最新だった時代にここまでサイバー・ワールドを創造できたのは、まさに押井守おそるべしです。原作を読んでいない身としては「えっ、これで終わり?」という感は否めなかったですけど、続きというか続編はぜひ観たいという気にはなりました。 【S&S】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2021-11-30 22:38:29) |
176.《ネタバレ》 4Kリマスター版公開と聞きつけ、新宿のIMAXレーザーで久方振りに鑑賞。初見は大学入り立ての頃ですかね。夜中に観始めて、明け方観終わって、であまりに面白くて即座にもう一度最初っから観ましたよ(若かったすね)。映画も仕事も大事なヤツは、やはり真夜中に取り掛かるに限りますね。 ヒトの魂は結局は記憶であり、記憶とは単なる情報に過ぎない(そしてそれは必ずしも個々人の脳内に在るものだけに留まらない)筈なのだから、現実問題として大多数の人間の脳が(様々なデヴァイスを通じて)ネットと常時「接続」された状態にある現代では、ネットの在り方とゆーのはヒトの魂の在り方そのものだ、とゆーのにも尚更納得は出来るのである(そーいう時代になったのだなあ、と)。今どき必ずしも「進歩」している様にも見えないその在り方を何処となく憂うと同時に、ソレを公権力が統制してゆこうという昨今の風潮にもまた、疑問と同時にヒトの「情報の単なる器」としてのある種の限界とゆーものまで、そこはかとなく感じ取れる様にも思うのである。 【Yuki2Invy】さん [映画館(邦画)] 9点(2021-09-18 14:15:47) |