3.《ネタバレ》 これはこれは、意外や意外、成瀬作品としては知名度が高い作品ではないが、かなり楽しめた。
まず何といっても主演二人の演技が素晴らしい。
上原謙と杉葉子。
上原謙のうまさは前から分かっていたが、本作ではかつてないほどの「3枚目役」を演じ切り、ますますもってその懐の広さと深さを発揮。
杉葉子は、他の作品では脇役にまわることが多く、有名女優たちの影にいつも隠れている印象があったが、本作では主役をはり、その魅力を遺憾なく発揮。
この二人の息のあった演技こそ、まさに「夫婦」そのもののようであった。
本作では題名からも想起されるように、夫婦の倦怠が描かれる。
しかし、最後は成瀬の真骨頂である、「男と女の切っても切れない縁」により、見事、夫婦の形を取り戻す。
倦怠を通し、それを乗り越えることによって、更に夫婦は互いを理解し、絆も深まる。
ラストシーンは、それまでのいさかいがまるで嘘のように、肩を寄せ合い木枯らしの中を二人で歩いていく・・・
なんという素晴らしいラストだろうか。
久しぶりに成瀬映画の魅力を満喫できた気がした。
本作は、成瀬作品の中でも隠れた傑作であるといえよう。