2.《ネタバレ》 凄ぇ・・・としか言いようがない。言葉が出てきません。
自分のつたない文章でこの映画を語るのもおこがましいですので、気になった箇所を書くに留めますが、まず、登場人物の演技が素晴らしい。それぞれの感情表現の巧みさ、特に、感情を堪え忍ぶ様の描写テクニックが素晴らしい。他のルビッチの作品でも見られますが、抑えきれない感情を描くことに関してルビッチの右に出る者は恐らくいないのでは。
演技だけではない。例えば、墓地で鞄の中からハンカチを取り出す。もう、これだけで夫人の悲しみが伝わってくる。
冒頭の、失った片足の隙間から抜いた兵隊が行進するワンショットも同様。戦争の悲劇を何と雄弁に語ったひとコマだろう。
極めつけはラスト。鍵を使って鍵盤の蓋を開ける。これだけで、それまで癒えることのなかった心の傷の深さが非常によく分かる。
そのときの、二人の演奏を聴く老夫婦の幸せそうな表情といったらもう・・・。
一方のポールも、それで罪滅ぼしが出来るのだからきっとそれでいいのだと思う。
生涯をかけてエルザを愛しワルターの両親を守っていけばいい。
ワルターを死に追いやったのは全てポールのせいではないけども、嘘をついてそれを押し通し続けるのは心苦しいけども、こういう人生もあるのだという一つの御伽噺のような映画でした。