4.《ネタバレ》 アメリカン・パイシリーズの四作目にして、主人公達も世代交代を果たした、仕切り直しの一作目。
8でジム達が復帰するまでの4~7に関しては、外伝色の強い内容だし、予算面でも見劣りする感じなのですが……
意外や意外、この4に関しては、前三作に決して見劣りしない出来栄えなのです。
1や2では子供だった「スティフラーの弟」ことマットが成長し、立派に主人公を務めているというのも、シリーズのファンとしては嬉しかったですね。
まるで親戚のおじさんのような目線で(大きくなったなぁ……)と感じ、微笑ましい気持ちになっちゃいました。
元々アメリカン・パイシリーズの魅力って、そういう微笑ましさというか「主人公の若者達に対する、優しい眼差し」にあると思うんですよね。
その象徴がジムの父親であり、たとえ世代交代しようと彼だけはレギュラーとして出演させ続ける事にしたのは、もう大正解だったんじゃないかと。
実の息子相手でなくても、悩み多き若者には優しく接し「ピントがズレているけど有益」という独特なアドバイスをしてくれる姿が、本当に良かったです。
その一方で、兄のスティフラーに関しては「みんな彼を嫌ってた」という発言が飛び出し、ちょっと可哀想になるんですが……
実際、彼が「良い奴」になったのは3以降の話だから、高校時代はジム達から嫌われてたってのも、間違いではないんですよね。
上述のジム父といい、学校のカウンセラーになってるシャーマンといい、過去キャラの扱いに関しては、概ね良かったんじゃないかと思います。
それと、本作は主演のダッド・ヒルゲンブリンクも、良い味を出していましたね。
主人公のマットって「如何にも頭の軽い体育会系」に思わせておいて「実は真面目な好青年であり、兄の真似をして悪ぶってるだけ」と途中で明かされるという、非常に難しい役どころなのですが、見事に演じ切っている。
これに関しては、彼個人の演技力だけじゃなく、演出というか、監督の構成も良かった気がしますね。
最初の内こそ(なんか……ショーン・ウィリアム・スコットに比べると、無理して「スティフラー」を演じている感じだなぁ)と違和感を抱かせていたのに、実はそれが伏線であり「本当に、無理して演じていただけ」と分かる形になっているんだから、もう脱帽です。
そういった仕掛けが施されている為、主人公のキャラクター性にも説得力があったし、彼が改心して「良い奴」になる展開も、自然と応援する気持ちになれたんですよね。
もしかしたら、作り手にそんな意図は無く、偶々そういう形になっただけなのかも知れませんが……
もしそうだとしたら、かなり幸運な偶然だったんじゃないかと。
バンド合宿にて同室になった眼鏡少年と、少しずつ仲良くなっていく様も微笑ましかったし、ヒロインのエリスとの関係性も良かったですね。
エリスに関しては、これまでのシリーズには無かった「幼馴染」型のヒロインであり、新鮮な魅力を放っていたと思います。
そんなエリスと一緒に寝そべって、雲を眺める場面。
少しずつバンド仲間と打ち解けていた中で、つい強がって「体育会系のスティフラー」を演じてしまう場面。
エッチな盗撮映像なんかより、仲間達と過ごした時間の方が、ずっと大切だったと気が付く場面。
どれも忘れ難い味があり、本作を良質な青春映画に仕上げていたと思います。
最後は、しっかり演奏シーンで盛り上げて、ヒロインと結ばれるキスで終わるのも、文句無し。
この後、シリーズは更なる世代交代を重ねつつ続いていく訳ですが……
(マットやエリス達の物語も、もっと見たかったな)と思えるような、そんな一品でありました。