1.《ネタバレ》 インドネシアの映画で、英題のとおり場所はバリ島である。冒頭に出る恐ろしげな仮面や不安をかき立てる音楽が異国臭を発散しているが、しかし自分の見たDVDでは台詞が全部英語だったのが興を削ぐ。
内容としては現地の伝承に基づく妖怪映画である。原題のLeak(またはLeyak/レヤック、字幕ではレヤク)は、映画のとおり内臓をぶらさげた首を飛ばして胎児や新生児の血を吸う妖怪とされており、似たようなものがマレーシアではペナンガラン(Penanggalan)、東南アジアの他地域でもそれぞれの名前で呼ばれているらしい。また字幕で「レヤク女王」と書かれていたババアは、レヤクというよりランダ(Rangda)と呼ばれるバリ島の魔女のことではないかと思われる(以上はウィキペディア英語版より)。
なお終盤の朝日が昇る場面で「コケコッコー」というのが聞こえたが、一番鶏が鳴くと妖怪の居場所がなくなるというのは日本と共通の感覚かも知れない。また火の玉が飛ぶ場面があったが日本の人魂よりもかなり豪快だった。
全体的な印象としては、日本でいえば大映の妖怪3部作(1968~69)のようなものかと思うが、妊婦の股に顔を突っ込んで胎児を吸う(母子とも死亡)などは子ども向けとは思えない。妖怪映像は特殊メイクや着ぐるみや映像合成や特殊造形物や実物(ブタとヘビ)で作っており、これを安っぽいというのは簡単だが、日本の昭和特撮で作ってもこんなものだったのではないかと思ったりする。個別の場面では、白い布が飛んで来て勇士を縛り、勇士が布を切り裂くとブタの破片に化け、そこからブタの全体像が再構成されて、垂れ乳をぶら下げたブタのバケモノ(着ぐるみ)になるという展開は少し面白かった。
物語としては一応 ”LEAK NGAKAK”(「レヤクが笑う」?)という原作があったらしいが、アメリカ女と地元男の恋愛感情や、捨てられた女の悲哀などに心を動かされるものにはなっていない。また終盤で「大戦士」なるものが登場するのが唐突な上に、終わり方がかなり素っ気ないので拍子抜けだが、まあ昔の娯楽映画などそんなものだといえなくはない(日本の昭和特撮でもこういうのはある)。
ほかに若干のエロさを見せたり(スカートを脱がされる)性的誘惑をほのめかすような場面もあったりしたが、変に控え目というか半端な感じでかえって意図不明になっていた。ちなみにヒロイン役の白人女優は腋毛を生やしていたように見えるがそれほど特筆すべきことでもない。