1.《ネタバレ》 2004-05-16に作品登録されていながらレビュー数0だったので見た。伊藤潤二の同名のホラーマンガを原作とした実写ドラマで、自分の顔を他人と同じに変えられる少女の話である。「伊藤潤二恐怖コレクション」というシリーズの一つとして、2000年8月にテレビ朝日で放送されている。
同じシリーズの「長い夢」も見たが、原作に忠実にドラマ化するのがこのシリーズの方針だったようでもある。このドラマも変に遊んだところのない堅実な作りで、かなりじっくり見せられてしまうものになっている。
原作に忠実とはいえ元が短編のため、このドラマも全体を膨らませて72分に拡張しており、全3章あるうち原作に由来するのは後の2章分だけである。追加した第1章では、原作の開始時点以前の事情を遡って掘り下げて、劇中の日比野という男がなぜ責任を問われるのかを説明している。この男は原作でも全ての元凶だったように詰られていたが、このドラマでは実際に責任を取るところまで行かされてしまうのが理不尽である。普通に考えれば女の論理はともかく客観的観点からこの男に責任などないだろうと言いたくなるわけだが、そう言えなかったところがこの男の悲劇ということか。
顔を盗む女子が終盤で受ける仕打ちも原作同様だが、より喜劇的かつ残酷に描写されており、その後の顛末も加えた形で男女2人の悲劇という印象を強めている。ラストのシチュエーションでは笑う視聴者もいるだろうが(通行人も笑っていたが)、ここは笑うに笑えない状況というべきではないか。教訓的にいえば、自分の個性を磨こうともせず、見栄えのする誰かの姿を盗もうとする行動様式が破綻してしまい、盗んだ外面が剥がれて初めて男が本気で心を寄せてくれた、という皮肉な状況と取れる。
改変を加えたことで辻褄が合っているのか怪しくなっているところもあるが、もともと原作段階でも少し設定が甘いのではという気がしていたので、その点を突っ込む気にはならなかった。
キャストとしては、当時の若手女優3人(山口あゆみ・安藤希・坂本三佳)が顔を盗む女子1人を次々に演じる形になっている。個人的に注目していた坂本三佳という人は、役柄のせいもあってかあまり可愛く見えないが、後半はほとんど出ずっぱりで熱演している。ほか不運な日比野役の役者は「リリイ・シュシュのすべて」(2001)より前の状態ということになるが、今回も内面の弱さを感じさせながらも意外に誠実な人物役だった。