14.「特別完全版」公開後は、このバージョンで確定ということなのでしょうか、今回観た「通常版」のラスト、炎上シーンはありませんでした・・・。 さてこの地獄の黙示録という作品、コンラッドの「闇の奥」を下敷きにしており、実際この小説を思わせる人物も登場する訳ですが(槍で絶命する舵手、出迎えるロシア人、そして勿論クルツ=カーツ大佐)、作品から受ける印象としてはむしろ、カフカの世界を思わせます。この印象は、主人公たちが出会うエピソードの数が増えた特別完全版を観てより強くなったものではありますが、それでいて、完全版でないコチラの方がむしろ、より終わりなき彷徨を感じさせもします。特別完全版の方が、どこか、正常から異常へ、正気から狂気へ、というベクトルがはっきりしている気がして、この通常版の方が脈絡なき迷宮の感じが強いのです。それでも、やはり狂気へと向かって行く方向性というのは確かにあって、主人公が旅路の最初に出会う、キルゴア中佐のエピソード、瀕死の敵兵を称えつつサーフィンの話が始まると水を与えるのを忘れてしまったり、果ては戦場でサーフィンをするためにナパーム弾投下を要請したり。異常と言えば異常だけど、ある意味、想定内の、まだしも理解可能な異常、想像可能な世界。ワルキューレ第3幕冒頭をかき鳴らしながらの攻撃なども、我々の想像を特に超えるようなものではない、陳腐な世界でもあります。これ以降、川を上るに従い、何が起こるか、それが何なのか、想像も予想もできない世界が彼らをそして我々を待ち受ける。 そしてついに現れる、カーツの王国。カフカの長編世界は結末と呼べるものが存在しない(「審判」ですらそう言ってよいでしょう、結末は一応あるけど本編から独立している)のに対し、本作は、不条理世界の最期を何とか描こうとしています。たぶん、それ自体が無謀なことではあったのでしょう、映画自体がほとんど崩壊に向かっており、そこには相次ぐ撮影時のトラブルなども影響しているのかも知れませんが、さて、この混乱、混沌以外に、本作のラストがあり得たのかどうか。もはや作品の完成度云々以前に、やっぱり狂気の世界は狂気によってしか作りえなかったのだ、というまさにその点で、稀有の一本となった作品であります。多分これは、コッポラが「作った」作品ではなく、彼自身も作品の一部となって初めてこの世に生まれ得た作品なのでしょう。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2015-11-08 09:20:36) |
13.物語は破綻している気もするしその場の即興で撮っているのかな?という場面もあるがこれだけ圧倒される映像を見せられるとそんな事どうでもよくなる。人の深淵に眠ってる狂気、暴力性をきっちり映像で表現しています。素晴らしい才能ですね。それにこれはコッポラ監督なりの反戦映画でもあるのかもしれません。 【キリン】さん [DVD(字幕)] 9点(2012-12-29 03:30:53) |
12.この映画を見て以来、外を歩いていてヘリコプターの音が聞こえると「あれ?」って違和感がありました。ワーグナーが足りないからだということに気づいたのはずいぶん後です。きっかけは「クレしん」ムゥーヴィー。 【キュウリと蜂蜜】さん 9点(2004-12-04 17:13:03) |
11.グリーンベレーの暗殺屋であの腹は無いよな。あの頃の映画は役作りが今よりぬるかったんだろーな。 【センブリーヌ】さん [DVD(字幕)] 9点(2004-07-27 03:19:23) |
10.当時、衝撃的でした、今でも。なんといってもウィラード大尉が瀕死状態のベトナムの女性を・・。あ、ローレンス・フィッシュバーン、若いやね。ドアーズってこの映画を担当するためのバンド?くらい相当また暗くてイイ。 【★ピカリン★】さん 9点(2004-06-06 22:03:58) |
9.とてもいい映画だと思います。ベトナム戦争でのアメリカ軍の事実が、悲しく出ていました。音楽がとても神秘的で、まるでこの世の物とは思えないような、感じもしてきます。 一番印象に残っているのは、ヘリコプターの大群ですね、 【マック】さん 9点(2004-04-03 23:40:01) |
8.時が経つにつれて、どんどん評価が高まっていく不思議な作品です。二度とこんな映画をロケーションでは撮れないでしょうね。スキャンダラスな製作裏話とあわせて歴史に残るでしょう。 【nizam】さん 9点(2004-03-11 12:56:16) |
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7.アメリカは何故ベトナムに負けたのか…?に対する、アメリカ人自身によるひとつの回答。アメリカ人は、己が創り上げた人工享楽物から切り離されると意外と脆い(伝統文化を持たない国の宿命か)。サーフィン→慰安ショー→ラジオ…川を遡って行くに従い、その切り離され具合が段々とアップしていく。そして全てを剥ぎ取られた状態で何が現れたか…という感じで、かなり興味深く観れました。これを観るとアメリカ人が何故「禅」やメディテーションに異様な関心を示すのかなんとなく納得できる感じ。 …評価の違いは「好き・嫌い」でなく、まず「何を言っているかがわかるか・否か」に拠ってくると思う。「プラトーン」的なものを求める向きにはあまりお勧めではないです… 【番茶】さん 9点(2004-01-05 01:10:07) |
6.スペースオペラという言葉があるけれど、その映像と音楽の素晴らしさからオペラという形容詞が浮かんでしまいます(実際にオペラなんて見たこと無いからええ加減ですけど。。)こんな映画は二度と作られないでしょう。そういう意味で金字塔的作品。カーツ大佐が出現してからのヨロメキっぷりを差し引いて充分おつりがきます。 【アトミック】さん 9点(2004-01-05 00:17:58) |
5.映画史上最高傑作の一つ。しかしながら、あまりにも一貫性が無さ過ぎるのも事実かと思う。前半は純粋に理性から狂気へというイメージだと思うが、後半は「THE END」が象徴するエディプスコンプレックスの話に持っていこうとしているようでかなり無理があるようにも思える。でも見るたびに発見があってやはり面白い。個人的にはランスこそが地獄の黙示録を象徴する人物ではないかと思う。ラストシーンで雨にうたれたランスの顔のペイントが剥がされていくシーンはエンディングとして十分説得力がある。 【iggy】さん 9点(2003-01-10 04:20:48) |
4.<ネタバレあり>戦争の狂気を感じました。最初はサーフィンのために爆撃する米軍。次は敵が誰なのかを認識せずに、ただ戦闘している兵隊たち。最後は恐怖だけによって王に君臨するカリスマのマーロン・ブランド。川をさかのぼるほど、どんどんイカレてくる。戦争と言うより、殺し合いの深層心理を裏側から眺めた感じがしました。 【ヨシオ】さん 9点(2002-11-15 01:27:52) |
3.コッポラは、映画の中でベトナムをそのまま再現した。何が凄いかって、本物のナパームを使って本当にジャングルを焼いてる場面!今じゃこんなこと、絶対無理だろう。ヘリの攻撃シーンも何度見ても血が騒ぐ!確かに難解だけど、個人的にはベトナム物ではナンバーワン!ドキュメンタリーの「ハート・オブ・ダークネス」も必見。 【ロベカル】さん 9点(2002-01-23 14:56:37) |
2.インパクトがとてつもなく強烈。あれだけ長いのに飽きずに観ることができた。観終わった後にすごくシーンシーンが残ります。これは力作と呼ぶにふさわしいのではないでしょうか。コッポラ監督の執念がすごい。本当にラストは地獄でした。人間の狂気をことさら描いていると思います。 【あろえりーな】さん 9点(2001-10-29 23:56:28) |
1.前半のベトナムの村を襲撃するシーンは凄いなあ!これが映画だと思って見ているから良いんだが、一方ベトナムをこう言う形で描いて良いんだろうか? なんかその疑問点を象徴するかのように、後半部分は深層部分に入り込んで行って首をかっさらってしまった。当初はスティーブ・マックイーンが主人公を演じる話もあったそうな。マックイーンだったらどんなヘビーな映画になったんだろう? 個人的にはこの作品をベトナムものとは一線を引いています。 【イマジン】さん 9点(2001-02-07 12:11:01) |