1.「料理には人を変える力があるのか」がこの映画のテーマだと思う。
映画だから味そのものは伝えられないのだけれど、料理の映像とそれを食べた人たちの表情にはそれだけの説得力があったように、僕には感じられた。
冒頭の、太ったコックが鴨の羽をむしり、その頭にいとしそうに話しかけるシーンからしてイっちゃってるけれど、映画のテーマをよく伝えている。この映画はほとんどそのコック(ヨーゼフ・オステンドルフ)と、彼の料理にほれ込んだ女性(シャルロット・ロシュ)の二人のやりとりだけで進むのだが、この二人の演技も見事で、通常ならありえなさそうな展開を「この料理ならそういうことも起こりえるのかも」ということを信じさせてしまう力を持っている。今調べてみたらこの女性は素人で演技の経験も何もなかったらしい。天性の才能もあったのかもしれないが、これだけの演技を引き出す監督はやはりすごい。これが三作目とのことだが、今後にも期待したい。