1.子の成長、四季の移ろい、里から都への暮らしの変貌。
その「移りゆき」をモチーフとするアニメーションの素晴らしさは、
かつて高畑勲監督が賞賛したあのフレデリック・バックの『木を植えた男』
からの継承を思わせる。
作中のワンシーンにある、樹々の再生の件などはまさにそれへの
オマージュともいえる。
桜の樹の下で舞い踊る娘の喜び、野や山をひた走る娘の激情が迸るクロッキー風の
タッチ。
生物の営みそれ自体への慈しみが滲んでいる柔らかなタッチ。
その伸びやかで、味わいのある筆致が創りだす画面の躍動は、
動画であって動画を超えている。
(エンディングのスタッフロールでは馴染みのない様々な作画の役職が並んで
興味深い。)
波やせせらぎの表現の斬新と大胆。木々の影が人物の衣類に落ちて、揺れ動く紋様を創りだす様。機織りや演奏などをはじめとする写実的なアクションと、快活に跳ね回り、飛翔する姫のファンタジックなアニメーションの絶妙なバランス。
題材とのマッチングゆえか、今回はその技巧もそれ自体が目的といった感が無く、
一枚一枚のスケッチの丹念な積み重ねがキャラクターに血を通わせている。
ヒロインを回り込むようなカメラの動き、彼女の寝返り、振り返りなどの動作は
スケッチを立体的に浮かび上がらせるだけのものではない。
青い星を振り返る姫の涙が美しい。