1.映画の約束事やお決まりは心得ていても、映画作りのノウハウを知らないような素人に映画を撮らせたら多分こういったものが出来上がってしまうのでしょう。村ぐるみのニセ札作りという面白そうな題材を用意し、主人公たちを“悪人”に見せないためのニセ札作りの動機や描写も付加。更に如何にも意味ありげな主張を据えることによってテーマを獲得。単なる娯楽に留まらない作品を仕上げ、初監督としてのデビューを図りたかったのでしょう。しかしそれらの描写にいちいち内実が伴っていないので、せっかく用意した題材や設定も尽く丸潰れ。木に実ったとしても、その実熟し方が足りない果物のような締めの悪い作品になってしまっています。この有様ならば倍賞美津子の最後の主張も寧ろ無い方がスッキリしたような気がする。ああいう台詞を言わせるのであれば、世間一般的に“悪いこと”として認識されているニセ札作りに対する概念を打ち砕くだけのものが欲しかったところで、所詮は自身の行いを正当化させるだけの狂言にしか聴こえなかったのが歯痒かったです。