12.浦沢直樹の同名漫画を、堤幸彦監督が映画化した今作。
監督の原作へのリスペクトは感じるし、とても原作に忠実に作っているとも思う。
何たって、脚本に浦沢直樹も参加していることだし。
ただ、原作に忠実に作れば作るほど、リアリティが感じられないというジレンマに陥っている気がする。
現代を舞台にしている作品だけに、どうしてもこの"リアルさ"が薄れてしまう。
漫画では効果的だった、時系列が入り組んでいる作りも、映画だと原作を知らない人が話から置いて行かれる要因の1つになっていると思うし、堤作品では効果的な音楽の使い方も、今作はどうしても安っぽく感じてしまう。
全てを"漫画"に合わせているからだ。
例えば、ケンジが同窓会でかつての級友に再会する場面。漫画だと今の人物と過去のその人物の2コマで懐かしさが表現できるが、映画で同じようにして懐かしさを表現しようとしても、無理だ。
私たち観客には、スクリーンの向こうでケンジが感じているであろう"懐かしさ"が伝わってこない。これは映画としては致命的である。
映画で漫画の再現をするのは無理だ、映画は映画で漫画とは別のアプローチをするべきだ、と改めて思わされた作品。
ただ、ケンジを除いた役者は本当に原作のキャラクターにそっくりな俳優ばかりなので、その点と、あくまでも原作に忠実に作りきった堤監督の精神は評価したい。