8.昭和ガメラは遠くなりにけり。
こんな暗いガメラは見たくなかった。
明るく健全な雰囲気で通してきたはずのガメラに、いじめが出てきた時点でいやな予感がしたが、
それでも最初のうちは、これまで描かれなかったガメラの被害者の存在を描いたり、
ガメラを単純な人類の味方ではなく、人間に牙を向けることもある恐怖の対象として描き、
怪獣映画としての原点回帰をしようとした、シリーズ中の異色作なんだろう、
という好意的な見方をしようとしていた。
渋谷のバトルは、あのガメラをこんなに悪者に描いていいのか、と思いながらも、
その鬼気迫る迫力とスピード感はこれまでにないものだと思った。
しかしこの映画の見所はそこまでで、以降は失速していく。
イリスとのバトルのつまらなさは、シリーズでも最低と言ってもいいんではないだろうか、
つまらなさでバイラスを超えている。
イリスはデザインもぱっとしないし、名前もカッコ悪い、バトルも印象に残らないといいとこなし。
ただ駅を壊したかっただけかと。
ストーリーだけを見れば、とうとうガメラもメロドラマになってしまったかというひどさ。
人物の不快な言動やグロ描写など、嫌悪感を与えるような演出はやりすぎのように感じた。
映画はいったい誰の望みで、こんなに暗く病的になっていくのだろうか。