2.白黒なのに色が見える、って褒め言葉がよくあるが、「白黒は光と影で美しいのだから、それ褒め言葉になってない」と常々思ってた。しかし本作で困ったことに若葉の薄緑が見えるような気がしてしまった。美しかった。宮川一夫のカメラ、本作が溝口との初仕事らしい。堀雄二は後の脂ぎった顔を知ってしまっているので、どうも似合わない印象。谷崎似ということでの起用か。ロング好きっていうのは、移動しやすいってことでもある。カメラがすでに動きたがっている。その待機しているような緊張。人物たちの「三人」への誘惑。埋もれたがる願望。けっきょくそれぞれの孤独がある。東京のセットで向こうを走るおもちゃの汽車は、歌舞伎で、遠くにいる人物を子役が演じているような気分で見ればいいのか。