1.ジェイソン・ステイサムがワイルドスピードに出演したから、とりあえず彼の出演作に「ワイルド〇〇」と邦題つけて売り出すことにしたのか、と思ったら、さにあらず、本作は原題そのまんま。主人公の名前がワイルド、なんですね。
で、彼が主演だからバリバリの格闘映画なんだろう、と思ったら、これが微妙。中盤はバクチ映画になっちゃう。確かにカードの映画、だから、ワイルドカード、ってか。何だか騙されたような。
そりゃま、あくまでジェイソン・ステイサムですから、戦えば、やたら強いんですけどね。ただ、あまり戦わない。というか、この主人公、イマイチ何もしない。いや、彼が何もしないというより、周囲の人物の方はエキセントリック過ぎるのかも知れない。彼も敵に囲まれて危機に陥れば、己が肉体(プラス、ちょっとした小物)を武器に敵を蹴散らすけれども、女のアソコを銃でどうした、とか、男のアソコを植木バサミでどうする、とか、そんな話にはついていけず、またバクチの世界に戻ってしまう。
どんなカードが出てくるか、それを待つだけ。運の方が、勝手に彼のもとを訪れたり、また去って行ったりして、結局は何も変わらない。
冒頭のエピソードにおける、狂言を依頼するハゲ親父の方が、よほど行動的かもしれない。
という、主人公のグダグダ感と、グダグダな主人公がいつ「行動」を起こすのか、ってのがいかにもハードボイルドで、そういや、ジェイソン・ステイサムのこの「何も考えていません」という顔立ちこそがまさにハードボイルド顔、という気もしてきます。
結局、彼にせよ、彼につきまとう金持ちに兄ちゃんにせよ、どうしようもない日常は、どうしようもなく続いていってしまうのだけど、そんな中にもちょっとした転機が起こり得る、というその転機を切り取ってみせた、なかなかユニークな作品でした。