14.実際にあったことをかなり忠実に再現しつつ、それなりに物語性、ドラマ性を入れ込んでいて、よくできている。
この手の実話ものの映画は見終わった後に実際の出来事はどうだったかネットで調べるのがお楽しみなのだが、調べてみてわかったのが、かなり事実通りにやってることだった。
ほとんどドキュメンタリーのレベル。
特に、エンジン停止から着水までのコックピットでの会話は、実際のフライトレコーダーの記録をほぼそのまま再現している。
エンタメ映画でここまで再現にこだわったのは評価したい。
しかし、さすがに事実通りにやりすぎると話として面白みに欠けるので、すこしフィクションをねじ込んである。
実際にはパイロットが判断ミスの疑惑をかけられることはなかったのだが、作品では、判断ミスを疑われ、主人公は苦悩することになり、ここがこの作品の一つのキモになってくる。
そして、これまた実際にはそんなことはなかったのだが、事故を調査する安全委員会の人間をいかにも嫌なヤツに描くことで、一種の「悪役」に仕立て上げる。
こうしたお膳立てを作ることで、最後に機長の判断が正しかったと証明されるどんでん返しが生まれるし、 嫌な調査局の人間をやり込めることで観客はスカッとした気分が味わえる。物語に起承転結とドラマ性が生まれる。
なかなか、うまく考えている。
ただ、実際にはこの映画の公開にあたって、悪役に仕立てられた安全委員会からクレームがあったという。まあ、さすがにそうだろう。
内容としては割とアメリカ万歳系の作り。
最後の最後で、当事者の実際の写真を出して後日譚を語るのは、アメリカ万歳系史実映画のお決まり。
この映画の直前に作られた同じくクリントイーストウッドのアメリカ万歳映画も、くしくも全く同じ終わり方だった。