3.原作は未読。しかし、おそらくは原作のエッセンスを忠実に再現しているのでしょう。良く言えばドキュメンタリータッチ、悪く言えば抑揚なく淡々と物語が進行していく感じ。キモとなる2つの〝ビッグイベント〟も、あまりにも唐突に、さしたる説明もなく描かれます。どういう意図なんでしょうね。
それはともかく、山崎豊子の作品はヒーローとヒールがはっきり分かれている場合が多いのですが、この作品におけるヒールの権化であろう大介は、なかなか味がありました。単に権力欲・強欲に走ったのではなく、食わなければ食われてしまうという危機感が原動力だったように見えます。多くの従業員を抱える組織のトップとして、当然の責務を果たしただけではないでしょうか。その意味で、〝企業もの〟としておおいに堪能できました。逆に「出生の秘密」とかはどうでもいい感じ。調べる方法はいくらでもあったはずで、ちょっと嘘くさいですね。
惜しむらくは、田宮二郎と目黒祐樹の出番が少なかった。もう少しストーリーをかき回すのかなと思ったのですが。一方、腰抜けな「社民党」議員や、会社の敷地内で虚しくシュプレヒコールを叫ぶことしかできない労働組合は、リアルすぎて笑えます。これじゃあ大介に勝てるわけがありません。