1.以前、漫画家のいしかわじゅんがエッセイで「一昔前、二流、三流のエロ雑誌には、大抵二,三人の元全共闘闘士がいて(つまり、他にいわゆる「まともな就職口」がなかった為)、一種独特の雰囲気を醸し出していた」という意味の事を書いていたのを、この作品の村木を見ていて思い出した。別に彼が学生運動をしていた、などという説明は一切出てこないけれど、仮にそうであってもおかしくないようなやるせなさ、屈折が画面から滲み出ている。そんな、社会の吹き溜まりを這いずるように生きていた彼の前に現れた、ブルーフィルムの女・名美。彼女もまた、暗い過去を背負いながら、這いずって生きている。一度は心を通わせた筈の二人なのに、運命のいたずらによる別離。そしてあまりにも無残な再会。あの、名美のいた場末の店は、世界の果ての風景なのだろうか。切ないという表現では、軽すぎる。