8.“ラップ”という音楽表現が、日本の音楽シーンに根付いてもう久しい。
けれど、“日本語でラップをする”という表現方法が持つ根本的に拭いされない違和感と気恥ずかしさは確実にあり続けている。そういうものから目をそらさず、それでもこの表現で夢を追う若者たちの“無様さ”を真正面から描いた試みが良かった。
「自主制作映画」ということは知っていたけど、音声の違和感も含め思ったよりもチープな映像世界と素人臭い演技には少々面食らってしまった。映画冒頭の感触は、どこかの映画学校の学生が課題で撮ったものかと思える程で、果たしてこれからどんな映画世界が描き出されていくのか不安になったことは否めない。
繰り広げられる安っぽい映像や演技に嘲笑を禁じ得なかったけれど、気がつくとそういうことは気にならなくなっていた。
稚拙な演技も含めて、ださくて、格好悪い片田舎のラッパーたちの行く末が気になって仕方なくなってくる。
尽く格好悪い彼らの言動が、可笑しくて、仕方がない。
中盤でみひろが主人公に対して言うことは、恐らく間違っていまい。
何も出来ていない彼らは、きっと何も成し遂げることなく終わるのだろう。
それは、悲劇でもなんでもないあまりにフツーの現実だ。
「夢を追う」ということの愚かさとほんの少しの素晴らしさが入り交じった現実。
映し出される映像世界はとてもチープだけれど、それを不器用なまでにまっすぐに描いているこの映画の在り方はきっと正しい。
場末の焼肉屋で、ようやくバイトを始めたに過ぎない主人公が、夢を諦めかけている友人と自分自身に対して熱くライミングをするラストシーンは、それまでと変わらず、いやそれまで以上に格好悪く滑稽だ。
ただ、僕には彼を嘲笑うことなんて出来るわけがない。
P.S.みひろが良い。エロくて良い。当たり前だけれど。