1.この映画はMr.Childrenが1995年に行なった、ツアー・アトミックハートとツアー・イノセントワールドを追ったドキュメンタリーである。一つのバンドの映画が造られる、これだけで当時の”ミスチル現象”の凄まじさを感じる事が出来る。
桜井さんはとても素直な人間だ。喜び、つらさ、不信感、Mr.Childrenの曲には彼が感じているものがリアルにつまっている。だから昔の曲から最新の曲までを続けて聴くと、桜井和寿という男の人生をそのまま追う事が出来る。
当時は正にMr.Childrenがセールスや規模の頂点に立っていた時代である。この飽和状態が彼らに虚無感を与え、結果としてその後『深海』というへヴィーな傑作アルバムをリリースさせることになる。言うなれば暗いトンネルの入り口だろうか。
こうして見て驚いたのは、観客の歓声が全て「キャー」なことである。ほぼ全員が女性ファンで、大量のおっかけがついてまわり、まるでアイドルである。こんな状況を見ると、桜井さんが陥っていった暗黒というのが分からなくも無い。
とはいえ、デビューから10年以上たった現在でも日本のトップに君臨するバンドだけあり、Mr.Childrenの曲はどれも素晴らしい。「Dance Dance Dance」や「everybody goes」のエネルギー、「雨のち晴れ」は面白い演出、「innocent world」の大合唱は何回も聴いた曲だけど感動してしまう。
”音楽は想い出のしおり”という名言があるが、当時の自分を思い出しながら浸る事が出来る。
余談だが、それにしてもMr.ChildrenとU2の共通点は多い。この映画自体はU2の『魂の叫び』だし、ツアー・アトミックハートの大画面を設置したステージはZOO TV TOURを思わせる。アルバム『DISCOVERY』のジャケットが『Joshua Tree』にそっくりだったりと、まぁどっちも大好きな自分には嬉しい事なのだが。