31.舞台は鋳物の町で有名な昭和30年代の埼玉県川口市。健気でしっかり者の少女を演じる吉永小百合を中心に添え、貧乏だがしたたかにやりくりする彼女の一家の様子を、生活感溢れる演出で描いてゆく。時にはホロ苦く、時には涙を誘うヒューマンな作風は、監督浦山桐郎の庶民に対する温かい眼差しをも十二分に感じさせてくれた。個人的には、タカユキと朝鮮少年とのペーソス溢れる物語りが忘れられない。伝書鳩を飼育して競い合う(この当時、大規模な鳩小屋があちらこちらにあった)、ほったて小屋を見つけては自分達の秘密基地にする(未整備の荒れ地がまだまだあった)、新聞や牛乳を配達して少しでも家計を助ける…等々、ジーンと胸に染み入るエピソードばかり。ところでこういう映画って、下町に育ち多少なりとも生活苦を体験していないと、ピンと来ないのではないだろうか。私としては、昭和30年代から40年代にかけて都市近郊の下町に育ってきたこともあり、大いに共感を覚えノスタルジーを感じさせてくれた。日本映画史上、確かな位置付けにある名作です。 【光りやまねこ】さん 9点(2004-01-28 13:55:53) (良:3票) |
30.この貧しさが肌感覚でわかる世代と、そうでない世代があると思う。 肌感覚でわかる世代としては、「貧しさの惨めさ」を、オブラートに包んでいるなあと思う。当時、本当に貧しいと映画なんて見られなかったし。 【みんな嫌い】さん [DVD(邦画)] 5点(2008-05-24 09:49:08) (良:2票) |
29.映画は時代を映す鏡でもある、ということで、↓そうそう、こんな時代もあ~ったねと♪(byみゆきさん)つい強調したくなる。この映画が作られた昭和37年というとまだ高度成長期前で大方の人が生活に余裕もなく貧しさも当たり前だった頃。 暮らしが大変だからこそ大人も子供も困難も多く頑張らざるを得ないのだけど、それが悲惨とか暗いというのではない。 そういう時代なんだしそういう中でも夢や希望もある。前向きで明るいジュンのようなしっかりものや逞しく頑張る子供たちの姿は時代が一変した今見るといっそう感動的。特に弟のタカユキと彼を「親分」と呼んで付き従う朝鮮人少年とエピソードの数々が生き生きとしてて素晴らしい。今なら北朝鮮へ帰ったあのサンキチや家族には過酷な運命が待っているだろうと分かるが、この当時はそんなことを知るはずもなく希望を持った帰郷だと誰もが信じてたわけで・・・ いろんなエピソードも登場人物の誰もが見事に調和し、前向きに一生懸命生きる素晴らしさを力強く訴えてくる。 【キリコ】さん 9点(2005-01-30 21:42:08) (良:2票) |
28.中学校で見せられました。私の義兄Aは普通科に進みたかったが父親の一方的な意見で嫌々商業科へ。義兄Bは子どもの頃新聞配達をしてて「(新聞が厚く重い)元日の朝だけは上り坂の所でお袋が自転車の後ろを押してくれた。この時だけは、親やな、と思たわ。」と話していたが、こんなことはよくあることだったのだ。今見ると、彼女(小百合サン)の決心は、いかにも教科書的な感じが否めないけれど、こういう時代があったことも今の子どもたちに知ってほしいと思う。貧しくても胸を張る姉弟を映すラストシーンのなんと生き生きしていること!いつ見ても自分の甘さを反省させられ、励まされ、一緒に手を振る。 【かーすけ】さん 8点(2004-10-30 17:55:52) (良:2票) |
27.「貧乏な環境にある少女が、現実に負けずに明日への希望を抱く」という物語です。この映画の価値は、展開の意外性ではなく、判りやすいストーリーを支える確かな演出です。とにかく、脚本がうまいなあ、と感心し通しでした。物語が、60年代という時代と、川口という舞台と不可分に結びついています。脇役にも余分な人物は一人もいません(唯一の悪役一味ですら、ただ出ただけでは終わりません)。特に印象に残ったのは、姉弟が塀を見上げるシーン。その向こうには、それぞれ別の世界が広がっているのですが、それが彼ら一家の現状――状況しだいでどっちにも転がり得るという不安定性――を象徴しているように思えました。 【円盤人】さん [映画館(邦画)] 6点(2004-02-08 17:58:56) (良:2票) |
26.とにかく最高!俺はマジで7年前から毎晩ビデオで観てます。 【ベン】さん 10点(2001-06-07 13:36:34) (笑:1票) |
25.吉永小百合の急激な感情変化の演技がちょっと唐突というか仰々しくて違和感があった。当時の世相をどの程度表現しているのかは不明であるが、史料的な記録映画としては貴重に思えるものの、映画作品として面白いかと言われると微妙かな。調べてみると当時の高校進学率は65%ぐらいなので、進学するしないというのはそれなりの決断を伴うものだったのかと。ちなみに北朝鮮の帰国事業に関しては最近公開された関係各国の史料から背景や実態の調査研究が始まったばかりであり、その解明に興味関心を持っている。どうも日本政府が人道的立場を装って「厄介払い」したかったの実情であるようだが、本作においては差別偏見なく対等平等に交際している描写が今見ると新鮮でもある。 |
24.いかにも昔の古い日本映画という感じで、吉永小百合が「弱い人間」と評するダメ父親やグチ母に反発しつつもの、健気に優等生姉を演じる。 ネガティブな感情に翻弄される人たちを描いており、みているだけで憂鬱になる。または滑稽に思える。 ストーリーもいろいろな事件が起きるものの、とりたてて引き込まれるものはない。 吉永小百合18歳の可憐さと古き良き荒川川岸の風景にそれぞれ1点ずつ献上。 【mhiro】さん [CS・衛星(邦画)] 2点(2017-04-13 15:21:57) |
23.吉永小百合が可愛い。 弟は意外といい奴。 親父は人間のクズ。 印象に残ったのはこんなところ。 時代背景はほぼALWAYSのはずだけど、子どもが普通にテレビで相撲見てたのが斬新だった。 昭和30年代の風物詩である近所の連中がみんな集まってテレビに大騒ぎするという儀式は川口では行われていなかったようだ。 まあ、自宅にテレビが無くて隣の家で見るというのが貧乏の象徴なのかな。 ストーリー的にはいまいち盛り上がらなかったけど、どんなに貧しくても北朝鮮送りにされるよりはマシというメッセージはよく伝わってきた。 【もとや】さん [DVD(邦画)] 6点(2013-04-06 13:27:02) |
22.1975年頃、横浜放送映画専門学院の生徒が合宿で某県に来たとき、ある映画館で観た。その後、生徒とともに淀川長治さんの講演を聞いた。映画を観る場合、基本的に製作当時の目線で鑑賞を心掛けているが、この映画の場合は例外だ。劇中で在日朝鮮人が帰国事業で祖国へ帰る話が盛り込まれ、重要なテーマであるが、今となってはナンじゃいな、てな感じである。当時も半島情勢に警告した人はいるはず。それを無視した進歩的文化人がこの映画を製作したのかな?主演の吉永小百合が草むらにかけてゆき、しゃがんで感嘆(?)の表情を見せるが、監督はあのシーンを強調したかったのでは? 【風小僧】さん [映画館(邦画)] 1点(2012-12-15 20:41:33) |
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21.吉永小百合といえば、今でもアイドルというイメージが抜け切らないけど、 本作ではタイトルからも想像できるように、高度経済成長期のひずみという社会問題を軸に、 当時の時代背景とともに、少女の苦悩と成長を描いており、 低レベルなアイドル映画とは一線を画した作品に仕上がっている。 でも時々吉永小百合はアイドル演技がちょろっと出てきて、こっ恥ずかしくなるときが。 サユリストにはお薦めの青春映画だが、それにしても真面目に作ってるよね。考えられないわ。 今の若い人が観てもピンとこないんだろうな。いい歳こいた俺だってピンとこねーもん。 【MAHITO】さん [DVD(邦画)] 5点(2011-08-07 19:56:08) |
20.2011.6/10鑑賞。私たちのアイドルであった吉永小百合が一番可愛い時期。この映画のような環境で立派に育つ子供は少ないだろうと思う。自分に置き換えても難しいし、まして今の時代では・・・。 【ご自由さん】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-07-26 21:43:57) |
19.高度経済成長の時代のど真ん中に存在していた「貧困」の世界を描く、いかにも文部省推薦な一作。組合運動やら在日朝鮮人の帰国事業というものが、ふつうの日本人が生きた日常のなかに当たり前のように存在していた時代とその世界を、しっかりと見せてくれます。でも、やっぱりこの「貧困」の世界に吉永小百合は合ってない。あの父と母から、どうやってこの娘が生まれたのかとどうでもいいことが気になってしょうがない。酒を飲んでも、学校をサボっても、その「清く正しく」の雰囲気は全く揺らぎません。ただ、1960年代の映画館で観客が望んだことは、おそらく、貧困のリアルな現実の描写なんかではなく、厳しい日常にさっと光を射してくれるような、現実離れした「理想の娘」であり、「理想の姉」だったのだろう。その意味では、吉永小百合というキャストは大正解だったのだと思います。 【ころりさん】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2011-06-24 17:55:08) |
18.散発的なエピソードが特に起伏もなくつながれているだけであって、面白みが感じられない。ただし、無難で優等生的な芝居しかしないと思っていた吉永小百合が、あそこまでいろんな表情を見せていたのは珍しかった。 【Olias】さん [CS・衛星(邦画)] 4点(2011-06-23 04:04:55) |
17.私の少年時代のあこがれは吉永小百合、歌に映画に大活躍で当時のアイドルとしての人気は高かった。 「伊豆の踊子」「青い山脈」「泥だらけの純情」など次々と小百合さん映画を見ていっのだが、「キューポラのある街」はあまり記憶がなく後にビデオで改めて鑑賞。結構内容があると思う。川口市の鋳物工場や在日朝鮮人のことなど当時の風情をよく反映しているからだ。しかし、何となくお嬢様イメージの吉永さんと鋳物工場の貧しさがしっくりこなかった。 【ESPERANZA】さん [映画館(邦画)] 6点(2011-02-22 23:52:10) |
16.有名な作品であることは十分知っていましたが、今回初めて見ました。ドキュメンタリータッチの始まりから、特段の起伏のないストーリー、大きな事件もなければ、涙を誘うところもない、ハラハラもなければ笑いもない。励まされる部分もない。この映画が一般受けした理由がわからない。正直、つまらなかった。ただ、この作品で描かれてる雇用環境が今とほとんど変わらないことが興味深かった。 【フラミンゴ】さん [地上波(邦画)] 4点(2010-03-29 14:32:48) |
15.日本映画オールタイムベストなどで常連の『キューポラのある街』、やっと観ることができた。 所得倍増計画と叫びながら、日本中がこれから経済を盛り立てようと勢いづいていた時代、東京隣りの川口では、その時代の波に飲み込まれ、鋳物で生計を立てていた川口の人々は、あらゆる面での新陳代謝を余儀なくされていた。 そうした激動の昭和史を語る上で、本作はこれ以上ない作品と言えよう。 当時の、下町に住む市井の人々の暮らしを事細かに描きつつ、そこに生活する人々の希望や悩みを、実に丁寧に描いている。 主演の吉永小百合は、まだ幼さが残り、元気溌剌とした演技で、スクリーンを縦横無尽に駆け巡る。 昔かたぎの職人の失業など、現実的で暗い題材を扱いながらも、こうした吉永小百合の天真爛漫たる明るさが、見事なコントラストでもって浮かび上がっていた。 希望をもたせるラストも見事で、実によくまとまった名作だとは思うが、吉永小百合が個人的に好みではないという部分と、優等生すぎる内容に関しては、やや不満を感じた。 吉永小百合が主演をしている時点で、骨太な内容を求めるのは無理があるかもしれないが、もう少し見応えのある土くさい作品だったら、どうなっただろうか、と無いものねだりな興味がわいた。 【にじばぶ】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2010-02-19 01:01:15) |
14.「清く・正しく・美しく!今はどんなに貧しくても、前向きに胸を張って!!」が、高度成長期当時のニッポン人の美徳だった時代の、まさにその理想を全身で体現していた若き日の吉永小百合の代表作。この健気な少女役が評価されたせいで、その後の女優人生を、面白味のない生一本で一途でひたむきな役柄しかこなせなくなってしまった皮肉な映画とも言える(唯一「細雪」は除く)。実際同時代の日活の女優さんなら、顔パンパンな彼女より浅丘ルリルリや芦川いづみの方が、遥かに女優として僕には魅力的に見えます。ただこの映画、忘れられないシーンがあるんです。ヒロインジュン=吉永の弟悪ガキコンビ二人組が、新聞配達の少年からボートか何かを盗んで川向こうから少年に泣きながら悪態をつかれシュンとなるシーン。何でかやけに忘れられないんですよね・・・。このシーンの記憶のお陰で、自分の中でこの映画は佳作の地位を保っています。 【放浪紳士チャーリー】さん [地上波(邦画)] 7点(2009-09-20 10:36:11) |
【Yoshi】さん [DVD(邦画)] 7点(2008-03-12 23:22:31) |
12.やっぱり、わしは、吉永小百合が苦手かも。当時は、この清楚さがたまらない魅力だったのだろうけど、少なくとも今わしが見ると、どうも、はきだめの中の鶴って感じで、浮いて見えて仕方ない。 とはいいつつも、この映画に関しては、主人公の少女の裏の裏まで描こうとしていて、その部分だけは共感が持てたのだけど。 【追記】この作品、あまり知られてない(というか自分が知らなかっただけ?)続編があるのね。『未成年 続キューポラのある町』。三年後に作られて、物語的にもほんとに三年後を描いている。こちらの方がいろいろな問題が噴出する展開。そのことごとくに根本的な解決が見つからないまま、一気に終わってしまう。でも、問題が生々しくて、迫真さはこちらの方が上。吉永小百合もこちらは、親はたたくわ、反抗するわ、結構激しくて、好感が持てた。野村孝監督。全然知りません。でも、構図も大胆で、テンポもあり、かなりシャープな映像だった。 【いのうえ】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2007-05-22 21:31:32) |