43.重ねて見る毎にいいと思うようになった。ベニスに旅行に来たアメリカ人のハイミスが、素晴らしい景色にうっとりして眺める。その風景に観客も一緒にうっとりする。旅行して素晴らしい風景を見ている思いを共感させるキャサリンの演技とカメラワーク。でも寂しい思いは満たされない。そこへ渋いイタリア紳士の登場、密かにあこがれるが自分からは行動できない誇り高い女性をこれまたキャサリンは見事に演じる。運河のふちで彼の店の写真を撮ろうとして後ろ向きもまま運河に落ちる。その瞬間、つれの子供がカメラのみ助ける。その後のホテルでのシーン、レナートが彼女を訪ねてきて口説くシーン。二人とも横顔のみ、キャサリンはその横顔で本音を暴露され、うろたえ困惑する心情を実に巧みに表現する。レナートに妻がいると知ればきっぱり別れようとするし、これ以上彼にのめり込むことは出来ないと悟ると「明日帰る」と決断する。いかにも彼女にぴったりの女性像。「私の生活には何にもないわ」と言った彼女に、このベニスの想い出は一生の宝物になるのだろう。知らない土地、しかも遠くて二度と来られるかどうか分からない旅先で、出会う景色や人とのふれあいを体に刻み込むようにする「旅情」が、この頃特に理解できる気がする。それで彼女の表情と視線の先の高い屋根や空を眺めるシーンの意味がよく分かる。彼女のドレスとリボンの色のコンビネーションも素敵。彼女がいつまでもゆっくり手を振るラストシーンといい、全てに心配りが効いた作りが素晴らしい。旅先でのハイミスのひとときの恋という世俗的な話を、品を落とさずメロドラマにもならず爽やかに描き切れたのは監督のうまさだと思う。 【キリコ】さん 10点(2003-08-06 11:21:34) (良:4票) |
42.もちろん、渋谷の名画座で見ましたケイト(キャサリンヘップバーンの愛称)の映画でもっとも好きな映画です。ベネチアでバケーションを楽しむアメリカから来たオールドミスが現地の男性と恋に落ちる。言ってしまえばそれだけですが、まだ海外旅行もままならない頃の人にとってこのまばゆいばかりの映像はイタリアへの好奇心をかきたてたことでしょう。夕暮れのベネチアの海岸で恋する二人は風景の中に溶け込んでいるようでした。恋などもう私には無いだろう。人を真剣に愛することなどもう出切る訳が無いと思っていたジエーン。しかしそれが現実になって今起ころうとしている。それでも別れは見えているこの恋に飛び込もうかやめようかと迷う女心をケイトが熱演しています。ロッサノブラッツィーもイタリア男のいい意味いやらしさを良く演じていると思います。あの、忘れられないラストシーン誰しもがきっと心に涙と共に焼き付けると思います。デビットリーン監督の不朽の名作としてみんなに薦めたいと思います。 【としべい】さん [ビデオ(字幕)] 10点(2004-07-13 12:47:27) (良:3票) |
41.「世界三大イタリア旅行に行きたくなる映画」のひとつ。水の都がとても美しい。若さも財産もなく美男でもない既婚者で、女性を口説く必要がある人にとっては必見の映画。骨董屋の主人がなにゆえ真夏のベニスで毎日スーツ姿でキメているのかが少し不自然ではと突っ込みをいれたくはなるが、男が女性を見るときにどこを見ているかの描写はきわめて自然かつ正確でちょっと恥ずかしくもなる。玄関があってすぐに履物を脱ぐ日本と違い、西洋人が靴を脱ぐのはどんなときだかを考えながら花火見物をするといい。くちなしの花の使い方もうまかったが、ジェーンが映写機を手にしなくなったのはいつからかとか、冒頭に水路上の信号機を見せておいて、最後の鉄道シーンの信号機につなげるところとか、小道具の使い方にも冴えがみられる。蒸気機関車を知らない世代の人にも観てほしい。英語が聴けるひとにとっては字幕では訳されないがフランスをやっつけているセリフがときおりあって楽しい。 【南浦和で笑う三波】さん 10点(2003-12-24 15:45:24) (良:2票) |
40. イタリア旅行中のオールドミスが旅先のヴェニスでふと知り合った中年男性と恋に落ちるストーリーは言ってしまえば「ありきたり」かもしれない。しかし、デビッド・リーンの格調高くもキメ細かい演出&脚本、ジャック・ヒルドヤードの見事なカメラワーク、「サマータイム・イン・ヴェニス」の切なく甘いメロディ、名女優キャサリン・ヘプバーンの抑制の利いた演技が一つに融け合った結果、そこに唯一無二の愛すべき佳品が誕生する。キャサリンにとっては観光も兼ねたごく軽い一編だったかもしれないが(別にオスカー受賞って訳でもないし)、個人的にはリーン監督の本領発揮で彼女のチャーミングさが(「男顔負けの強さ」といった誇張された類型的描写ナシに)無理なくフィルムに掬い取られており抜群の出来だと思う。今、本領発揮と言ったが正にデビッド・リーンの真価は女性心理を巧みに描く小品(「逢びき」や「ホブスンの婿選び」)にこそ発揮されるのであって、本作以降「戦場にかける橋」「アラビアのロレンス」「ドクトル・ジバゴ」等の70mm超大作御用達監督は言わば仮の姿。 【へちょちょ】さん 8点(2003-01-21 10:51:35) (良:2票) |
39.イタリアを舞台にした束の間の大人の恋。広場に群れ飛ぶ鳩。夜空にくっきりと浮かぶ満月。波に揺れるゴンドラ。その思い出ひとつひとつを胸に刻もうとするヘップバーンの顔のなんと眩しく美しいことか。刺刺しいほどのオープニングと、ラストで見せる哀しくも穏やかな彼女の表情の変化が印象的だ。中年になって初めて知った燃えるような恋。果たせなかった恋にもかかわらず、人が人を想う優しさにふれ、彼女にとっての終生の思い出を胸に、新たな人生の旅立ちを予感させる幕切れの鮮やかな事。人間の情感というものをこれほど切なく描いた作品も滅多にお目にかかれるものではなく、D・リーン監督作品の中でも最も好きな、これぞ珠玉の名作。 【ドラえもん】さん 10点(2002-06-30 15:47:31) (良:2票) |
38.レナートさんの名誉回復になるかはわかりませんが、イタリアはカトリック教会の影響が強く、1970年まで離婚を認める法律はありませんでした。 ソフィア・ローレンと既婚者だったカルロ・ポンティはそのために海外で結婚し、その前後とも法的に相当大変だったようです。 【みるくせいき@ぶたじる】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2018-09-17 16:28:17) (良:1票) |
37.子供の頃、通ってた塾の先生が、「今晩、テレビで『旅情』が放送されるから(教育テレビの世界名画劇場)、勉強なんかしてないで是非観なさい」って、言ったよ。何しろ先生が「勉強すんな」って言うんだから、そりゃ喜んで観ましたよ(どうやら元は学生運動の活動家だったらしい、と知ったのは後のこと)。まあ確かに、いわゆる恋愛コメディみたいなところのある映画で、子供が観てもそれなりに楽しめる映画ではありましたが・・・やっぱり、大人になってから観ると、格段に面白い。というのはきっと、大人の方が、「日常」というものにクサクサしている分、「脱・日常」というコトに、より敏感になっているから、でしょうか。昔は、テレ東の旅番組なんて絶対観なかったのに、最近はふと気づくと、テレビのチャンネルが旅番組になっていることがしばしば(宿の窓から海さえ見えれば「うわ~絶景~」とかコメントするのは勘弁してくれ、とかボヤキつつ)。だもんで、映画としてこんなに見事に“旅情”を表現してくれると、もうタマランのです。汽車に乗ってヴェニスに到着する主人公の期待感とともに、彼女の視線とともに我々の目に広がりゆく、街の風景。前半は彼女はどちらかと言えば、傍観者であり、彼女の視点から風景が描かれる。だけど、骨董屋と恋に落ちてウキウキしだすあたりから、彼女は傍観者という“見る立場”から、映画における被写体すなわち“見られる立場”へと切り替わる。そう感じられたその瞬間、彼女も常に持ち歩いていたカメラを、「忘れてきたわ」と言うタイミングの良さが、心地よかったり。物語における恋の行方については、いささか強引なので子供には刺激が強かったかも(?)。でも今では、中年男女が少年少女のごとくキャピキャピしている光景を、微笑ましく見ることができるのですが……正直に言います、半分「トホホ」と苦笑しながら観ていることは、否定いたしません、はい。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2009-04-04 16:10:28) (良:1票) |
36.K・ヘプバーンのコメディセンスが発揮された映画でした。特に前半は面白い。この映画を彼女の最高傑作として推す人は多いかと思いますが、私もその一人です。大女優キャサリン・ヘプバーンを堪能していただきたい。 【shoukan】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-03-08 23:03:34) (良:1票) |
35.愛と言うのは炎と同じで激しく燃えた後、いつかは消えてしまうかもしれない。しかし二人は愛が一番激しく燃え、二人ともが激しく相手を求め合っている時に別れた。心の中で一生相手を求め、一生愛し続ける為に・・・そしてその別れは突然やってくる。キャサリン・ヘップバーン演じるジェーンが別れを告げる数分前、とても嫌な予感はしていた。それはストーリーの流れから読み取れる雰囲気もあったけれど、やはり一番は彼女の顔から滲み出る切なさ、愛の感情が並半端なものじゃなかった。この映画は水の都ベネチアの数々の美しい風景を観て感動し、そこに暮らす人々の温かい心、人情を知りさらに感動した。さらにその上に、二人の情熱的で美しい愛を目にし、心が揺さぶられ胸が苦しくなるほど感動した。そしてラストの美しい別れ。辛く悲しい別れだったけれど、二人の赤い糸はしっかりと結ばれたまま別れた。別れとは必ずしも辛いだけとは限らない事を知った。 【ボビー】さん 9点(2004-08-16 22:13:38) (良:1票) |
34.骨董品屋のオジサンが、なぜこのオバチャンにアプローチするのか理解に苦しむ。でも、ラストには賛同できる。展開は唐突だったが、そうあるべきだし、そうでなければならない。あのラストでなければ、この映画たりえない。 【やすたろ】さん 5点(2004-01-25 11:48:43) (笑:1票) |
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33.これは大人の物語。もっと若い頃に見た時は淋しいオールドミスの話って感じであまりピンとこなかったけど、ある程度年齢がいってから見ると主人公の気持ちがわかる。独身女性が増えつつある今は旅行に誘う友達もいるかもしれないけど、当時はやっぱり少なかっただろうな。私もややハイミスなので、旅先でのロマンス、情熱、別れなど気持ちは十分に理解できます。映像の美しさが切なさを引き立てる。 【yukaori】さん 8点(2003-12-08 02:42:15) (良:1票) |
32.「日曜洋画」で観ました。河に落としたくちなしの花(だったかな)を拾いそこねたことが、ラストの別れの暗示になってしまうのだが、解説で淀川さんが「あの男、飛び込めば良かったんですね」と言っていた。ああ、そうなのだ、そうなのだ、と。 【アンドロ氏】さん 9点(2002-12-11 23:55:36) (笑:1票) |
31.キャサリン・ヘップバーンは、私の大好きな女優の一人で、ストーリーもとてもいい。でも、10点の理由は、映像作りの上手さです。ベニスに着いたばかりのキャサリンが、カメラを夢中で回している冒頭のシーン。赤いゴブレット。川面を流れる白い花。カメラワークの美しさと、脚本の良さが傑作としていつまでも心に残っている作品です。 |
30.大人の恋をよくまとめたいるが、イタリアを舞台にしながらもヨーロッパ的雰囲気が余りしなかったのが減点の原因。ヒロインにも相手役にも文句はない。佳作だとも思うが、少々物足りなかった。監督が英国人だからか、どこかイタリア的なものを欠いているように感じた。 【なな】さん 7点(2002-07-26 13:48:22) (良:1票) |
29.開始30分経っても何もアクションがないので途中で見るのを止めようと思いました。 最後まで見ましたが、ホント、タイトル通り、旅の情事という内容で、ある意味時代を感じさせる映画でした。 キャサリン・ヘップバーンには申し訳ないけど、正直ガッカリしました。 映倫PG12作品とのことですが、どこでひっかかったんでしょうね。 【クロエ】さん [CS・衛星(字幕)] 3点(2020-01-20 09:39:50) |
28.これだけ古い映像でベネチアの建物や景色に感動するのだから、実際に行ったならどれ程だろうと思ってしまいます。 ベタですが、子供はスパイスになっていますし、裸足です。 【さわき】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2019-02-15 19:20:49) |
27.この主人公の女性はどの程度の年齢を想定していたのだろうか。 現代版で作ると、まずはアメリカでの通常会社生活から始まって...となると思うが、その方が感情移入はできそうだ。 ということで、ちょっと物語に入り込めないで置いていかれた状態での鑑賞が続く。共感し難い、それが結論。 【simple】さん [CS・衛星(字幕)] 4点(2018-09-24 17:59:20) |
26.ベネチアの休日はローマとは大違いですが、アラフィフヘプバーンがハイミスの可愛らしさをとても自然に演じています。それにしてもイタリア男は女性の自尊心を傷付けないようにもっとスマートに口説くのかと思いきや、あまりにストレート過ぎて少々きつくないですか? 【ProPace】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2018-04-22 23:37:00) |
25.おばはんが飢えとるなー。低俗な感想ですんません・・・。 【ケンジ】さん [ブルーレイ(字幕)] 6点(2012-12-12 21:47:41) |
24.ヒロインの孤独が匂わされるのは、メロドラマでは珍しいことではないかも知れないが、ここまでリアルに作品の中心で造形されてるのは、ありそうでいてあんまりない。このハドソンさん、海外を一人旅する根っからの独立人かと思うと、どちらかと言うと社交ベタが地にあり、一人旅しか出来ない人らしい。同伴者がいると疲れちゃうタイプ。つまり人と付き合うのが苦手で、でもそんな自分と折り合って今まで来たけれど、最近寂寥うたた、何かを期待して情熱の国への旅に来た、というここまでのいきさつを勝手に想像できる。前半の孤独の描写が素晴らしく、いや「孤独」と言うと言葉が強すぎるんだけど、「人とうまくできない」性癖というか、これまで一人でやってきた矜持が邪魔して、人恋しさをまわりに見せるのを妨げちゃう。人との出会いをとりあえず避けてしまう。カフェの椅子を傾けといたり。言ってみれば本作は、そんな彼女がちょっと人生の想い出を作れた、ってだけの話。これで彼女が変われるのかどうかなんて分からない。たぶん変われないだろう、でもこういう中年の想い出が出来たってことが、彼女の財産になる。観光ってものの本質がそういうことなんで、これは優れた「観光映画」だとも言えそうだ。それを裏打ちするカメラの素晴らしさ。観光地をロケし、観光客の自然な驚きを通して風物を収めている映画って、これもありそうでいてあんまりない。 【なんのかんの】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-07-20 09:38:42) |