47.○映画による日本童謡・唱歌集。 ○日本人に共通する記憶があるとしたら、それは童謡と唱歌にしか残っていない。その歌詞とメロディは、自然の美しさ、人間の優しさを謳いあげるが、死への憧憬(コノ美シイ景色ノ中デ死ニタイ)という一面も持っている。この映画では、出征兵士を見送る場面の軍歌4曲以外は、切ない切ない童謡・唱歌が連綿と流れ続ける。木下(弟)の恐るべき演出である。 ○私がこの映画をはじめて観たのは化石時代、小学生のときだ。炭住(炭鉱住宅)の講堂に、アッパッパの女たちと子どもたちが座布団持参で集まった(鉱夫たちはアクション映画しか観ないので敬遠)。大石先生の分教場勤務時代まで、女たちはアハハハとアケスケに笑っていたが、それから後はラストまで嗚咽の大合唱。中にはヒイヒイ声を出して泣く女もいた。「深く泣ける人でなければ本当の笑いを笑うことができない」とは五木寛之の言葉だ。泣いて泣いて大泣きして、それでスッキリするのである。 ○後年、名画座で再鑑賞したとき、やはり、観客を泣かせることを目的として作った映画だと確信した。いわゆるお涙頂戴映画である。しかし、お涙頂戴イコール低級とは限らない。低級にさせない2つの凄みがこの映画にはある。1つは高峰秀子の恐るべき演技。もう1つは木下(兄)の恐るべき演出である。 ○私の邦画オールタイムベスト10の1本。 【火蛾】さん [映画館(邦画)] 10点(2014-08-16 16:08:01) (良:3票) |
46.古臭い映画、という印象はどうしても拭えません。たびたび流れる唱歌が、余計にそう感じさせます。今の小学生には、ほとんど馴染みのない曲ばかりなのではないでしょうか。教科書的な印象も受け、それらを欠点として、5点以下の低評価を下している人が少なからずいるのもうなずけます。それでも、この映画は紛れもなく名作だと思います。例え古臭く、教科書的な内容であってもです。この映画が描く頃の日本は、今とは比較にならないほど厳しい時代でした。小学生の修学旅行に、自分で稼いだ金を出して行くなんて、今の子供たちに想像できるでしょうか。若い時に見てピンと来なくても、ある程度年齢を重ねてこの映画を見れば、今の時代の素晴らしさが必ず分かると思います。尺は2時間半と長めですが、山場(泣き所)が全体に散りばめられていたのも好印象です。単に他人に見て欲しいというレベルを超えて、後世に残すべき映画だと強く確信したことから、10点とさせていただくことにしました。 【川本知佳】さん [DVD(邦画)] 10点(2015-03-15 21:14:27) (良:2票) |
45.すばらしい小説がすばらしい脚本と演出によって、すばらしい映画に生まれ変わった。「二十四の瞳」は日本の映画史に永遠に残る名作だろうと思う。 名誉の戦死が尊ばれていた時代に、死なないでと言うことが非国民だアカだと言われていた時代、一人の女教師と12人の教え子たちの心のつながりを暖かく静かに描いた映画だ。数々の名場面が心に残る。 小説を初めて読んだ時の感動と映画を初めて見たときの感動がまったく同じものだった。 【ESPERANZA】さん [映画館(邦画)] 10点(2012-06-27 22:55:42) (良:2票) |
44.以前勤めていた会社に小豆島出身のとんでもない性悪な女性がいて、以来小豆島と聞くだけで反射的な嫌悪感に捉われていた私を見事に解放してくれたのがこの映画。“1リットルの涙”はこの作品にこそ捧げたい。大石先生が初めて教壇で名前を呼び上げた時の子どもたち一人ひとりのクローズアップ、射抜くようなまっすぐで純な瞳が後々の画面を最後まで射抜いているようで、記念写真の子どもたちを一人ずつカメラが移動していくその瞳と重なり、タイトルに相応しい映画へと昇華しています。盲目となってしまうも、心の瞳で記念写真が見える。二十四の瞳はいつまでも大石先生の、そして子どもたちの人生に輝き続けているんですね~。また演じる役者が変わっても、本当にその子が成長したかのようなキャスティングにも驚かされます。日本シリーズのロッテに合わせたわけではありませんが、ど~んと10点。 【彦馬】さん [CS・衛星(字幕)] 10点(2005-10-26 13:06:03) (良:2票) |
43.タイトルロールに流れる「仰げば尊し」を筆頭に、「故郷」「七つの子」「浜辺の歌」などなど数多くの唱歌が作品全体を包み込み、これが抜群の効果を収める。音楽担当は監督木下恵介の実弟に当たる木下忠司。この人、兄恵介と毎回息がピッタリだが今作ではそれを極めている。場面、場面に流れる馴染みの唱歌を彩りのあるメロディーで微妙にアレンジしており、この作品にかける意気込みが充分過ぎるほど伝わってくる。また、小豆島の美しい風景と島民の生活模様が楠田浩之のカメラに余すところなく収まっており、これもまた監督と息がピッタリ。忍び寄る軍国主義に召集令状、貧苦に喘ぐ島民の生活、敗戦という新たな時代への出発…切々と暦をめくるように綴っており木下調の演出が冴えに冴え渡る。戦時の戦意高揚作「陸軍」の製作がよほど悔しかったのか、今作では平和へのメッセージがビシビシと伝わってくる。そして言うまでもなく、主人公の大石先生を演じた高峰秀子が文句なしに素晴らしい。純朴な子供たちに向ける優しい眼差しに、情感のこもった台詞回し。洋服の似合う新人の先生から人生の辛酸を体験し尽くした初老の先生までごく自然体で演じており、女性教師として一人の母親としての弱さと強さ、哀しさと美しさを見事表現しきっている。情感に訴える見事な反戦映画としてはクレマン作「禁じられた遊び」と双璧をなしており、日本映画史上、燦然と輝く名画。文句なしに10点満点。 【光りやまねこ】さん 10点(2004-11-01 17:57:37) (良:2票) |
42.戦争というより貧困が怖い。貧困の元に戦争があるんだけど。貧しさが子供を犠牲にする。それが当たり前の世界。当たり前なんだけど人間としてそれは憂うべきことなのだ。大石先生は純粋に憂う。人として悲しむ。時代とか世相とかに関係なく。ただ泣くことしか出来ない先生は弱者でしかないのかもしれない。しかしその世界を当たり前と割り切るよりもただ泣く方がずっと人間らしい。人々はそれは悲しいことなんだと知るべきなんだ。先生は子供たちに悲しみ泣くという行為が間違っていないことを教えているのだ。いい先生だなあと思う。長いけどさ。台風接近で時化た海沿いを歩くシーンがあるんだけど、そのときの波の高さが尋常でなく高峰秀子にバンバンかかっててちょいと心配した。二十四の瞳映画村は私も行ったことあるんだけど、87年版(田中裕子主演)で使用したオープンセットなんだな。 【R&A】さん [DVD(邦画)] 6点(2011-12-08 17:00:08) (良:1票) |
41.日本人なら誰もが知っているであろう名作中の名作。 何せ昭和3年から終戦直後までの長丁場なので、映画でこのお話をまとめるのは無理なのでは? と思っていたのだが、重要なポイントはしっかり押さえており、違和感はほぼ感じなかった。 郷愁を誘うような小豆島の素朴な風景はもちろんのこと、さりげない反戦のメッセージがいい。 一番びっくりしたのは、成長した子供たちの顔がそっくりな事。 どうやら全国公募で顔の似ている兄弟や姉妹を集めたようだ。気合い入ってるなぁ。 それでも、子供たちのそれぞれの細かいエピソードがかなり削られているせいか、 全員の名前と顔が最後まで覚えられなかったのは残念。 時間的な制限上仕方がないのだが、そこがカバーできていれば中だるみも感じないはずだし、 もっと感情移入ができたかと思う。監督さんの手腕が非常に光っている、お薦めの作品。 【MAHITO】さん [DVD(字幕)] 8点(2011-08-10 08:13:57) (良:1票) |
40.木下恵介は、ちょっと離れて平行移動する二人を描くととてもよく(『野菊の如き君なりき』など)、それの絶唱とも言うべき最高の成果が、本作の修学旅行の場。食堂で働く松っちゃんを大石先生が訪ね、嬉しさと恥ずかしさが混ざったような松江が距離を置いてもじもじしている。大石先生が去るとたまらず飛び出したものの、旧友たちが先生へ走り寄ってくるのを見てサッと身を隠す。たまらないシーン。そして次にとぼとぼ歩く松江と、旧友たち・先生を乗せた船とが平行移動していく名場面になる。心象風景がそのまま抒情の極致となり、画としての構図もピタリと決まった。またチョイ役ながら、食堂の女将、蝿叩きを持った浪花千栄子が絶品なんだ。この映画の長さは、唱歌が流れるシーンで歌をたっぷり入れているので膨らんでいるところがあり、欠点と言えば欠点なんだけど、作品ごとに趣向を凝らす監督が本作では、唱歌が軍歌に勝利する歌合戦っていうような試みをしたと思われ、ロングを生かした画面もあいまって、そこにじっくりひたれる世界を作り上げている。木下恵介はコメディで最も才能を生かした監督だと思っているが、本作は抒情の作家としての代表作になった。 【なんのかんの】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-04-12 09:46:14) (良:1票) |
39.戦争の記憶が生々しいころ映画館で上映されたところを想像してみると、観客一同泣きに泣いたであろう。 戦争の悲惨さや残酷さが見に染みて悔しい気持ちでいっぱいの時代ならそれも分かる。 しかしそれからはや50年の現代では名画といえども色褪せてしまう。 瀬戸内海の景色の美しさと言っても白黒では色に乏しい。 小学校の賛歌もひどく古めかしく、時にはくどく聞こえてしまう。どちらも泣かせる要素にはならなかった。 終始悲嘆にくれてばかりいる高峰秀子先生も、 女性が強くなった今では違和感を感じてしまう。それほど日本は変わったのだ。 【mhiro】さん [CS・衛星(邦画)] 4点(2011-02-21 00:01:03) (良:1票) |
38.映画の中盤以降、主人公である大石先生はことある毎に泣いている。最後には、子供たちからも「泣きみそ先生」とあだ名される始末だ。でも、大石先生の流すその涙にこそ、昭和という歴史への、つまりは「戦争」というものへの“異議申し立て”があることを、この映画の作り手たちはまちがいなく自覚的である。それはただ悲しいからでも、つらいからでもない、「くやしい」からこそ流された涙だ。時代に翻弄され、押し流されながらなすすべもない時、人はそういう状況に追い込んだものたちに怒り、しかしそ気持ちの持って行き場がないから、泣く。そこには単なる「被害者意識」ではなく、もっと烈しい告発の意志がある。だからこそそれは、時代を超えて見る者の心を揺さぶり続けるのだと思う。 ・・・以上、ずっと以前に録画してあったビデオで、先日久しぶりに再見した感想。昔は単なる感傷と、いかにも日本人的な諦観にいろどられたもの、という印象を抱いていたのだけれど、今回見てコロリと考えがかわりました。やっぱり映画は、何回も見直すべきだなという反省と自戒をこめて、ここに記す次第です。木下恵介監督、ゴメンナサイ。 そして素晴らしい映画をありがとうございます。 【やましんの巻】さん [ビデオ(邦画)] 10点(2009-02-03 20:06:26) (良:1票) |
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37.名作は単純に面白いものと、時代がそうさせたものがあると思うけど、これは完全に後者かなぁ…。詰め込まれている(もちろんそれは間も含めての話ですが)ではなく、間延びしてますね。 【デフォルトモード】さん [DVD(邦画)] 1点(2009-02-02 01:58:20) (良:1票) |
36.原作を既に読んで結果がわかっていたので、そんなに感動はしないかなと思っていたけど、やっぱり映像になると感動しますね。この映画は歌がとても効果的に使われているのでなおさらです。勇ましい戦争映画よりもこういう静かな反戦映画のほうが現代社会においては見るべき映画だと思う。 【こまごま】さん [DVD(邦画)] 7点(2007-03-30 22:12:20) (良:1票) |
35.あの集合写真が映る度にとても切なくなりました。確かに映像は古いかもしれません、音声も聞き取りづらいと思います、典型的なお涙頂戴作品かもしれません、ただそんな事が霞んで見えるほどの作品の完成度です。中盤から終盤にかけては物語がとても悲しくなります・・・。ですがその運命を受け入れていきながら強く生きていく大石先生やその教え子達のがんばりに見ているこっちが支えられていきます。 【一番星☆桃太郎】さん [DVD(邦画)] 10点(2006-06-30 22:41:23) (良:1票) |
34.笠智衆のおとこ先生が、夜中に奥さんと必死でオルガン練習してた「しーししーふ、みーみみー、いいいのいー」っていう唄がやけに耳に残ってます。(実は七つの子より好き)あれってなんていう曲なのかなあ・・・。唱歌の挿入が多すぎて、ちょっと感傷過多という些細な点以外文句のつけようがない素晴らしい映画。僕の中での美人の基準は、原節子でも吉永小百合でも、ましてや鈴木京香でもなく、三十年来この大石先生、高峰秀子さんって決まってます。 【放浪紳士チャーリー】さん [ビデオ(字幕)] 10点(2005-06-04 16:27:27) (良:1票) |
33.物語冒頭はモガ丸出しの先進的教師だった女教師が、ラストでは貧乏臭い和服に身を包んで、一台の自転車に涙する……。時の流れを描かせたら天下一品の木下恵介監督の真骨頂。この人の映画はいつでも「どこにでもありそうな人生」を丹念に描いてくれて好感が持てる。 【柿木坂 護】さん 10点(2003-10-02 02:36:09) (良:1票) |
32.単にノスタルジックな名作を期待していると結構えぐい描写があって驚く映画ですね。冒頭から子どもたちが前任の女の先生を泣かしたことを語り合う、自転車に乗り洋服を着ているというだけで奇異の目で見られてしまう、子どものしたこととはいえ落とし穴でアキレス腱を断裂させてしまうのは微笑ましいいたずらでは済まないちょっとシャレにならない展開です。確かに小豆島の風景は美しく撮影されているのですが、島民はよそものに対して冷たい人間として描かれており小豆島はこの映画を島の広報に使ってイメージ的に大丈夫なのかとすら思ってしまいますね(笑)。現代の視点から見直すとテーマとしては単純に貧困というよりも女性が働くこと・学ぶことの困難が描かれているという点に注目するのが重要ではないでしょうか。そういう観点で見ると物語が戦時中に突入すると高峰秀子は働く女性ではなく家庭の母親としての立場が強調されすぎており、反戦メッセージは大事なことではあるのですが枠にはまったつまらない描写になってしまっていると言えなくもないです。原作小説を確認してみると印象的なシーンや台詞はほぼ原作にもあるものばかりで木下恵介は脚本ではなく脚色とクレジットされているのは納得です。そのため原作者壺井栄の功績が大きな割合を占めるのは間違いないですが、木下恵介は間違いなく最高の映画化に成功しています。全編に渡って既成楽曲とそのアレンジが使用されているのは現代映画では珍しいことでもないのですが、当時においては世界的にもあまり見られない例ではないでしょうか。確かに流される童謡や軍歌はあくまで時代を象徴する古臭いものですが、この映画の音楽の使い方は時代を先取りした演出だと思います。1954年の日本映画としてはゴジラや七人の侍の陰に隠れてしまっているのはオリジナル脚本ではないという点もあるのでしょうが、意外と現代的なテーマも含まれていますので忘却されてしまうのは惜しい作品です。 |
31.子供たちの歌声と、瀬戸内海の美しい戦前日本の景色をバックに紡がれる物語は、誰もが決して忘れてはならない、この国のひとつの「時代」そのものである。これは、全国民が観るべき映画だと思っている。 【Yuki2Invy】さん [DVD(邦画)] 10点(2019-11-17 00:19:51) |
30.名作なんですよね…でも、僕はどうにも正直受け付けられませんでした。生徒たちの歌とBGMが引っ切り無しで煩くて煩くて仕方なかったんです。「七つの子(カラスなぜなくの)」の挿入とか、もう、くどくてくどくて、こんなしつこくてダサい音楽の使われ方、生まれてはじめて体験しました。ほとんど拷問でした。セリフが聞き取りづらい上に蝉の声が無駄に煩いシーンもありました。「二十四の瞳」という物語そのものに対しての評ではないです。この映画の出来が僕には「良い」とはとても思えませんでした。耳が疲れ「七つの子」の歌が嫌になりそうな映画でした。 【だみお】さん [DVD(邦画)] 2点(2014-08-08 11:54:07) |
29.何回も見て小さいころはそれなりに感動した覚えがあるが、記憶にちっとも残らない映画。こうしたタイプの貧困がなくなったことは良いことだが、戦争のことを被害者の立場からばかりみるように押し付ける朝日新聞的感じが好きでない。 【みんな嫌い】さん [DVD(字幕)] 5点(2013-11-04 22:39:58) |
28.清く正しく美しい、いかにも文部省推薦的つまらない映画。 【la_spagna】さん [DVD(邦画)] 5点(2013-09-22 00:26:39) |