2.巻頭に登場するのは、真上から俯瞰したバレエ団のダンスの輪。
そのマキノ的な円のモチーフは自転車や荷車の輪転、防災演習の連携プレーの輪、ボールとフープを使った舞踊団のレビューへと変奏され、轟夕起子のデングリ返し、
そして回転の舞へと連なっていく。
あるいは、吊り輪運動、時計の振り子、箒掃き、手押しの放水機、ラジオ体操からススキの穂まで、「揺れる」運動も随所で画面にリズムをつける。
アクションは視覚と歌謡に留まらない。演者の交わす対話の響きが非常にリズミカルでいい。
とぼけていながら歯切れが良い。台詞が優れたアクションとして機能している。
轟夕起子の笑顔と面、その回転と疾走が短く繋がれていくラストの情感。
母親の悲哀を直截に見せた木下監督の『陸軍』以上に、その精一杯の笑顔は胸に迫る。