1.このシリーズが素晴らしいのは、人生のある時期の普遍的な感情を思い起こさせてくれること。しかも、「アメリカンパイ」(意訳すると「こんにゃく」か、古いか)というタイトルがそうであるように「あるある」ギャグの羅列に終始している風でありながら、しかししっかりと映画としてみせてくれること。そしてすべての登場人物たちに向ける視線が優しいこと。■例えば、スティフラー弟に待ちぼうけを食った少女が川床でぽつんと座る、そのシーンはやがて時を経過して、夕暮れから夜へとその光を変えていく。このロングショットの素晴らしさ。あるいは、パーティーに加わらず一人楽器の練習をしている少女、窓越しに彼女を捉えたほんの短いロングショット(この後で「オーボエ挿入」ギャグに変わってしまうのだけれど)。あるいは、スティフラー弟と少女が並んで横たわっている俯瞰ショット。二人の感情が高まっていくのをじっとみつめる長回しの素晴らしさ。■もちろん、ギャグの運びは単調だし、ストーリーは行き当たりばったりではあるけれど、そんなことはどうでもいい。まるで登場人物たちのすべてを愛しているかのように、彼ら彼女らをささやかに見守り続ける映画がそこにあるのだ。そしてラストでは、アメリカ映画ではどんなことだって起こる、その素晴らしさを満喫することができる。■監督はスティーブ・ラッシュ。「キャント・バイ・ミー・ラブ」でもオタクたちに優しい目を向けていた&古典的な技を身につけた手堅い人。もっとがんばってほしいんだけれど。■ちなみに、アリエル・ケベルという新人さんが素晴らしくよい。アリソン・ハニガンを超えアメパイ史上最高の萌え系。ファンになった。がんばってほしい。ジェシカ・アルバによく似てるが。