26.それっぽい音楽がそれっぽいタイミングで挿入されるときの、気恥ずかしさ、とでもいうのか、かえってしっくり来ないものがあり、この作品もその点で、悪い意味での「メロドラマ」になっちゃってる面が、あります。それでもこれが、主人公の境遇を代弁する音楽なんだよ、ということなのか、それとも、冒頭から陰惨な雰囲気が漂うこの映画、しかし一方で主人公が内面に閉じこもるような晦渋さも含んだこの映画を、「いえ、庶民向けの作品なんです」と中和しようとしているのか。もしももしも後者だったりしたら、映画の作り手が、映画を見る側のことを信用していない、ということにもなるのだけど。まあ確かに、我々一般の見る側が、作り手に信用してもらえるような反応を映画に対して示せていないのも事実かもしれない・・・。 見ての通り、こんなわかりやすい音楽を付けなくったって、難解な作品でも何でもないし、主人公の孤独を描いたこの作品にはむしろ、「音楽」よりも「静寂」の方が雄弁だったのでは、とも感じます。 主人公の孤独。 主人公だけじゃないんですね。夫を亡くして一人で子育てをするあの若い母親も、孤独を感じさせる。障がいをかかえたあの浮浪者ももちろん、そう。 アパルトヘイト後、アフリカ系の人たちの間でも貧富の差が広がり、主人公のようにスラム街に住む者もいれば、中には豪邸に住む者もいるのだけど、しかしいくら物質的に満たされているとは言え事件に巻き込まれ生活を根底から覆されてしまった夫婦にも、孤独の色が滲み出る。 そんな中で心の灯となるのが、赤ちゃんの存在。それはかつての自分の姿でもあって、とにかく、何とかしてやりたい。赤ちゃんは赤ちゃんなりに、オシメが濡れたり腹が減ったりすれば泣いて、生きていくツラさを抱えているんだけど、まだこの世間のツラさというものに接していない純粋さが、ある。どうやって育てればいいのかわからないし、自分と同じような生活をさせていればいずれはかつての自分のように、帰る家もなく土管で生活することになるのかもしれないけれども。かつて自分がいた土管には、今は別の子供がいて、同じような境遇が繰り返されていく。 主人公が出会い、不器用ながらもそれまでの無軌道な日常から変化させるキッカケとなるこの赤ちゃん、映画の中でその表情や仕草がうまく捉えられ、活きています。主人公はこの赤ちゃんを紙袋に入れて運ぶなど、やってることは最後までメチャクチャなんですが、不器用なりの接し方の中から、「何とかしてやりたい」という気持ちが浮かんできて。 その気持ちを主人公が表情に逐一出しちゃうのが、これもメロドラマとしてのこの作品の弱さ、のようにも思いつつ。しかしその表情の変化は控え目であって、彼の孤独を感じさせるのを妨げる程のものではなく、むしろ他者と接点を持つことで、その接点を探るような彼の視線の不器用さが、逆に孤独を際立たせているようにも感じます。 主人公を追う二人の刑事は、白人とアフリカ系とのコンビ。彼らもまた、何となく孤独に見えてくるのですが、彼らにはこの後、何が、できるのか。 【鱗歌】さん [インターネット(字幕)] 7点(2024-12-01 07:36:10) |
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24.環境って大事だねって映画。赤ちゃんが悲惨(笑) 【とま】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2013-10-15 23:17:22) |
23.子供との触れ合いによって悪党が人間性を取り戻すというベタ中のベタとも言える内容なのですが、変な小細工に走らず王道を通した点は良かったと思います。さらには、チンピラと赤ちゃんの接点の持ち方も非常に現実的で好感を持ちました。赤ちゃんの世話は基本的に近所のシングルマザーに任せっきりで、ツォツィは最後まで赤ちゃんに馴染まないのです。ご存知の通り赤ちゃんの世話は本当に大変で、何も知らないチンピラが見よう見まねで出来るものではありません。そういう現実を踏まえた本作の構成には、「なるほどな」と感心させられました。ツォツィはこの赤ちゃんに愛着を覚えたのではなく、赤ちゃんという異質な存在に触れたことで物事の見方が変わり、そのことが彼の人間性に影響を与えたに過ぎません。この映画はそういう微妙な温度感をうまく表現できており、全体としてはベタな構造をとりながらも独自性を打ち出すことに成功しています。。。 ただし、問題もあります。多くの方が指摘されていますが、そもそもツォツィが赤ん坊を連れ帰った動機が不明確だし、彼を援助することとなるシングルマザーの心境も不自然です。彼女も母親なのだから、我が子を誘拐された母親の辛さは痛いほどわかるはず。ならば一刻も早く赤ん坊を母親の元に返そうと考えるはずなのですが、彼女は数日にも渡って赤ん坊を手元に置いてしまいます。さらには、ツォツィとギャング仲間の関係も意外なほどサラっと流されていましたが、過去の自分と決別することが本作のテーマなのだから、かつての社会とどう折り合いをつけるのかという点も本作の重要なファクターだったはず。その他、赤ん坊を奪われた夫婦のドラマや、ツォツィに迫る警察の捜査網など、多くの要素が省略されています。ドラマの視点を分散させないようムダを省いた構成とした監督の意図は理解できるのですが、全体としては描写が不足しているように感じます。枝葉の部分にこだわることで核となるドラマが引き立つということもあるわけで、この点について本作はバッサリやりすぎたように思います。 【ザ・チャンバラ】さん [DVD(吹替)] 5点(2013-03-18 00:52:10) (良:1票) |
22.絶望的な無知、善悪の判断さえつかない主人公 誘拐してしまった赤ん坊 車いすの障害者 乳をくれるシングルマザー によって人として生き始める。 【東京ロッキー】さん [DVD(字幕)] 8点(2012-10-23 17:55:10) |
21.設定は抜群に面白いのに、主人公の人物描写が圧倒的に不足している。 今現在の生活環境だけをひたすら見せられても、彼の内面性などわかるはずがない。 そのため、その後の彼の行動にもまったく説得力を感じることができなかった。 「ふ~ん、人間らしい一面があったんだね」程度。演出は悪くないんだけど、 ドラマとしては底が浅く、残念ながら感動とまではいきませんでした。 【MAHITO】さん [DVD(字幕)] 4点(2011-08-01 11:41:08) (良:1票) |
20.シティーオブゴッドに並ぶような、生々しい現実が描かれています。かなりナイスな映画だと思います。 【トメ吉】さん [DVD(字幕)] 7点(2011-05-09 20:24:51) |
19.南アフリカという異色の舞台で、貧民街や土管暮らしなど、 貧しさを描いたストーリーを扱ってはいるものの、 映画を形作っている技巧はきわめて現代的なもので、 そこには南アフリカならではを感じさせる、素朴さ、天然さ、土着感、 意外性に富んだディテール、などのようなものがいまひとつ感じられず、 その点ではかなり期待外れな映画だった。 現地人の手によらない、英国人のフィルターを通した世界を見せられているような気分になった。 これでは場所と人種が変わっただけで、訴えたいものもなく技巧に走るばかりの、 いくらでもあるような人工くさいハリウッドドラマと大差ないのではないか。 【且】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2009-09-07 23:17:36) |
18.題材は悪くないのに、展開が乱暴すぎて気持ちの持って行き場が無い。不良少年の改心を描くのかと思ったが単なる行き当たりばったりの行動という気もするし、その幼さを許すには既に犯した罪が重すぎるし。豊かな国では性善説がもはや成り立たず、生活苦とは無関係に我が子を殺す母親もいるわけだが、貧しい国だからこそ心の品性は失わずにいようというメッセージなのか。セリフ無しで感情の変化を表現できる主演の若者の演技力はなかなかすごいと思った。 【lady wolf】さん [ブルーレイ(字幕)] 5点(2009-07-23 14:26:55) |
【すたーちゃいるど】さん [DVD(字幕)] 5点(2009-06-03 13:32:49) |
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16.雰囲気は引き込ませるものがある.主人公が赤ん坊を育てる気持ちになる心理描写が欲しい. 【noji】さん [地上波(字幕)] 4点(2009-05-08 04:53:36) |
15.微妙ですね。少年は犯罪者だし、子供を両親から奪っているわけだし。話も中途半端な終わり方だと思います。思ったほど起伏がなかったという印象です。 【たかちゃん】さん [DVD(字幕)] 5点(2009-04-24 16:15:29) |
14.倫理とかを履き違えていてイラっとくるところもありましたが、それも監督の意図なんでしょうね。偶然会った赤ん坊の母親が印象に残っています。それと、ラストは劇場版がベストだと思います。 【色鉛筆】さん [DVD(字幕)] 5点(2009-03-24 22:22:41) |
13.まーまーの映画かと思います。 生まれや環境のために不良となった少年が、誤って赤ん坊を誘拐してしまった事による心情的な変化を描いています。 母親の子どもに対する無償の愛の深さに、不良少年は心打たれていくって物語(だと思う)。 素材は悪くないと思うんですが、なんとなく物語がぶつ切れ感があり、掴み辛い。人によって感じるところがだいぶ違うんじゃないかな? 【ぬーとん】さん [DVD(字幕)] 6点(2009-01-02 02:34:17) |
12.世界最悪の犯罪都市といわれるヨハネスブルグ。昼間でも殺人・強盗は日常的。赤信号でも車を止めるとギャングに襲われることがあるので事故の恐れがなければ停止しないのが常識であるという、日本人には想像も出来ないような国である。そのスラム街で育った子供達にとって犯罪は身近なものである。ツォツィも根っからの悪ではなく、そういった環境が影響していたのがよくわかる。罪を犯した事は悪い事には違いないけど、彼らだけを責める事は出来ない根深い問題だと感じる。 【茶畑】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-09-09 23:31:52) |
11.やたら今どきな音楽が垂れ流されるが、お話は古臭い。貧困が生み出す諸悪という今さらな図式を声高々に謳いあげているにすぎない。それでも赤ちゃんの可愛らしさは世界共通にして不変なのでその無垢なるものに癒され、突き動かされる悪童の行動を見守ってゆくことは、ありきたりであっても心地悪いということはない。むしろオーソドックスな展開を評価したいくらい。だからこそMTV風な音楽が鬱陶しい。あと、この映画の評とは関係ないけど、これを観て一番思ったのが、非道な犯罪者が赤ちゃんに心動かされるというお話自体が日本じゃ成り立たなくなっているということ。犯罪者がうるさいからと赤ちゃんを床に叩きつけるなんてことが現実に起こっている国。この作品によって、日本が病んだ国なのだと思い知らされたような気がする。 【R&A】さん [DVD(字幕)] 5点(2008-06-26 13:53:09) |
10.ツォツィがラストで見せた表情。優しくて悲しげな顔は、見ててホント辛いものがありました。 【ライトニングボルト】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-06-10 16:00:37) |
9.「遠い夜明け」からウン十年・・・。 白人の警官が裕福な黒人の女性に「奥さん!下がってください!危険です」なんて低姿勢になってることにちょっと、時代を感じた。でも主人公とそのグループの貧しさ・土管で暮らす10歳にもみたない子どもたちの多さも現実の南アなんですね。 土管に暮らす少年少女が助け合って・明るく暮らしている様子は救いだったが、ツォツォイが悪くなったように悪い社会に組み込まれて行ってしまうのかな・・・。赤ん坊を育てている若い未亡人が優しく包容力があり大人ですね・彼女が色んな人を救った話だと思いました。 【グレース】さん [DVD(吹替)] 7点(2008-05-19 17:02:16) |
【Yoshi】さん [DVD(字幕)] 5点(2008-03-22 08:32:02) |
7.作りは凄く良いと思うんですが、どうにも90分では尺が足りていない感じがしました。主人公の背景や感情の変化の経緯などの描写が不十分で、主人公に感情移入させることができていないように思えました。もう少し丁寧さがあれば傑作になりえたかと。 【すべから】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-02-22 14:26:42) |