1.この作品の監督は、エッジの利いた映画を見なれている人よりも
あまり映画を見にこない年配の人やお子さんを念頭に置いたらしい。
そして、学校の講堂で上映されるような作品にしたかったのだという。
本人が言っていたのだから間違いないだろう。
ならばこの映画は狙い通りだ。過ぎし日の給食の味がする。
これといった工夫もひねりもなく、戦争末期、最後の防衛ラインを死守しようとする日本の潜水艦と(かなり装備も悪く相手の艦を撃墜するなんてまれだったらしい)
アメリカの駆逐艦の戦いを描いているのだが
乗り込み員も艦長も若く、重量感がない代わり
閉塞してはいるのにどこかから光がさしているようにも感じる、そんなちょっとさわやかな艦内である。
戦いの攻防そのものも正攻法に描かれ破たんはないが
小道具のハモニカとか、艦長と親友の妹のロマンスとか
そういう大事なはずの枝葉が出てくると面倒臭くなってくる。脚本に工夫がなさ過ぎて、次にこういうだろうなと思ったら言ったか、みたいな会話で終始するのだ。
でも、講堂で上映する映画としてはこれでいいのか。
いまどきこれほど奇をてらわない戦争映画も珍しいけれど
冒頭と最後のつくりの弱さと北川景子のあり得ない演技を除けば
これはこれでよかろうという気にもなる。
故人の犠牲の尊さとか、戦争の悲惨さとか必要性とか当時の人々の勇気と正義感とか
そういう余計な重力がかなり軽かっただけでもまあセンスはいい。抑制って簡単なようで難しいからね。
見ていて今更驚くのは、本当にあんな狭い閉塞空間で、しかも艦長が弱冠25,6で(モデルがその年)少ない酸素で海底に潜みながら正気で戦った人々がいたという事実だ。今尊敬する人が周りにいないので誰か尊敬したいのだという人にはお勧めかな。
刺激がないので暇つぶしにはならないよ。