1.なるほど、シリアス路線で来ましたか。
原作の1巻の最初のエピソードの重要な部分だけをクローズアップして脚色し、より膨らませて一本の映画としてはいる。しかし、これだけではいまいち原作の持つ魅力が伝わりにくいのではないかと感じる。原作ではその事件を解決するまでに色々寄り道があり、他にも登場人物が居たりするのだが、ばっさりカットしてしまっている。まあそれだけならいいのだが、本筋はあくまで原作通りに進もうとするので辻褄合わせの為に少々無理矢理な展開が見られる。栞子さんが本に纏わる色々な事件を解決するというのが原作の魅力であり楽しいのに、全然そんな活躍の場面が無いのも残念。
また、栞子さんを演じた黒木華については文句の付けようがないはまり具合だったと思うが、野村周平演じる五浦が全く魅力のないキャラクターになっていて残念だった。まず体格からして原作のイメージと違うし、その行動が軽薄な上全く役に立たない(笑)
原作では栞子さんとの淡い恋の芽生えを感じる微妙な関係が魅力だったが、この映画においてはそういう気配など微塵も感じられない。栞子さんも若干引いてたと思うよ。
またいつものように原作がー原作がーと言っておりますが、良かった点も挙げておかなければなるまい。それは、原作では深く描かれない五浦の祖母の若い頃の話をじっくり丁寧に描いていた事だ。夏帆と東出の演技もとても良くて、作品に深みを与えていたと思うわ。あとは、舞台である鎌倉のロケーションがとても美しく撮られていた事くらいかなぁ。全体の雰囲気はとても良い。