308.「いや激突しとらんやないかい!」というのが定番のツッコミであるこの映画。
まあ原題は決闘とか一騎討ちの意味だから、この場合の「激突」っていうのはスポーツ興行でいうところの「激突!因縁のなんとか対なんとか戦」みたいなノリでつけたんでしょう。
当時の映画配給会社はそういう感じの人が多かったってことなんですかね。
原作は数十ページの短編。
それをテレフィーチャーとは言え一時間半近くに伸ばしているので少々間延びした所が感じられるのは仕方がない。
しかもCMをところどころまたぐことを前提にして作られていると考えればサスペンスを維持するのは難しいと思うのは普通でしょう。
日曜洋画劇場で放映したときは二時間枠だったのでCM明けごとに数分ぶん巻き戻していたくらいだし。
しかし見てる側が少しだれそうになると姿を見せない相手が異常な行動をエスカレートさせたり、主人公の心理が追い詰められるアクシデントが次々と発生したりして緊張がますます膨れ上がるようにつくられています。
まさに緊張と緩和。
敵役の強さをインフレさせて読ませるバトルマンガの論理ですね。この辺りはうまいです。
だからご家庭のテレビでも最後までハラハラしながら見られたのです。
スピルバーグはこの作品の成功を元手についに劇場用映画「ジョーズ」で大ヒットをとばし、以後の大活躍につなげます。
ハリウッド映画が斜陽と言われた時期にこういう人が現れてくるというところ、歴史の巡り合わせの面白いところですね。
ネタバレはしたくないので(いやしてないか?)内容については触れないでおきますが、どんな異常者が出る映画を見ても「いや、こんな人間は本当はいないから」と言っていた父親もこの映画だけは「うーん」と唸って見ていました。
父は仕事で自動車を毎日使っている人間でしたから。
脇道へ逸れることができない高速道路で煽り運転にあったことがある人だったら本当に恐怖の感じられる映画だと思います。
日頃自動車を使っていない人にとってはちょっとピンとこないところがあるかもしれないですが。
何人もの人が死ぬけれども「実際はこんなことないよね」と思って見てられるホラー映画ではなく、明日現実に自分に降りかかってくるかもしれない恐怖を描いた映画です。
しかもそれを啓蒙や注意喚起みたいな交通安全特集みたいなものにせず、純粋な恐怖映画として作ったところ。
スピルバーグさんブレないですね。