90.《ネタバレ》 “In Her Shoes”『彼女の立場』。劇中のヒールの印象的な使い方とタイトルがマッチしてます。
余談だけど、PCでみんシネの◆検索ウィンドウ◆の検索欄を見ると、何故か『イン・ハー・シューズ』がデフォで入ってます。なんでだろ?私だけ?
『メリーに首ったけ』みたいなコメディだと思って観たから、案外真面目な内容に結構衝撃を受けました。
ふらふらとその日暮らしの遊び人マギーと、生活の安定と引き換えに弾けた生き方ができない堅ぶつローズの姉妹。
一見マギーのほうが楽しくて幸せそうに思えたけど、たった1日飼っただけの犬“ハニーバン”の思い出が忘れられないところから、空っぽのまま成長したんだろう。テレビの2次審査でセリフが読めなくて追い込まれるときの辛そうな表情が妙にリアル。
ローズのような安定生活“だけ”の人。上司ジムの気まぐれに利用される“だけ”の人生。シカゴにサイモンと行かせる時点で脈ナシなんだけど、そんな薄い縁にすがるほど追い込まれてるローズ。
二人がケンカ別れして、離れ離れになる。意気投合して2人の心が繋がっている時は1つのカメラにツーショットで収まり、言い争いをする時はそれぞれワンショットでギスギスした空気を演出するなど、結構計算された映画です。
姉妹の関係から今後の生き方まで、自分の力で人生を変えていく物語ですよね。お互いに新しい生き方を始めると、今まで意識していなかった“彼女の立場”が徐々に入り込んでくる。弁護士事務所を辞めて活き活きとその日暮らしを始めるローズに、“元気なシニアの施設”で得意分野をビジネスに変えていくマギー。何かどっちも『今までより良い』生き方に思えます。
アノ階段を犬と一緒に駆け上がるローズ。教授との読書で、詩の意味を理解したときのマギー。人生が変わる爽快感が伝わってきます。
もう一人の重要人物、祖母のエラ。幼いときに母親を亡くしている二人にとって、本当の母親代わりとなる人物。そして娘にしてしまった仕打ちをずっと後悔して生きてきた過去。自分の娘がどんな最後を迎えたのか。孫の口から語られる真実。ここに来てようやく理解できた娘婿の感情。
年老いた老婆だって人生を再構築する事ができる。壊れたまま終わるはずだった、娘婿マイケルとの再会。地味だけど良い演出でした。