2.森繁久彌が亡くなってから早いものでもう八ヶ月が過ぎ、何だかんだとしているうちにもう1年が直ぐそこまで来ようとしている。前作から八年という月日の長さをさほど感じないほどここでも主演の二人、森繁久彌と淡島千景の名コンビが絶妙のコンビ(演技力)で見せる。見せる=魅せると言っても良いほど息がぴったしなのは流石である。話そのものは前作よりも喜劇的な要素が多く、映画としての完成度、出来栄えも前作よりは落ちる。それでも日本映画界の歴史において、少なくとも名優五人の中に必ず入れたい。入るであろう森繁久彌の駄目な男でありながらもその駄目ぷりが憎めない。そんな男を演じさせたら渥美清と並ぶこれぞ名優の名優たる名演技の前にはただただ頭が下がる。前作にはなかった。居なかった喜劇俳優である「社長シリーズ」や「駅前シリーズ」などの森繁久彌を語る上で絶対に避けて通れないシリーズでも共演、更に川島雄三監督の傑作「喜劇・とんかつ一代」でも見事な名喜劇ぶりを見せてくれている三木のり平が見られるというだけでも私には何だかとても嬉しく思えてならない。映画そのものは前作の方が上であることは見た人なら必ず解る。だから私も前作に8点付けてる者としては今作は7点である。しつこいようだけど、森繁久彌と三木のり平が一緒の作品に出ている。これだけで観て良かった。はっきり言えば前作にあった喜劇の中にも感じられるような作品、例えれば川島雄三監督の作品を見ているような何とも言えないしみじみした味わいが影を潜めているし、他にも不満もあるものの、とにかく何度も何度も言うように森繁久彌と三木のり平が同じ映画の中にいることが私には大きいのである。改めて森繁久彌と三木のり平、もう二人共この世には居ない。それでも昔の邦画が大好きな私には今はもう居なくても私の心の中では行き続けているし、それはこれからも一生変わらない。贅沢な悩みとして言わせて貰えれば、ここにもう一人、フランキー堺がいればと思ってしまう。「社長シリーズ」「駅前シリーズ」以外でももっともっとフランキー堺も入れての三人共演の映画が沢山、観たいし、日本映画は撮って欲しかった。