1.《ネタバレ》 ◆初期作にあたる"感情の氷河化"三部作の最後の割にレビューが全くない。前二作に比べるとかなり地味なため致し方ないのかもしれない。◆冒頭で「銀行銃撃事件により3人が死亡し犯人は自殺する」というテロップが流れる。如何にしてこの事件が起こったのか興味を惹かれる。しかし、この群像劇は盛り上がりの欠いたドキュメンタリーのように、実在のニュース映像と並行的に進められる。ハネケのインタビューによると、ここでカットすべきシーンを必要以上に伸ばしているそうで、下世話なワイドショーを即物的に求める大衆の心理を逆手に取っている。◆事件が発生するも撃った青年の動機は衝動的なもので、被害者は一切映されない。不可解な事件は出涸らし同然になり、マイケル・ジャクソンの猥褻事件といった新しいニュースが陳列される。誰かが重大な事件に遭おうが、我々視聴者は他人事のように更なる消費を求める。◆無関係で無関心だからこそ、世界の悲惨な紛争地帯を眺めても当たり前すぎて何も感じられないし何も出来ない。それでこの映画は何を言いたかったのだろう? 視聴者に対する余計なお節介は後の『ファニーゲーム』に続く。