1.《ネタバレ》 東南アジア某国の独裁者(明らかにインドネシアのスカルノがモデル)がクーデターで国を追われて日本に飛来してきた。三日間滞在してその後はアメリカに亡命する予定。独裁者暗殺を狙うジャガーと言うコードネームを持つ凄腕のスナイパーと、オリンピック出場経験がある警視庁一の射撃の腕前を持つ警部が、陰謀が渦巻くなか死闘を繰り広げる! この映画の宣伝コピーを書くとなるとこんな感じでしょうか。このジャガーなるスナイパーが田宮二郎、対する警部は加山雄三というのが東宝製作らしからぬ顔合わせです。そして陰謀をめぐらす総合商社の一員として加賀まり子がミステリアスなキャラで登場、ますます東宝らしくない顔ぶれです(笑)。 B級テイストの映画にしては珍しく豪華なキャストでけっこうキレ味がいい演出でもあるので、B級特有の安っぽさはあまり気になりません。何と言ってもそこは田宮二郎のクールなカッコよさのおかげです。まるでネイティブのように流暢な英語力にはもうびっくり、出来れば彼をデューク東郷にして『ゴルゴ13』を撮って欲しかったなと思わず嘆息してしまいました。ジャノメミシンのネオンサインから狙撃するシークエンスなんて、もう完全に『ダーティハリー』を先取りしてます。 対する加山雄三は意外とアクションと言うか身体の動きが鈍重で、イメージ悪くしてます。それでも銃に対する拘りは強く出ていて、大型ストックを装着したモーゼル・ミリタリーを使って田宮二郎と対決するなんて泣かせてくれます。加山雄三が撃たれて血しぶきが派手に飛び散るシーンなんかもあって、けっこうハードです。 でも脚本上のプロット構成の弱さはどうしても眼に付きます。加山雄三が警備陣と常に行動をともにしているなんて、警察を退職して職務上の制約から解かれて先制攻撃をかけるぞ、という設定が全然生かされていません。田宮二郎にしてもアメリカ人の姐ちゃんと仲良くなったりして、ちょっと脇が甘すぎます。あの当時の悲惨な邦画製作の状況ですから、まあこれくらいで上出来だったんでしょうね。 最後に疑問、豹は英語でパンサーなのになんでジャガーとルビがつくんでしょうか(豹とジャガーは別の生き物です)?