1.《ネタバレ》 蜃気楼の浮かぶ田舎道を神妙な面持ちで歩む礼服の教師と学生達の列。そのどこか異様な風情の望遠ショットがまず印象深い。
いじめを受けている少年が登校するのを背後からカメラが縦移動で追う。通学路から学校玄関、廊下を通って教室へ。
その間、無視され、忌避され、罵られる彼に同化したカメラが我々に疎外感と痛みを直截に伝えてくる。
幾度も登場する、藤井家の仏壇の置かれた居間の空間。仏壇を前にした小出恵介と木村文乃の複雑な表情。
隣の卓袱台で精神的な危うさを見せる富田靖子と葉山奨之。
そして庭の見える窓際に座りこんでいる寡黙な永瀬正敏。その五人が一つのショット内に配置された縦構図と時間がただならぬ緊張をもたらしている。
時を経て小出と永瀬が佇むその窓際に突然降りだす夕立と稲妻に、わけもなく心を揺さぶられる。
10代から30代までを演じることを主演二人に課したことで、時間の経過とそれぞれのキャラクターの成長が鮮明となった。作り手の英断である。
時間のコントロールこそ、映画の要なのだから。それに応えた二人の芝居も素晴らしい。