112.《ネタバレ》 主人公のキャラがいい。
冒頭からクソガキどものホームレスいじめで不快指数を上げられる。
それを、主人公の刑事がクソガキの家に上がりこんでをボコボコにすることで溜飲を下げてくれる。
妹に手を出した男を苛める様子がどこかお茶目で微笑ましい。
ところが、後半になって暴力は陰惨にエスカレート。
躊躇なく銃口を敵に向ける、殺るか殺られるかの世界。
狂気と狂気がぶつかる武と白竜の対決は見応えがあった。
マワされてシャブ漬けにされた妹を射殺する主人公に凄みを感じる。
破壊願望を持って、死に向かってひた走っているかのよう。
何もかもが壊れてしまうラストに虚しさが余韻となって漂う。
ただ、ヘタレキャラの菊池を岩城の跡を継ぐ悪党にしたのはやりすぎ。
野沢尚の脚本にしては作中意味のわかりにくいシーンがあると思ったが、武が勝手に改変したようだ。
北野作品にしばしば見られる省略表現(例えば、岩城と我妻の会話の内容)のため、野沢作品とはまた違った印象を受ける。
基本的な作り方が全然違うので、ドラマツルギーに従って緻密に積み上げたものを変えられて野沢尚は相当頭に来たのではないか。
粗も見えるが、それでも初監督でこれなら大したもの。
北野カラーがちゃんと出ている。
当初は深作欣司が監督をする予定だったらしく、深作監督の『仁義なき戦い』を彷彿させるバイオレンスでもあったが、それよりも乾いたインパクトを与える。
『仁義なき戦い』は野心や欲望が渦巻いたものだったが、本作は憎悪や怒り、暴力への衝動に徹している。