14.《ネタバレ》 大抵の映画作家がそうであるように、巨匠フェリーニも晩年にはノスタルジーに惹かれてゆくようになる。そのノスタルジーがアナクロニズムの一形態に過ぎないと理解しているのもフェリーニなのです。 クリスマスのTVバラエティー特番に出演することになった、かつて“ジンジャーとフレッド”というアステア&ロジャースのコピー・ダンスで一世を風靡したアメリアとピッポ。コンビを解消して三十年ぶりに再会を果たしたふたり、ともにとっくに芸能界から足を洗っているのに人生初のTV出演、果たして往年のような息の合ったダンスを披露することは出来たのか?クリスマス特売セールの派手なポップやサイン・ボードがローマ駅周辺を埋め尽くしている冒頭シーン、やっぱフェリーニ映画はこうでなくっちゃいけません。彼は心底ローマという魔都を愛していたので、これは彼独特のローマに対する愛情表現だと思います。彼が嫌っていたのは当時すでに映画産業を衰退させていたTV業界で、アメリアとピッポが出演する俗悪なバラエティー番組をつうじてTVカルチャーをコケにしています。出演者は“ジンジャーとフレッド”も含めたそっくりさん芸人と世間を騒がせたゴシップ当事者たち、でもド派手で騒々しい演出はまるでサーカスの公演を見せられているような感じ。そう、フェリーニは「TVなんてしょせん電波サーカスだよ」と喝破しているんです。 マストロヤンニとジュリエッタ・マッシーナはこれが最初で最後の共演ですが、どちらも実年齢に相応しいふけ演技、でも年老いた色男と可愛いおばあちゃんが絶妙でさすが名優同士です。二人の駅での別れのシーン、「アメリア悪いが送らないよ、出てゆく汽車は苦手だ」というマストロヤンニのセリフ、なんか『ひまわり』の有名なシーンの楽屋オチみたいで洒落ていました。 【S&S】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2022-10-28 22:36:52) |
《改行表示》13.《ネタバレ》 また多分に監督一流のシッチャカメッチャカではあるのですが、本質的にはいわゆる巷の巨匠さん達が年取ってからつくりたがる様な懐古的なアレですよね。ただ、例えば最近の『男と女 人生最良の日々』の二人ってのはどっちも恐らく90絡みなのに対して、今作の二人(コッチも多分にフェリーニ映画の印象が強いカップルながら共演は実は初だとか)は精々60チョイ過ぎくらいで、コレはつまり「健康寿命が延びたんだなあ…」というコトかなと思いました(個人的にはある意味コッチの方が=コレくらいの歳で演る方がイイかもな、なんて)。 まあ、だからこそやはりソコで浮かび上がって来るのはつくり手の「本質」とゆーか、今作だってモ~ただ「人生はお祭りだ」という映画でしかないのですよね。流れやシーン自体の内容は(比較的には)分かり易いですが、ソレ以上の意味はほぼほぼ無いって作品だと思いますし、ゆーてソコまでコミカルに笑えたりするワケでもねーのですよ。そして、ごく陰キャな私の個人的な事情としても、やっぱコレってまたごく「陽キャ」な価値観だな、ともね(誤解を恐れずに言えば、正直少しだけ肌に合わないな、と)。私がより好みなのはまだ確実に『男と女 人生最良の日々』とかの方ではあるのですね。 でも、そんなお祭りみたいな人生のオモチャ箱の中に分量自体は決して多くもないものの、やはり主演二人のシーンのそれぞれはどれも好かったと思いますね(ラストのショーもその他愛無さも含めて非常に暖かい気持ちで観れました)。ジュリエッタも変わらずキュートでしたが、やっぱ兎に角マストロヤンニは素敵すぎました。このハゲ方でこんなに素敵な人って他に居るの?とでも言いますかね。 【Yuki2Invy】さん [DVD(字幕)] 6点(2022-06-29 12:59:40) |
12.イタリアに偏見を持ってしまいそうなゴチャゴチャで喧しい世界観にウンザリ。苦手な監督のワケワカメ度は何時もよりマシで何とか完走。泥沼に咲く蓮の花のようなジュリエッタ・マシーナ&マルチェロ・マストロヤンニに点数の全てを。ただ、動きは仕方ないにしてもアステアの頭のてっぺんからつま先まで一分の隙もない出で立ちには遠く及ばない姿が残念です。 |
11.前作で、あれ、この監督も「枯淡の境地」に入っちゃうのか、とちょっと心配させられたが、また馬鹿騒ぎの世界に帰ってきた。そりゃ『サテリコン』や『ローマ』みたいにはいきませんけど、グツグツ煮立ってる鍋みたいな感じは、やっぱり独自のもの。そして喧騒と静寂の対比がやはりポイントなの。静かなホテルの前に音楽が流れ出し、オカマが腰振って、向こうのビルのネオンが点滅しだし、『青春群像』って感じの若者たちが体を揺すって歩いてゆき、ネオンが水溜りに映り、オートバイが走ってきて…、なんてあたり。テレビ局の廊下、変なのばっかし歩いていてごった返している。とふと改修工事中のトイレみたいなところに入って、ガラーンとした白、二人っきりになると急によそよそしいような…、このシーンなんか実にいい。あるいは衆人環視のステージの上で、不意にプライベートな空間が生まれてしまう皮肉。雑駁な喧騒の中に、急に親密な静寂がポコッと生まれる。と観てるこっちもその静寂の側に加担して、永遠に停電が続けばいい、と思っちゃう。テレビ批判としては別に鋭くないのも、監督本人がこういうゴチャゴチャの世界が嫌いじゃないからだろう。芸人の哀感もの、ってことでは、初期の作品に戻ってみた感じもある。けっこう残酷な話なのに優しさを感じさせ、静寂の中に静かに閉じていく。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 8点(2010-10-26 10:02:50) |
10.《ネタバレ》 「ジンジャーとフレッド」このタイトルだけで観たい。そう思わずにはいられなくなり、借りてきた。ここ数年、以前は苦手だった。いや、苦手というよりは単なる喰わず嫌いであったミュージカル映画というものが今ではすっかり好きになった原因を私に作ってくれた二人、ジンジャー・ロジャースとフレッド・アステアへのフェリーニ監督からのオマージュ、そして、長年、私の作品を見つづけてくれているフェリーニ映画ファンへのご褒美と言える作品って感じの映画である。フェリーニ映画の中で数々の名演と印象的な姿を見せてくれているジュリエッタ・マシーナとマルチェロ・マストロヤンニの二人が憧れのミュージカルスター、ジンジャー・ロジャースとフレッド・アステアになりきって、踊る。勇気を振り絞り、踊る。よくぞ踊ってくれた。例え、ポロボロでも構わない。年老いてしまった二人だが、年齢なんて関係ない。どんなに年老いても好きなものに対する愛情、情熱は変わらずに生き続けているというものが二人の姿から見えてきて、それだけでも観て良かった。心からそう思う。フェリーニ監督らしくテレビの裏側をサーカスの如く、見せながら皮肉たっぷりに描いている。人生の厳しさと儚さ、年老いていく者の寂しさ、色んな意味でフェリーにという人は人間の持っている一面を包み隠さずに描く監督であることがこの映画を見れば解る。とにかくこれまたフェリーに監督によるフェリーに監督らしいそんな映画になっている。最後にもう一度だけ言わせて下さい。ジュリエッタ・マシーナとマルチェロ・マストロヤンニの二人に「よくぞ踊ってくれた」ジンジャー・ロジャースもフレッド・アステアも天国で二人の踊る姿を観て喜んでくれていたと思います。 【青観】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2010-07-09 20:35:16) (良:1票) |
9.《ネタバレ》 意外な事に、マルチェロ・マストロヤンニとジュリエッタ・マシーナの2人、お互いに60歳を過ぎてこれが初競演なんですね。相変わらずのちょっぴりダメ男ぶりが見事なマストロヤンニと若かりし頃の面影をこんなに残して久しぶりにスクリーンに帰ってきてくれたマシーナ。これはもう夢のような競演です。TVの特番の為一夜限りの再結成をした芸人コンビを描きながら、そこには失礼極まる態度を見せ付け、あるいは烏合の衆のような業界人やホテルの従業員、コマーシャルの洪水に汚染されたテレビや大都会・ローマがこれでもかと批判的に描かれています。そこにはフェリーニのTV界や大都会に対する思いが垣間見えます。そんな中で老いた芸人コンビが見せる誇りや素朴な人間らしさが実に美しいです。この2人の競演のどのシーンも素敵で、初競演なのに懐かしい。そんな不思議な感覚で観ていました。作品としてはちょっと中だるみする部分もありましたが、そんな事よりも役者人生も晩年にさしかかった2人の名優の本当に貴重な競演を心から楽しませてもらいました。 【とらや】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2008-12-28 01:57:22) (良:1票) |
8.比較的とっつきやすい作品だが、特筆すべきことなし。 【にじばぶ】さん [ビデオ(字幕)] 4点(2007-09-03 16:08:20) |
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《改行表示》7.《ネタバレ》 虚無、虚像入り混じるTV番組に出演する"ジンジャーとフレッド"そのものが、そっくりさんであるにも関わらず、フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースにしか見えなくなる。それ程ラストのショウのシーンは(停電のアクシデントが効いてるし)いろんな感情は頭ん中を駆け巡る感動に目頭熱くなります。やはり何気にかわいいジュリエッタ・マシーナとマルチェロ・マストロヤンニの時にコミカルで時に切実な演技が素晴らしい。もう一緒に踊ることは無いという別れのシーンの切なさと言ったら!何がホンモノで何がニセモノか、答えは自分たちの心の中にある。 【よし坊】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2006-06-11 11:13:24) |
《改行表示》6.《ネタバレ》 非常に心温まる映画でした。 しかし、ジュリエッタ・マシーナは年取っても雰囲気や存在感が全然変わらないですね。本当に素敵な女優さんだと思いました。そして、マルチェロ・マストロヤンニがこれまた哀愁漂う初老の男を見事に演じています。 しかし、テレビの世界が本当に意地が悪いくらい薄っぺらでいい加減な世界として描かれています。そして、いろんなそっくりさんや奇人変人がたくさん出てきますのでその人たちを見てるだけで飽きませんでした。やはりあの80年代の軽薄さっていうのは半端ないですね 【TM】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2006-04-16 21:47:54) |
5.やっぱり、ジュリエッタ・マシーナが肌に合わなんで、どうしても点数が上がって来ない。 内容はまずまずで、停電してからは少しばかりグッと来るものもあるんだが、ジュリエッタ・マシーナが受けつけない。以前から好きになれないジュリエッタ・マシーナなんだが、30年前40年前とまったく同じ雰囲気のままで、延々と自分と肌が合わないところが、なんだか凄い。顔や体型も、道や崖やカリビアノ夜のころと、ほとんど変わってないんじゃないだろうか。 【永遠】さん [CS・衛星(字幕)] 3点(2005-07-07 08:31:06) |
4.鏡越しに見るタキシード姿のフレッドの、そのあまりの美しさに泣けました。かつて愛した女の前で、もう1度気取って見せるポーズ。愛おしく切ない男の強がり。別れ際、思わず汽笛の音で引き止めるフレッドに、鞄を置いてひらりと手を振るジンジャーのいさぎよさにも泣けました。2人の戻る場所は、もう2度と一緒になることはないんだな、と。人は思い出だけでは生きていけないけれど、思い出があればきっと大丈夫なんですよね。名優2人の見事なタップに心から敬意を表します。 【showrio】さん 9点(2004-12-16 01:02:35) (良:2票) |
3.フェリーニの後期の作品。全盛期に比べれば落ちていると思うがそれでもフェリーニを感じさせてくれる作品。ジュリエッタ・マシーナとマルチェロ・マストロヤンニの共演だけでも充分です。堕落したテレビ社会に対するアンチテーゼはみてとれるし奇妙な出演陣はいかにもという感じです。 【たましろ】さん 8点(2004-01-28 22:54:41) |
【虎尾】さん 6点(2003-12-13 01:21:08) |
1.年をとるということは、現実なんだなあと思わせてくれた映画でした。「田舎の日曜日」「八月の鯨」より、現実っぽくないのに生々しく感じました。 【omut】さん 6点(2003-09-10 01:29:11) |