4.《ネタバレ》 本屋大賞を受賞した原作は未読。本作について“語る”のは非常に難しい作品である。「とりあえず観てみろ」という言葉しか出てこない作品だ。
観る者によって感想はマチマチだろう。「人間の命の重さを説いたヒューマンドラマ」と捉えることもできる、「ガキたちに復讐する爽快なエンターテイメント作品」と捉えることもできる。解釈度が“自由”であり、観る人それぞれの心に何かを刻み付けた中島哲也監督の自在な手腕が発揮された傑作といえる。
「人間の命は脆くて軽いが非常に重いもの」「人を殺す際には、その人を愛する誰かがいることを考えてみろ」ということを教えるための森口先生による授業だったのではないかと感じたが、『なんてね』という言葉一つで引っくり返している。
結局「ガキたちと同類ではないか」とも感じてしまう一言だ。
確かに大人だろうが、子どもだろうが、人間である以上、変わりはないのかもしれない。クラスメートでも恋人でも母親でも誰かに自分を認めて欲しいという衝動、暇つぶしに誰かを傷つけたくなる衝動、復讐なんてしたくないけど復讐せざるを得ないという衝動、そういう短絡的で自己中心的な感情に支配され、人間は愚かな行動を走ってしまうものかもしれない。人間はバカで単純で弱くて脆いもの、悲しいけどそれが人間ということをも感じさせてくれる。人間というものの本質を感じさせてくれる点を評価したい。しかし、松たか子が泣くシーンを描くことで、罪の意識を感じ、人の心の痛みを知らないガキとは根本的に違うということだけは分かるようになっている。それでも溢れる感情を止めることはできないのだろう。
「パコと~」の際には、各キャラクターに感情移入できない点が気に入らなかった。本作も同様に感情移入することはできないが、感情移入できないことにより、本作には面白い効果を生んでいると思う。得たいの知れないという不気味な恐怖を感じるとともに、客観的な傍観者としてこの復讐劇をエンターテイメント感覚で楽しむことができる。中島監督が計算したかどうかは分からないが、非常に巧妙な仕掛けとなっている。
本作は問題作ではあるが、“人間の命の重さ”を真正面から捉えるよりも、本作のような切り口で語った方が反面教師的な役割を担えると思われる。R15指定作品だが、逆に子どもたちに見せてもよいのではないか。“何か”を感じ取ってくれることへの期待や希望はあるはずだ。