2.《ネタバレ》 限りなく美しき中二病映画。およそ陰惨で鬱にしかならないような物語を、さすがの中島監督、とても魅力的な人々の映画として彩ってしまいます。互いに人を見下す人間達が織り成す、復讐心、偏見、いじめ、悪意の物語。いろんな負の感情を持った、人として成長できていない人々(数少ない大人の登場人物も含めて)を憎悪すべき対象とはせず、弱く儚い者として繊細な映像で表現してゆきます。連鎖してゆく悲劇が、流される血が、不気味な風景が、人の弱さをポジティブに見つめたアートのように組みあがって、むしろ私にとっては心地良いものにすら感じられました。それは個人的に、今年は父を亡くし、愛猫を亡くし、遺産相続で肉親といがみ合いという、負のただ中に生きているがゆえなのかもしれませんが。でも、この映画にそんな心地良さを誰でも、たとえ少しでもどこかしらに感じてしまうんじゃないかと思います。負の快感が全編に散りばめてありますから。受け手に負の感情を気付かせ、そこを肯定的に捉えるこの映画、タッチはとても冷たいのに人には暖かいという不思議な感じ。映像表現1つでモノの価値観をガラリと変えてしまえるんだよ、って中島監督の術中に見事にハマってしまったのでした。【追記】お知り合いや映画にうるさい人達から「これは映画じゃない」という批判をよく聞きましたが、mixiやtwitter、ブログでのお兄ちゃんおねえちゃん達の理屈じゃないウケ方、受け止め方を見ると、もう「映画」が終わって「映画じゃない何か」の時代になってもいいんじゃない?「映画」ってカテゴライズに拘るのはいいとして、それを声高に人に押し付ける意味はないんじゃない?って気もしてきます。好事家向けの美術館保存型な「映画」はどっかに残っていく事でしょうしね。