10.映画のホームページに「クリントイーストウッドからの手紙」があります。名文です。そしてこの映画のすべてを語っていると思います。映画はもちろん名作です。http://wwws.warnerbros.co.jp/iwojima-movies/letter/index.html 【爆裂ダンゴ虫】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-12-22 00:07:28) |
9.イーストウッドの映画には常にイーストウッドがいた。本人が出ていなくても彼の分身がいた。前作『ミリオンダラー・ベイビー』のレビューで私は「イーストウッドはどこに行くのだろう」と書いた。現実に打ちのめされたアウトローはどこに行くのだろうと。彼は帰ってこなかった。この映画にイーストウッドはいない。それは私がずっと望んでいたことでもあった。だから作品の内容とは別のところでこのイーストウッドの到達点に感無量になった。しかし同時に寂しくもあった。この作品は英雄を否定する。英雄は作られる。映画のヒーローもまた作り物なのである。映画が現実味を帯びるにしたがいヒーローはヒーローとして存在しにくくなり、もはやイーストウッドもイーストウッドの分身も入る余地がなくなってしまった。何度も言うがそれは私が望んだものであったはずなのにとてつもなく悲しいことのように思えてならない。英雄の否定は戦争を題材としているからであって、イーストウッドの不在は偶然なのかもしれないけど、これまでの彼の映画の軌跡からするとやはり、ひとつの到達点と考えるのが自然だと思う。私の心境は複雑です。 イーストウッドの新しい映画を拍手をもって歓迎すると同時にイーストウッドの帰還を待ち望む自分がいる。 【R&A】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-12-11 13:01:32) (良:1票) |
8.《ネタバレ》 巷で話題の「硫黄島二部作」。まず、敵味方という正反対の視点からひとつの「戦争」を語るという構想は評価に値する。当時あの島で戦った人たちは、よもや後年このように映画化されるとは想像する余地すらなかっただろう。全編をとおし「戦争」という異常な状況におかれた人間の苦悩(戦場の外でのそれも含めて)をあくまでも冷静な目でとらえている。エンドクレジットで当時の実際の写真が映し出されても、大きな違和感を感じなかったことからも、その冷静な画づくりが成功していると言える。結局本作の主題は、ラストシーンに集約されるであろう。“ドク”の息子は、父の死後、英雄として祭り上げられることを受け止めて生きてきた父、そして戦友を決して見捨てない素晴らしい衛生下士官だった父のことを初めて知る。その父が実は“イギー”ら戦友をずっと心に抱えてきたこと。そしてそのことを息子に赦しを乞う場面。そしてそんな父を「誇りに思う」と抱きしめる息子。これらのシーンの圧倒的な重さに心を動かされずにはいられない。彼が人生最後に心に浮かんだのは、50年以上も前の、消えそうな命を忘れるかのように海辺ではしゃぐ戦友達だったというのは、決して虚構ではないような気がする。 【田吾作】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-12-05 12:14:23) |
7.「ミスティック・リバー」は正直ムカついたが10点出した。だが二度と見たくない映画だ。何様のつもりだと思った。しかし、その淀みのどす黒さに10点つけた。だが、ようやくにしてイーストウッドも分かってきたようだ。遅すぎるが。というか、日米戦争で2部作作るよりも、南米辺りを舞台にしたものだったら1点加算しただろう。イーストウッドには、そこまでの度胸はないらしい。少しはまともに客観視できるようになっただけでも、ほめてやる。ともあれ、911の感想がミスティックリバーだなんて幼児レベルから脱却できただけでも8点をあげてやってもいいだろう。甘すぎだが。 【解放軍2003】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-11-29 01:41:16) |
6.《ネタバレ》 たった今見てきました。主要人物が3人で、戦闘シーンもところどころに挿入されるのでいつも戦争映画で誰が誰かわからなくなる自分にはわかりやすかったと思います。第1部はアメリカ兵からの視点なのでしょうがないですが日本兵の影がちょっと薄かったかなぁと思います。アメリカ兵の気持ちも分かるが故にばたばたやられていく日本兵を見るのはとても複雑な気分でした。エンドロールに流れた硫黄島の写真で映画中のシーンを振り返る事ができ最後まで楽しめました。日本側の視点から撮った第2部に期待してます。 【srprayer】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-11-22 19:25:44) |
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5.《ネタバレ》 アホみたいな話だけど、僕はこの映画が「わからない」(「観て良かった」とは思うけど)。別に難解な話ではないけれど、もしかしたらわかりやすすぎたからこそ、「わかってない」のかな。単純に、主要の三人以外の数が多く、顔も判別できないから、というのもあるのかもしれないけれど、何つーか、安易に「わかった」フリして語りたくない、というか。とはいえ「わからない」を連発しててもしょうがないので映画の内容についてちょこっと語ると、今作では日本兵が非常に「記号的な敵」として描かれている。それが敢えてそうしているのは確かなんだと思う。多分幾つかの部分(壕内での集団自決や、日本兵の米兵に対するリンチなど)が「硫黄島からの手紙」の伏線になってて、それを観て初めてパズルのピースがカチっと合わさる、みたいなことを、イーストウッドは意図したのではないかな、と思っています。 【ぐるぐる】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-11-10 22:07:03) |
4.《ネタバレ》 今でこそ精強で知られる米海兵隊だが,アメリカ建国より古いといわれるその長い歴史の中で,その存在が重視されるようになったのは,実はここ数十年のことにすぎない。海兵隊の名を広く知らしめ,その勇猛さを人々の記憶に刻み込んだのが,この硫黄島の激戦であり,その硫黄島戦を象徴するのがあの有名な写真である。つまり,思いがけなく英雄となった若者達のあの写真は,単にアメリカの勝利だけを表現しているのではなく,「最強」の米海兵隊が実質的に誕生した瞬間を切り取ったものであるともいえる。主人公のドクは多くを語らないが,それが生来の彼のキャラクターであるから,という理由のほかに,彼が海兵隊ではなく海軍の下士官であるがゆえに,微妙な温度差を感じていたせいではないか。マイノリティであるヘイズも同様の違和感を感じていただろう。彼らが生粋の海兵隊員あるいは米人ではないことを踏まえ,イーストウッドは「彼らは戦友のために命をかけた」とモノローグに語らせる。写真に写っているのは国家でもなく,海兵隊でもなく,戦友なのだと語らせる。トルーマン大統領には会えたが,母親には会えなかったヘイズ。彼がこの戦いで得たものは何だったのか?ドクは?ギャグノンは?数万の海兵隊員や灼熱の地中に潜む日本兵達は,この戦いで何を得たのか。硫黄島では毎年日米共同の慰霊祭が催されるが,そこでは海兵隊と硫黄島守備隊は敵味方の区別無く,共に戦った者としてお互い特別の尊敬を払うという。何かのために命をかけた者達の心の奥底は,きっと当事者にしかわからないということだろう。だが,少なくとも彼らが我々に残したものはわかるのではないか。ドクの息子がそう感じたように。 |
3.《ネタバレ》 序盤の船上での一夜、曲の終わりと同時にライターの火が消えるシーン、最初はなんてオシャレなんだろうと思いましたが、すぐ後の戦闘シーンで一変します。硫黄島での戦闘シーンは、風景の灰色っぽい感じと地面にもぐりこんだ日本軍の無言の攻撃がとにかくリアルで恐怖感すら覚えました。今にして思えば、ライターは硫黄島で消えてゆく命の灯火を表現していたのではないかと思います。 その後は本国に戻った3人と硫黄島の回想の連続、ここもテンポよく見ることができましたが、終盤、3人の戦後の人生を描いていたところではちょっと作品の焦点がぼやけてしまったような気がします。 英雄として祭り上げられ、国家予算やショウビジネスに利用されていく3人の苦悩する姿、さらにはネイティヴアメリカ人に対する差別など、具体的なメッセージは何一つなかったと思います。見るものに対する問いかけ、こういう作品は嫌いではありません。 【maemae】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-11-01 18:40:47) |
2.《ネタバレ》 スピルバーグが資金集め協力したのよくわかりますね、戦争遂行のために利用される兵士の物語ですから。イーストウッドは、運命に翻弄される市井の人描くのが執念になっちゃってるみたい。たぶん原作の流れに則って、また戦史でもあり、時間の移動を除いてシナリオを極端にいじくれない制約があるはずですから、登場人物への感情移入を期待しちゃいけません。ただ「日本軍は必ずバンザイ突撃をかけてくる」という内容の台詞をどこかに挿入しておいてほしかったです。それまでの日本軍の戦い方を説明してくれるし、硫黄島の戦いがどんなに特異だったのかが第1部の段階で理解できます。それに塹壕内の暑さを現すシーンもほしかった。米軍側が感じた驚きと恐怖を散りばめておくことで第2部で腑に落ちる、ってこともあるわけですから。語り部役を絞って端的に語ったシナリオだったら良かったかな。戦闘シーンの凄まじさはライアン二等兵のほうが凄かったです。ま、戦線の組み立てかたが違うので比較してはいけないでしょう。たぶん、12月公開の第2部とセットで語るべき作品です。未公開の「硫黄島からの手紙」予告編が最後についてますので、エンドロールで立っちゃう人は我慢がまん。得点は現時点でのもので、後に変更する可能性もあり。しかし、アメリカ白人が監督する日本の戦史って観るのが怖い、米軍での栗林中将の評価は異常に高いらしいですし、大日本帝国軍人らしくない戦いを繰り広げたわけですから。 この戦闘が東京大空襲に直結し、原爆投下への布石になったことも匂わせてくれれば言うことなかったんだけど… 〈追記12/11〉必ず2作品セットで観るべきです。ということで2点加点。 【shintax】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-11-01 16:29:46) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 とてもベタな感想を持った。ともかく反戦を語られた。自分はアメリカ一国正義、イケイケ映画をイデオロギー抜きで単純に楽しむ術を持っていると思う、だが、小手先のおためごかし映画には嫌悪を感じることが間々ある。この作品はひょっとすると恐ろしく正攻法なのか。日本側から見たという「硫黄島からの手紙」を鑑賞するまで評価を留保すべきなのかもしれないが、現在、先の戦争に対し勇ましい独善的解釈を多く見かけることに対し、本当にその場所、戦場に居た人間は多くを語らないという強烈なアンチテーゼである。相手を直接見るでもなく、おそらくボタン一つで戦争が始まり、間髪入れず終わる時代である。だから尚のことこの切り口を大切に思う。 |