29.《ネタバレ》 ハーベイ・カイテルのタバコ屋は、いい味出してますな。いわゆる社会的な“勝ち組”にはなれなかったけれど、なまじな“勝ち組”ではとうていかなわない人間力を備えているって感じで魅力的です。こういう下町親分をやらせたらピカ一。 ピンポイント写真のアルバムをウイリアム・ハートの作家に見せるとき、「ゆっくり見たほうがいいと俺は思うな」と、さりげなく亡き妻エレンを見つけさせようとするところや、ホントかウソかわからないクリスマス話を語るところなど、じんわり胸に伝わってくるものがありました。いいですね、この役者。 本作の場合、あまり「意味」を「理解」しようとするのは“正しい”味わい方ではないと思われますが、「お金」と「家族」が終始強い意味合いをもっていました。黒人少年が泥棒から泥棒した例の5000ドル、泥棒→少年→(作家)→タバコ屋と“持ち主”を転々と変えていきましたが、結局、誰もただの1ドルも使わないで、可哀相なルディのところへいってます。そして、1ドルも使われずに“持ち主”が変わるたびに、 なぜか“幸せ”を生み出していく不思議! 「家族」のほうは、ルディと娘、黒人少年と自動車工になっていた父の親子関係、ルディとタバコ屋、作家と亡き妻の夫婦関係が作品のなかで一つのアヤをつくっていたように。家族関係がきわめてややこしくなった現代アメリカでも、いや、そんなアメリカだからこそ、か、やっぱり「家族」が最後の寄りしろになるのですね。 と同時に、家族でも何でもない他人同士のあいだにも家族同様、いや場合によったら家族以上の関係が築けるとも訴えているように思えました。ラストのクリスマスストーリーの逸話は、その“まとめ”として受け取れました。カイテルのタバコ屋と黒人おばあさんのクリスマスの1日、「他人」と「家族」があいまいにミックスしたような状態での幸せなひととき。作者は、ここに社会の縮図を織り込んだのでしょうか。ちなみに、最後はカメラを盗んだとしたのは、カイテル・タバコ屋のテレがあったからだと私は解釈しました。 白人黒人、若いの年寄りの、男女……いろんなセクターの登場人物を巧みに取り込み、一つの作品にまとめあげた力量は大したもんです。残念ながら、こういう作品は日本ではとうていつくることはできないだろうなあ、ということで8点也です。 【delft-Q】さん 8点(2004-10-31 01:10:30) (良:2票) |
28.タイトルの通り色々な場面でタバコをふかすシーンがありました。テレビで野球観戦をしながら吸う、タバコ屋で主人と話しながら吸う、家出した少女が18年ぶりに父と再会して吸うシーンなど、タバコを吸うという行為がいろんな場面を引き立てていたのが良かった。日本やアメリカで喫煙というものが排他的に見られる中で、この作品を作り上げたのはすごいと思う。この作品を見るとつい自分もタバコを吸いながら見てしまいました。いい映画でした。 【すごろく】さん 8点(2004-09-18 03:16:19) |
27.《ネタバレ》 スタッフロールの老婆とのエピソードは確かにいらなかったかなと思う。自分の想像では老婆がカイテルが息子ではないと悟る所の表情はもっと控えめだった。それだけが残念。でも製作者の人間に対する暖かい視線が伝わってくる良作だと思う。悪役や派手なドンパチが無くてもこれだけ人の心を打つ物語が作れるのだ。俳優のギャラはともかくとして、おそらく低予算だと思う。邦画も頑張って欲しい。 【ロイ・ニアリー】さん 8点(2004-07-27 14:53:10) |
26.こんなにゆったりとした時間を過ごせる映画は珍しいかも。タバコを通じて交わる大人たちの日常生活と会話。自分はタバコ吸わないんですが、こういうタバコの吸い方はかっこいいですね。 |
25.味のある映画っていうのかなぁ。ラストもお洒落。 【夏目】さん 8点(2004-06-13 15:43:48) |
24.タバコ呑みってなんとも言えないやんわりとした連帯感がある。他人同士でも火を貸したりするとなんか「仲間」って感じがしたり。そんな感じがここに出てくる男たちには、ある(まあ当然といえば当然なんだけど)。タバコをやめて随分経つけど、ヤニ臭い昔にちょっとだけ戻った気になれるそんな映画。 【馬飼庄蔵】さん 8点(2004-06-02 17:58:11) |
23.街かどのタバコ屋に集う人達の、それぞれの他愛もない物語が少しずつからまりあっている。そんな、どうでも良いようなことを、味わい深く、タバコの煙を交えてじっくりと描いている。ラシード少年もなかなか良いが、なんといってもハーヴェイ、カイテルでしょう。 【Andy17】さん 8点(2004-04-25 19:40:34) |
22.男の繊細な面に焦点を当てた傑作。これと言った大きな事件も起きず、淡々と流れる日常生活。その中で生まれる、男たちの細やかな部分の感情の揺れ。一つ一つのエピソードがいいのはもちろん、作品全体に流れる空気に身をゆだねたい。 【ラーション】さん 8点(2004-03-21 23:23:33) |
【あさ】さん 8点(2004-02-24 11:07:38) |
20.地味で渋くて、でもあったかい映画でした。こういう系統の作品は他に見たことがないせいか、非常に新鮮に感じました。どのエピソードも非常に日常的なんですが、その日常を生きる平凡な人達のちょっとだけドラマチックな事件とでもいった感じでしょうか。それぞれの登場人物が巧すぎるくらい絶妙に絡み合っていて、またそれぞれが本当にいいキャラを演じています。人間のさりげない優しさに触れることのできる、良い映画だと思います。 |
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19.趣のある味わい深い作品です。男達の美学とでも言うんでしょうか? 静かだけどとてもドラマティックでクリスマスシーズンには何度でも観たくなってしまいます。世の中ドンドン喫煙者に冷たくなっていきますが、「タバコ」も立派な文化なのにね。禁煙したはずなのに1本火をつけたくなっちゃうほど二人ともかっくいいです。 【としこふ】さん 8点(2003-12-25 21:48:16) |
18.すごくいい作品だと思う。毎日いろんな人が来るNYのタバコ屋さん。みんな庶民だけどそれぞれにドラマをもっていて、人ってなんかいいなと思わせた。 【yukaori】さん 8点(2003-12-08 20:57:40) |
17.ラストに使われた短編小説が好評を博したことから、ポール・オースター自身がさらに世界を広げていった作品。全体的には散漫な印象もあるのだが、やはりH・カイテルが語る最後は味わい深い。今年に入ってから禁煙をしようと考え始めたのだが、本作を見返すとその意もすぐに煙のごとく消えていってしまう・・・って、こりゃただの言い訳か。本サイトを見ている若者たちよ、タバコはこんなに素晴らしいものじゃない。手をつけないように! 【恭人】さん 8点(2003-12-02 16:56:55) |
16.ブルックリン人間交差点。 少し前、それがただのマナー違反・害悪と見なされる以前は、煙草とは酒と同じような「意味」を持つものであったと思う。心の何かを紛らわすためにあるのだ。それは孤独、虚しさ、やるせなさ、といったものだろう。毎日幸せで幸せでしょうがないやつが煙草を吸う必要はない。煙草は嗜好品ではないのだ。それは薬である。 取りあえずの処方箋でその場は煙のごとく切り抜けて、また明日もなんとか生きていく。そんな小さくて猥雑で平凡で、かつ実直で暖かくファンキーな人々の日常スケッチ。 最後のクリスマスのエピソード、最高ではあったが繰り返しは若干くどい。 【笹】さん 8点(2003-12-02 15:56:18) |
15.淡々としていて派手さは無い。しかし,何処にでもいそうな特別ではない人たちの繋がりとドラマが非常に上手く描かれている。 【北狐】さん 8点(2003-12-01 14:13:33) |
14.毎日、抱えきれないないほどのドラマを抱えた人々を受け止めてくれるのが都会の美点というものだ。ときに優しく、ときに厳しく。それはNYだけに限らないだろう。ロンドンでも、パリでも、そしてTOKYOでも。誰しもが泣いたり、怒ったりしながら毎日を生きている。きっと明日も、そんな日常を街は包みこんでくれるはず。「都会の魅力」がギッシリ詰った一本だ。 【給食係】さん 8点(2003-11-18 01:12:28) |
13.娘が泣きそうになる所と、ラストで涙が出てきました。初めのうちは淡々としてる映画だなと思ってましたが、最後にはなんか、体の奥がギュって感覚になりました。決して派手な映画ではないけど、こういうのをいい作品というんだろうなと思いました。 【ネフェルタリ】さん 8点(2003-11-14 19:37:26) |
12.“オチ無し”という印象が途中ずっとあったが、「オーギー・レンのクリスマスストーリー」のラストは効いた。お婆さんが笑顔になる一瞬前のあの表情!クリティカルですよ。参ったね、どうも。 【山岳蘭人】さん 8点(2003-11-03 19:58:59) |
11.普通に人間のごく普通の生活を斬新な切り口で描いたクリスマスに見たいドラマ。本当は10を付けたいくらいの出来だけど、前半にちょっと物足りなさが残る。 【ノマド】さん 8点(2003-11-01 13:56:32) |
10.片目の母親に、しがないタバコ屋の親父、堕落した娘、バラバラな家族を見ても、人が人を求め合っている姿に暖かいものを感じる。 どうしようもない駄目な人間たちもみんな必死で生きている 【花守湖】さん 8点(2003-10-16 19:16:25) |