8.《ネタバレ》 <超ネタバレ注意>
映画を思い返してみれば、どちらがの話が本当で、どちらがうそかというのは明確に思えます。
調査員に語った、残酷な物語こそが真実でしょう。
根拠は以下です
・成人のパイは、小説家に語る物語が「漂流」の話に向かおうとしたとき、ちょっと戸惑っている
・船が嵐にあったとき、牢に入れられていたはずのシマウマやトラが何故か外に出ている
・パイは小舟に乗って助かったときのオラウータン=母親に「きっと家族と会えるはずだ」と励ましている
・大きな体のトラが突然船の布の下から出てくるが、パイは驚いてはいない
・「トラの目を観ている時、トラの目に映る自分を観ている」とパイは言っている
・ハイエナが殺したシマウマとオラウータンの死体、トラが殺したハイエナの死体がいつの間にかに消えている
・パイのアップからカメラが深海に潜り込んでいったあと、カメラが海上に戻るとトラのアップへとつながる
・パイは調査員に残酷な物語を語るときに、本気で涙している
・パイは、小説家に物語を語ったあと、家族のことを「『猫』と子ども2人がいる」と言っている
漂流生活では、動物のフンや、腐ってしまうであろう(動物が殺された瞬間にはありましたが)死体など「嫌なもの」「汚いもの」は姿を見せません。
パイが最後に家族を「猫」と呼ぶことで、実際にいる人間を動物にたとえたことを暗に示していたのかもしれません。
パイから語られた、美しく、奇想天外な物語は、パイが望んでいたものでもあるのでしょう。