17.僕の場合「ダーティハリー」もセルジオ・レオーネとイーストウッドが組んだマカロニウェスタンも観たことないので(というより、クリント・イーストウッドの映画を観るのはこれが初めてなので)、ひょっとすると見当違いの意見かもしれないけれど、この作品はイーストウッドが自らのキャリア、すなわち西部劇のヒーロー、あるいは強い男(つまりは強いアメリカ)というイメージ(幻想)と決着をつけようとした作品ではないか、と思えた。例えばそれは、イーストウッド演じる老いたガンマンが馬になかなか乗れなかったり、銃の腕が落ちていたり、という場面、あるいは伝説のアウトロー、イングリッシュ・ボブが保安官にメタメタにのされた上に、実は過去の伝説がでっちあげであったことを暴露されてしまう場面に顕著に表れている。或いは「人を殺める」という行為に関する描写もそうだ。作品の中で彼は何度も、人を撃ち殺すことが英雄的行為でも何でもなく、ただ人の一生を「無」に返すだけのことだ、と繰り返し説く。僕はこの映画を観ながら、ジョン・レノンのことをふと思い出した。彼はビートルズ解散後に発表した「ゴッド」で「僕はプレスリーもボブ・ディランもヒトラーも信じない。神も、そしてビートルズも信じない」と歌ってファンを驚かせた。彼はこの歌で自分の中のビートルズと決別し、「もうあの楽しい頃、みんなで無邪気に夢を見ていられた頃には戻れない」と宣言することで、新たな一歩を踏み出そうとした。きっとイーストウッドも同じような気持ちだったのだと思う。この「許されざる者」はそんなジョン・レノンのソロ作品の多くと同じく、とても野暮な作品(つまり「そんなこと、わざわざはっきり言わなくてもいいじゃんかよー」と言いたくなる感じ)だと思うけど、その分、作り手の誠実さを感じる。 【ぐるぐる】さん 8点(2005-01-20 19:52:20) (良:2票) |
【★ピカリン★】さん 8点(2004-06-16 23:05:51) |
15.年老いた伝説のアウトローが、子供たちの将来のため賞金を得ようと、かつての仲間と、彼の名声に憧れる若者の誘いに乗る。町では強引に暴力で正義を強要する保安官が殺しを許さないと警戒する。賞金の魅力に惹かれて伝説的殺し屋までもが小説家を引き連れてやってくる。と、ここまでは何とも、魅力的な西部劇の設定となっている。ところが、である。年老いた主人公は久々に撃つ銃が当たらない。足腰が弱って馬にもなかなか乗れない。一人前に悪ぶる若者も、いざ人を殺してみると、途端に取り乱し、酒に逃げ、金もいらないと言い出す。伝説の殺し屋はその名声が嘘っぱちとわかる。力こそが正義と信じる保安官も市民から恐れられるだけで尊敬もされない上に、かつての仲間が殺されたことに怒った主人公に殺されてしまう。まあ、現実はこんなもんだよ、ということなのか。報道や伝聞は誇張され、美談仕立てにされ、ふんだんに嘘が盛り込まれているものだ。これが、人間が作り出す社会というものさ。誰からも憎まれる悪人が撃たれ、悪いことなど一切しないヒーローが生き残り、そして去っていく「西部劇」がここに死んだのだ。これ以降、西部劇は新たな方向性を模索して行くことになる。イーストウッドは、この作品により、自分を育ててくれた西部劇に対して見事に恩返しをしたのかもしれない。 【パセリセージ】さん [DVD(字幕)] 8点(2004-04-06 23:56:13) |
14.好きですこういう映画。最近の映画にしては派手さも無いし展開もゆっくりしてるけど、それは「重厚」という言葉に置き換えられると思います。「荒野の七人」のブリンナーのような完全無欠のヒーローも格好いいけど、老いぼれた男の生き様を見せてくれるこの映画の主人公も別の意味で格好いいです。 【アーリー】さん 8点(2004-03-02 01:06:26) |
13.元殺し屋の老いぼれガンマン、ウィリアム・マニー。この役はクリント・イーストウッド以外演じられないであろう、まさにハマリ役だ。そして最後の西部劇と言えるかもしれない。クライマックス、酒場にマニーが乗り込むシーンは思わず息を呑んだ。射撃が正確というわけでもなく、早撃ちというわけでもない。実戦においては何処まで冷静でいられるかが生と死の分かれ目なのだろう・・・なーんて思って見たりしてね。ウエスタンには珍しくいろいろ考えさせられる映画で、見るものによって感じ方も変わるでしょうね。 【カズゥー柔術】さん 8点(2004-02-29 05:32:12) |
12.《ネタバレ》 結局、許されざる者とは誰だったのか、その問いかけをしているかのような映画ですね。 銃の持込を取り締まる街の保安官リトルビルが、銃で襲ってくるウィルたちに銃で対抗するその姿なのか、昔の血が一気に上って彼らを殺しまくるウィルの姿なのか…どちらにも正義感はあると思うし、一概には言えないでしょう。 お互いが許されざる者として認めていたからこそ、争いが続く、混沌とした世界。 でもその世界や時代を全否定してても始まらないですよね。それなりのいきさつや下地があってこういうことになったんだから。キーは傷を負った娼婦に介抱されるシーンで、妻がダブったところかなぁ。 そこから一気にウィルのカウボーイ、いやガンマンとしての炎が燃え盛っていく姿が刻一刻と見てとれた気がしました。断っていた酒を普通に飲んじゃってたし、バンバン命中するようになってたし(ライフル?)。 物事には何か特別なきっかけというものが必要ですな。彼も老体からここまでパワーがみなぎるとは思ってなかったことでしょう… 西部劇にしては激しい撃ち合いもなく、スローテンポ。だからこそ心の描写に重きを置いた、見る者に考えさせる映画だと思います。 |
11.ジョン・ヒューストンの同題名映画(Theがついていないという違いはあるが)と関係無いにも程がある。今からでも遅くないから題名変えなさいって。オスカー取っちゃあ、それも無理か。イーストウッド監督主演の西部劇、確かにここには、セルジオ・レオーネの語法なども折り込まれており・・・が、先鋭的な描写にまではなっていない。「ちぇっこんなポンコツ3人組のお話に付き合わされるのかよ~」という思いもあり、正直前半は、しょうもない映画じゃないかと物足りなく思ってたんですけどねえ。イーストウッドが体調崩すあたりから、反対に、映像が力を帯び始める(ような気がする)。なかなか計算されてますな。この映画には、通常のヒーロー物みたいな、キャラvsキャラの戦いは無く、基本的に、人間vs人間の戦いが描かれる。みんな弱いのです。しかしジーン・ハックマンはこの中じゃ例外的にエキセントリック、彼のはまり役です。彼にはゼヒ日本に来て時代劇で悪代官役をやってもらいたいもんだ。そしてイーストウッドとハックマンの対決は、「人間vsキャラ」の対決でもあります。こういう映画をイーストウッドみたいな人が撮る事に意義がある・・・のでしょう、きっと。映画観る時にゃあ、過去の映画史、観る側の過去の映画体験、そういったものを切り離して観る事は、おそらく不可能ですから。 【鱗歌】さん 8点(2004-02-15 13:47:02) |
10.《ネタバレ》 なんでウィルは賞金稼ぎに行く気になったんだろう?女が切り刻まれた ことに憤りを感じて?豚が病気になって生活が苦しくて?まあ複合的な 要素があったのでしょう。昔暴れたといってもいまは馬に跨るのも一苦労の年寄り。昔の仲間に声をかけた気持ちもわかります。唯一の若者 キッドはなんと近眼。だみだこりゃという出だしで、ジーンハックマン の方が全然かっこいいわけです。これがラストに生きてすごい迫力と なります。いわゆる西部劇の文法通りの作品ではないので、娯楽作品 として見ると期待はずれですが、作品として良質な映画です。 【iris】さん 8点(2004-01-29 14:23:39) |
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9.ラストガンマン---言ってしまえば夢の無い映画だ。目にも留まらぬ早撃ちで悪役を次々と撃ち倒す、そのようなヒーロー像はこの映画によって殺されたと言っていい。善玉が悪玉を懲らしめる、西部劇の醍醐味であった「勧善懲悪」はもはや時代が許さないのだ。世の中はそんなに単純じゃない。人を殺せば罪悪感に襲われる。どんな奴だろうと死とは死である。西部劇の中でなら人殺しが許される、などということは決してないのだ。 ウィリアム(イーストウッド)は何故復讐に向ったのか。正義ではない。悪でもない。仲間の敵討ちだ。私的な理由だ。保安官だって自らの「正義感」に従ったまでだ。じゃぁ何が正義なのか。我々は何を憎めばいいのか。世の中は混沌としている。暴力と死を繰り返す人間たち、それこそが「許されざる者」である。 このような映画が製作され、しかもアカデミー賞まで受賞してしまってはかつてのような西部劇は二度と現れないだろう。この作品こそは「ラストガンマン」である。 【紅蓮天国】さん 8点(2004-01-12 15:38:41) (良:4票) |
8.ただの西部劇じゃないよ。クリント・イーストウッドかっこよすぎ。 |
【ビッケ】さん 8点(2003-07-05 17:09:47) |
6.真の「許されざるもの」は、憎しみ/悲しみ/欲望/愛…これら情動に翻弄され続ける人間の業、或いは人間そのものではあるまいか。割り切れないことは世の中に数多くある。本作は特に責任の所在が不明瞭な我が国にとってのマスト・アイテム。因みに、TV版は「カウボーイの贖罪(馬を酒場に納める)」シーンがカットされた為、唯のショボイ復讐劇に堕してしまった。これこそ「許されざる」行為だ。 【Moccoth】さん 8点(2003-06-05 22:43:05) |
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4.とてもめずらしい、スローテンポな西部劇。しかしながら「イーストウッドさん、あんた実際見てきたんかい!」と思わせる程のリアルな雰囲気に感心させられた。駆け出しの若い兄ちゃんが普通に笑える。 【3Mouth】さん 8点(2002-05-14 18:26:06) |
3.イーストウッド作品は低予算で短期間で作ろうとするので、どうしても限界が存在する。その限られた中で作られる作品がまた良かったりして。オーソドックスな西部劇を作る後継者が少なくなった現代にこの作品が登場し、それまで縁の無かったアカデミーにも受け入れられたのだろう。 【イマジン】さん 8点(2001-02-03 11:29:21) |
2.結構面白かった。敵役のジーン・ハックマンもなかなかの演技をしてたと思います。クリントも昔凄腕だったってところがよく出てました。最後の復讐までパッとしなかったけど、復讐で昔の彼に戻ったとような気がします。 【りえ】さん 8点(2001-01-31 22:55:33) |
【跡雷】さん 8点(2000-05-11 16:00:53) |