12.《ネタバレ》 ゲバラについては詳しくは知らないが、ドキュメンタリーを見たことがあるので、「名前」を知っているというレベルではない。ある程度の全体像を掴んでいたので、それなりには楽しむことはできた。上映前の説明と本作の映像だけでは足りないので、“知識”で流れやキャラクターや時代背景などを補えないと少々苦しいか。
それにしても、ソダーバーグ監督の相変わらず訳の分からない演出が微妙だ(他の作品よりはマシなレベルか)。一貫としたストーリーはなく、イメージやエピソードをぶつ切り状態にしている。ドキュメンタリー風なタッチをメインにして、観客にも一人の兵士として参加してもらおうとしているのだろうか。
そういう趣旨は分かるが、“狙い”はやや空回りして、むしろ“逆効果”のような気もする。全体的にボヤボヤしすぎてしまい、全体像が掴みづらくなってしまう。
後編を見ないとなんとも言えないが、単に山中を行進して、市街戦を繰り広げて、国連で演説したり、インタビューを受けたりしているとしか描かれていない。
素直に撮りたくないというのは分かるが、“褒めること”も“貶すこと”もしにくい映画に仕上がっている。
確かに、ゲバラをヒーローに描くことはできないのだろう。
アメリカ人には敵国ともいえるキューバの革命を賞賛することもできない。
こういう場合には、ありのままの“事実”のみを描かざるを得ない。
一方のサイドに感情を込めて肩入れすることはできないので、ニュートラルのまま突っ走らざるを得ないのは分かる。
そうすると、彼の「革命」に対する想いが見えてこなくなってしまう。
『革命とは“愛”だ』という言葉はカッコいいが、その“愛”を感じさせるものが欲しいところだ。
戦うことだけではなく、食料を調達することも、仲間の怪我を治療することも“革命”というセリフがあった。
読み書きを教えることも当然“革命”なのだろう。
規律を厳しくしたり、仲間を処刑することも、兵士に革命を放棄させることも彼にとっては“革命”だ。
本作に描かれていることは、彼にとっての“革命”の総てなのかもしれないが、“革命に対するパッション”というギアをもう一段、深く入れて欲しかったところだ。
後編を見たところで、「ゲバラの生き様」「ゲバラがなぜ賞賛されるべき人物なのか」「革命とは何か」を感じることはできないだろう。
こういう部分は本で勉強するしかないようだ。