《改行表示》14.どんよりと垂れ込めた霧の中、主人公の姉と弟の心も、そして私の心もまた晴れない。 オープニングから突き放すような映像、しかし、そこから目を離すことは出来ない。 くすんだ色使いの画面は、ひとつひとつが絵画のように印象的。 映された風景と人物がとが、あたかもキャンパスに切り取られたように感じられる。 その芸術性の高さ、奥深さで私を魅了する。 アンゲロプロス監督の完璧ともいえる感性と才能には、ただ感心するばかりです。 観終わった今、私自身がこの作品について完全に消化しきれていないもどかしさがあります。 理解しなければならないのか、感性を研ぎ澄まさなければならないのか・・ 迷う心と、私の観たそのままで良いと思う心とが、交錯しています。 力(ちから)のある作品に出会えて嬉しい。 【たんぽぽ】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2005-09-08 21:34:25) |
13.《ネタバレ》 映像詩、ドアの隙間から流れ込んでくる光でさえも美しい。まるで時が止まったかのように降り積もる雪を眺める人々、圧倒的映像表現!この映画には例え台詞が無くともストーリーを理解できるような気がします、寧ろ台詞は邪魔。中盤の展開はさすがに勘弁しろと思いましたが…、そこから物語もどんどん暗い世界へとのめり込んでいくような気がします。ヴーラが溜まった悲しみを吐き出すかのように泣くシーンではこちらも一緒に涙を流してしまう。空中に浮かぶ巨大な手のインパクト、けたたましいバイクの音でさえも流麗。ラストシーンは大木が二人を優しく包み込むかのようなパーフェクトショットでした。大大傑作。 【かんたーた】さん [ビデオ(字幕)] 9点(2005-05-09 18:08:29) (良:2票) |
12.映画の序盤で、ドイツの父というのが実在しないのだと宣言されることで、二人の旅には、行き着くところはないのだ、目的地はないのだということが、はっきりと示されています。だから、家を離れ、たどり着くところもなく彷徨う二人の姿には、強烈な孤立感、不安感を感じざるをえません。、、、、ドイツの父というのは何を象徴しているのでしょう。神でしょうか、それとも社会主義的な理想でしょうか。、、、、そのように考えると、二人の姿は、確かな価値を与えてくれる神、目指すべき理想的社会を失ってしまった私たちと重なり合います。、、、、、そして私たちは何を目指したらよいのだろう、というアンゲロプロスのもがき、苦悩も。「こんな別れ方をしたくなかった」というオレステス。それはアンゲロプロスの過去との決別を含意しているのでしょうか。、、、、、あの巨大な手は、誰の手なのでしょう。廃棄されたレーニン像の手なのでしょうか、それとも神の彫像の手なのでしょうか。いずれにしても、人差し指が欠け、私たちには行くべき方向を示してくれることはありません。、、、、、全体として、ただひたすら苦しい映画でした。、、、、、(バイクを売る丘にたれ込める雲。今ならCGで合成するのでしょうが、あの雲が出てくるまで、撮影を待っていたのかなぁ。すごい根性!!) 【王の七つの森】さん [DVD(字幕)] 8点(2005-05-05 18:36:10) (良:1票) |
11.完璧。もう一度言っちゃおう。完璧。映像も音楽もストーリーも、とにかく全てが。個人的にはいろんな意味でぶっ飛んでるギリシャ現代史三部作とか「アレクサンダー大王」のほうがアンゲロプロスの人間性を感じられて好きだが、「霧の中の風景」はかなり特別な存在だ。これの前の作品は「蜂の旅人」という非常にパーソナルな映画で、この映画からは老いを疲れるぐらいに感じたのに、数年後の次回作がこれだ。一体何があったのだろう。時空をまたぐ歴史語りに疲弊して旅に出た老人が、沈黙の詩人になって帰ってきた事は確かだ。ちなみにこれ以降は国境線上の夢遊病者になる。「霧の中・・・」に関しては色々と書きたい事があるが、一番重要と思われるのは、アンゲロプロスもまたこの二人の子どもたちのように原郷を探していたのだろうということだ。そしてこれが一つの答え、なのかどうかはわからない。というのもあそこがその場所なのだとしたら、それはこの世にはない場所だから。それは昔はあったはずだが今ではすでになくなってしまった場所とも言える。だから正確には探しあてたというよりも元の場所に戻ったというべきか。フェリーニには「アマルコルド」という原郷があり、タルコフスキーには「ノスタルジア」という失った原郷がある。そしてアンゲロプロスは「霧の中の風景」についに帰ることが出来た。ただし、これ以降彼の作品を包む霧はそんなに優しくはない。「ユリシーズの瞳」はまさにそれを象徴する。苦しい映像体験になると思うが、これもぜひ鑑賞していただきたい。彼特有の「あえて見せない」演出は曇天の鉛空だからこそ発揮するという事がよくわかるはず。 【Qfwfq】さん [映画館(字幕)] 9点(2005-02-24 14:17:48) (良:1票) |
10.立ちこめる霧の中にそびえ立つ1本の木・・。絵画にして部屋に飾っておきたい・・。 【STYX21】さん 6点(2004-07-28 23:14:18) |
9.主人公の姉弟は、まだ見ぬ父を探し求めドイツに向け旅に出る。まるで幸福の“青い鳥”を見つけに旅に出る幼い子供たちのようだ。押し寄せる資本主義に飲み込まれる若者達、旅芸人一座の時代の終焉、大人のモラルの崩壊などなど…寒々とした映像も手伝い、まるでギリシャという国そのものが暗黒の時代に差しかかっているかのような印象をも受ける。主人公の姉弟も私生児だ。ラスト近く、海底から一本指の欠けた巨大な手の彫像が現われるシーンがある。現実と非現実が入り混ざり、不思議だが怖い。これは何らかのメッセージがあるのだろうか。それともアンゲロプロスのシュールな心象風景なのか。どちらにしても鮮烈な印象を放ち、脳裡に焼き付くシーンだ。《ネタバレ》ラストでは、暗闇の中、一発の銃声が響きわたる。そして絵本のようなシーンで幕が下りる。やはりこの映画、現代の寓話なのかもしれない。(かなり辛口だが) ギリシャといえばギリシャ神話やオリンピアに代表されるよう、数々の芸術や文化を生み出した歴史のある国。遠い他国ということもあり、当時の政治的、経済的背景が今ひとつ分かりかね作り手の意図するものが掴みづらい。しかしこのアンゲロプロスの独特な映像とリズムを通じ、繰り返し観たくなる傑作であることは間違いない。 【光りやまねこ】さん 10点(2004-07-24 11:02:54) |
8.美しくて哀しい映画。賛辞は他のレビューに任せる。お姉さんが、レ○プされた(んだよね?あれって)後、手に着いた血をトラックの幌にこすりつけるシーンが衝撃的。我が目を疑った。 【マックロウ】さん 9点(2004-06-09 11:19:10) |
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7.無防備な状態で見て真剣に傷ついてしまった・・・3人が心の着地するところを求めているように思えます。はっとするシーンがたくさん。 【ジマイマ】さん [ビデオ(字幕)] 9点(2004-04-11 00:02:14) |
6.ヘリコプターが飛ぶシーン以外、全て曇天ですね。劇団と出会う場面の木がとても美しいです。 【藤村】さん 9点(2004-02-26 04:52:07) |
5.苦難の末のラストはエデンの園なのだろうか?見る側にすべてを預けるアンゲロプロスの作風は、深く重く静かに心に響く。 【mimi】さん 9点(2004-02-08 20:13:32) |
4.抽象画のような映像に思い切り酔ってしまいます。少し生々しいところが気になって-1です。痛々しいだけで生々しくしなくても、いいのにと思ってしまいました。 【omut】さん 9点(2003-06-03 03:29:20) |
3.テオ・アンゲロプロス監督が、これほどまでに万人(?)に愛される映画を撮ったことに、公開当時ガクゼンとしたことを覚えています。ああ、ぼくだけのものでいてほしかったのにぃ~! って…。主人公の姉弟のうち、幼い弟の手紙がときどきナレーションとして挿入されるんだけど、そのナイーヴで詩的な野にも、心震えっぱなし。翻訳した池澤夏樹にも感謝の花束を。とにかく、本当に美しい、まさに詩のような逸品だとぼくも思います。 【やましんの巻】さん 10点(2003-05-21 19:06:08) |
2.路面の、窓の、線路の、海の、湿った冷たい灰色が忘れられない。こんなに美しく痛ましい映画は他にはない。あの幼い姉弟の可憐さはどうだろうか! にび色のギリシア。雪・霧・闇。忘れられない風景だ。 【弓木暁火】さん 10点(2003-04-22 01:14:02) |
1.冒頭の汽車を待つ姉弟、雪が降るシーンで時間が止まったように、動かない人達など多数の印象深いシーンがある。また、手の石像をヘリコプターで引き上げるシーンは話の展開上なんら意味を持たないが、なぜか悲しく、とても必要なシーンに思えてくる。そこら辺が映像美学の奥深さだろう。それでも監督が映像に込めたメッセージをすべて理解することは到底出来ない。だが、この映像に触れれば、何かしらの感動を憶え、いにしえぬ力を肌に感じることだろう。悲しくも残酷な運命をたどった姉弟は、映像が心の言葉を代弁しているように語りかけている。 【ゆたKING】さん 10点(2003-02-24 19:58:00) |