8.抑圧されていた感情を吐露する場面には、いつも開放感と妙な爽快感を共感をもって意識するものだ。自己をはっきりと主張して表現するというのはいいことだ。だが、それが行きすぎると困ったことになる。コニーはその例としてあげられるだろう。ガブリエルを自分だけのものにしたいという「主張」が彼女を傷つけ、彼自身さえ破滅に追いやることになる。主張はわがままと紙一重で、安易にはよしとできないかもしれない。それでも、必要なものだとは思う。主張は衝突を生む。衝突は亀裂を作り、溝を作るかもしれないが、新しいものもまた作る。そして後の努力次第でそれらは大きくもなり小さくもなるんじゃないか。彼らはどうだったのだろうか。その後、良い方向へ向かったろうか。 【透き通るBlue】さん [DVD(字幕)] 7点(2006-10-31 17:33:23) |
7.《ネタバレ》 もうちょっと違う展開を期待して見たのだった。 ダニエルは音楽のプロだ。 究極のプロと素人以下の村人合唱団。この二つが出会った時の驚きとか、ダニエルの力によって有り得ないほど底上げがされるとか。 ところが話はほとんどどうでもいいような村人のプライベートなもめ事で埋め尽くされ、音楽に力が割かれていない。ダニエルの音楽家としての素晴らしさが描かれない。それじゃつまらない。 そんで一番若くてきれいな女の子とエッチまでして、あーあ、指導者としての矜持はどこへ。 結局一番描きたかったのはなんなのかよくわからない。興ざめ。 【パブロン中毒】さん [DVD(字幕)] 4点(2006-09-23 16:38:30) |
6.何かが革新的に変わっていくときには、強烈な触媒が必要だ。この映画は、その強烈な触媒となるアートの本質を描いたものと捉えました。 優れたアートとは、鑑賞者が独自に持つ知覚の糸を、意味という束に組織化する力、何かを気づかせ、目覚めさせるものだろうと考えます。 本作は、激しくアートを体現している一人の音楽家がそれぞれ固有の痛みと悲しさを抱える聖歌隊メンバの心に何かを目覚めさせ、いきいきと生きていくことへの欲望を喚起させる物語です。 【ヒロポン】さん [映画館(字幕)] 7点(2006-07-24 13:00:01) |
5.《ネタバレ》 歌がとても良かった。感動した。聖歌隊の活動を通して、人々が反発しあったり、協力し合ったりして変化していく様が見て取れたが、暴力コニーがなぜあんなに暴力を振るうようになったのかとか、レナは最初なぜ泣いていたのかとか、わからないことがいくつかあったのと、場面の繋ぎがイマイチだったように思う。 【にゃ~】さん [映画館(字幕)] 6点(2006-05-24 22:32:35) |
4.今年の1月上旬に見ました。自分の今年の洋画ベスト1になるのではと予感がありました。4月になった現在もその評価は変わりません。北海道人の私にとって、どこか懐かしさを感じさせる北欧の風景の中で繰り広げられる人間模様。音楽を心から楽しむ人たち。エンディングのホールが一体となったハーモニーには不覚にも号泣してしまいました。 【くらけん】さん [映画館(字幕)] 10点(2006-04-16 09:32:34) |
3.主人公の理想とする音楽演奏のあり方を具現化したラストシーンは素晴らしい物でしたし、演奏を通じて自己表現に目覚め思いの丈を語る人々、作品の語りたいテーマは十分伝わってきました。このテーマのもと、感性がこの作品と響き合い一体化できた人には素晴らしい作品となったことでしょう。ですが、私の心の固有振動数がこの作品とは共振できない物だったようです。質の高い作品だと思いつつも全くのめり込むことができずに終わってしまいました。ということで私の採点は5点ですが、未見の方へはご自分の感性と響き合えるかどうかを試してみる価値のある作品です。 【はやぶさ】さん [映画館(字幕)] 5点(2006-03-02 20:55:17) |
2.《ネタバレ》 合唱を通してバラバラだった人々が一つになっていくという作品は数多くある。この作品は2004年度アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品であったが、同部門にノミネートされていた「コーラス」も同じようなテーマの作品だった。ただ、本作が他と少し違うところは、学園ものでないという点。多くの世代を超え、老若男女、様々な問題を抱えた人々が理解し合い、助け合うというのが観ていてとても良い気分にさせてくれる。その感動的なラストは大変新鮮で、圧巻。自分の世界観で右にも左にも転べるが、それがたとえ悲しいものだとしても、どこか優しくて温かい。エンドロールが終わってからも、しばらく席を立たずに余韻に浸っていたかった。歌は世代を超え、人種を超え、文化を超えることができる。この作品は、そんな熱い熱い作品だった。 【こばやん】さん [映画館(字幕)] 8点(2006-02-07 15:54:54) |
1.空気の分子が動くことで、なぜか僕らの耳には「音」が知覚される。それは「奇跡」とかたいそうなことではなく、単に事実としてある。しかも、この音というのは違う波長同士の重なりによって立体的な空気の振動空間を作り出せる。この映画は、そうしたフィジックスを「体感」できる映画として貴重だ。純和声だけではない。たとえぶつかり合う波長同士であっても、空間を振るわせる動力として一つになれる。比喩かもしれないが、これこそ世界の成り立ち方ではないかと思う。それに比べてキリスト教の狭量さはどうか。理論的な根拠は究極のところまでいかないともろい。人間は考え抜いたものしか信じれない。いやむしろ、感性的なよりどころしか信じれないのかもしれない。ヨーロッパが抱える「神という光が闇として機能している」という矛盾を抉っている点でも、この映画の視線は深い。 |