56.黒澤の完璧主義が悪い方向に行ってしまったような作品。
「赤ひげ」「どん底」などと同じく各シーンを完璧にしようとする意思は感じるが、
映画全体としては躍動感がなく、このレビューでも指摘されているように「退屈」な映画となってしまっている。
(私の好きな黒澤映画「酔いどれ天使」「蜘蛛巣城」「天国と地獄」など。)
黒澤が物凄い意気込みで作っているのは感じるが、かえって息苦しく
その為、映画にリズムが出てこないし、見ているこちらも集中力が落ちていく。
1つのシーン毎に前置きが長くてまどろっこしいのである。
映画序盤からエキストラを含めてやたら人・金がかかった映画だなーと思ったが、
大振りしすぎで、ちっともボールにあたらないバッターのような映画だった。
素晴らしい芸術映画を娯楽映画のように楽しく見せる黒澤マジックがこの映画にはない。
また見る前に出演している役者のチェックをしていなかったので、
仲代達矢以外の俳優に全く気づいていない事にも愕然とした。
アップが少なく、メイクも濃く、見ているこっちも流し気味になってたとはいえ、
山崎努・萩原健一・根津甚八・桃井かおり・倍賞美津子・・・みんな気づきませんでした。
あと織田信長はいいとして、徳川家康をやっていた役者さんは誰でしょう?
徳川家康とは思えない存在感のなさ、セリフの棒読み。
今まで黒澤映画でこんな役者使っていただろうか?と思って調べたら晩年の
黒澤映画の常連さんだったんですね・・・